Sachsがこう書いている:
米政府とFRBは、経済を安定させるつもりで、かえって不安定にする政策を続けてきた。オバマ政権の巨額の財政政策は、短期的には成功するかもしれないが、長期的にはさらに深刻な危機をまねくおそれが強い。

アメリカを繁栄に導いたのは、非裁量的なマクロ政策だった。1970年代の「ハイ・インフレーション」の教訓は、裁量的な景気対策がかえってスタグフレーションをもたらすということだった。このため80年代以降、ルールにもとづく金融政策がとられ、インフレは沈静し、アメリカ経済は安定した。

ところがLTCMの破綻やY2K問題に過剰反応して、FRBが通貨供給を膨張させたため、ITバブルが起きた。その崩壊と9・11の後、FRBは異常な金融緩和を行なって、現在の危機の原因をつくった。このような近視眼的な政策を繰り返すのはやめるべきだ。巨額の赤字財政やゼロ金利は、対症療法にはなるが、ドルを暴落させるリスクが大きい。

いちばん大事なのは、パニックに陥らないことだ。FRBは日本のデフレの轍を踏むまいとして過剰な金融緩和を行なったが、その結果起こった住宅バブルの崩壊で、アメリカはデフレに陥ってしまった。「大恐慌が来る」という類の話はナンセンスだ。1930年代には、金本位制のもとで預金保険もない状態で、銀行がバタバタつぶれた。その過ちを当局が繰り返すことはありえない。

アメリカ経済が回復するために必要なのは、ゼロ金利や財政赤字ではなく、財政収支を長期的に均衡させ、政府が長期的な成長を可能にする公共インフラに投資することだ。目の前の急激な変化に右往左往してアドホックな「安定化政策」をとることは、かえって経済を不安定にするという歴史の教訓に学ぶべきだ。
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