Cole-OhanianがWSJに、彼らの大恐慌についての実証研究を要約している:
  • 1930~32年に総労働時間は1929年の水準から18%下がったが、ルーズベルト大統領の就任後の1933~39年には23%下がった。その最大の原因は、ニューディールである。特に1933年に制定されたNIRA(National Industrial Recovery Act)によって反トラスト法が停止されて価格カルテルが公認されたため、最終財の価格が上昇し、需要が低下した。

  • さらに1935年にワグナー法によってストライキや賃金カルテルを合法化したため、1930年代後半に実質賃金は25%も上昇した。1937~38年に実質GDPが低下した原因は、37年に連邦最高裁がワグナー法を合憲とし、実質賃金が急激に上がったためだ。

  • アメリカが1930年代末に大恐慌から回復した原因は、ルーズベルトが1938年にニューディールをやめたためだ。司法省は反トラスト法を再発動し、戦時体制によって賃上げは凍結された。戦争による経済の回復は、大量の資源消費だけではなく、ニューディールの停止によるものだ。

  • オバマ大統領は、長期的な成長率を高める政策に集中すべきだ。それは金融システムを再建するとともに、競争力を失った企業を退場させるなどの改革であり、財政刺激は長期的にも短期的にも効果がない。
Kehoe-Prescottによる共同研究には、Cole-OhanianやHayashi-Prescottを含めて20世紀の世界各国の大不況の実証分析が集められている。どの国でも主要な原因は需要不足ではなく、経済システムの混乱による潜在成長率の低下で、景気対策は不況を長期化させた疑いが強い。彼らはRBCにもとづいて推計しているので「新しい古典派」的なバイアスがあるが、最近の実証研究はおおむね1930年代の需要刺激策に効果がなかったことを示している。これは1990年代以降の日本のバラマキ政策の経験でも明らかだろう。