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今年も年賀状は出さないので、ブログでごあいさつ。

去年は暗い話題が多かったが、今年はたぶんもっと暗い年になるだろう。90年代には銀行や不動産などの「放蕩息子」が日本経済を食いつぶしたが、唯一の「働き手」だった輸出産業が倒れた今回の状況は、もっと悪いからだ。ただ私は、日本経済が一度は徹底的にだめになったほうがいいと思う。敗戦で財閥が解体されたとき、日本では世界史上にもまれなイノベーションが起こった。戦後の高度成長は、古い企業が破壊された焼け跡に創造されたのだ。

かつてマレーシアの熱帯雨林で、1ヶ月ほど撮影したことがある。「地球を守ろう」などというセンチメンタリズムでは、熱帯雨林はガラスのように繊細なものと思われているのだろうが、実際の熱帯雨林は猛烈な勢いで破壊の進行する生態系だ。至る所に高さ数十メートルの大木が倒れて、「ギャップ」と呼ばれる大きな穴があいている。その木もシロアリに分解されて数ヶ月で消えてなくなり、古いシステムが破壊された空間に新しい木が育つ。熱帯雨林の生態系は、福岡伸一氏の言葉でいえば「動的平衡」なのである。

90年代の日本は、古いシステムを温存したまま新しいシステムを育てようとしたが、古い木が空をおおっているかぎり、新しい木は育たない。パイが縮小する時代には、「格差社会」を是正する再分配もできなくなり、バラマキ景気対策の原資もなくなる。そこまで追い込まれ、かつて小泉首相を生んだような危機感によって政治にダイナミズムがよみがえれば、日本経済にも救いはあるかもしれない。