ラジオ(J-WAVE)を聞いていたら、また上杉隆氏が「定額給付金はやらないよりマシだ」と繰り返していた。ダイヤモンド・オンラインでも、同じ趣旨のことを書いている。彼は当ブログの読者なので、あまりにも初歩的な間違いを訂正しておこう。根本的な誤解は、次の記述だ:
今回の定額給付金を含む第二次補正予算案と消費税はまったく無関係の予算案だ。定額給付金を実施したからといって、消費税率が上がるということは一切ない。
彼は、定額給付金の財源が天から降ってくるとでも思っているのだろうか。給付金という変な名前がついているが、これは税の還付だから、国債が増額される。国債は税で償還するしかないので、2兆円は何らかの形で必ず増税になる(消費税とは限らない)。つまりこれは、1万2000円の税金で1万2000円の給付金を買う朝三暮四の政策なので、納税者が合理的なら効果はない。欧米で行なわれている財政政策も、政治的には何かやらざるをえないだろうが効果は疑わしい、というのがMankiwなど多くの経済学者の見方である。

オバマも演説でいっていたように、アメリカの財政政策もケインズ的な総需要管理政策ではなく、インフラ投資によって長期的な潜在成長率を高める政策だ。減税は所得再分配の意味が強い。欧米の政治家はケインズを卒業したのに、日本ではいまだにジャーナリストも経済学を勉強しないで、古くさい「景気対策」を振り回すのは困ったものだ。悪いけど、あなたはすごく「日本的」だよ、上杉さん。

追記:「財源は埋蔵金だ」とか「国有財産を処分すればいい」とかいうコメントが多いが、これらは国債の償還財源だから、流用したらそのぶん国債費(税)が増えるだけだ。政府の収入は、本質的には税しかないのである。