朝日新聞に、「昭和恐慌に学べ」というあきれた記事が出ている。
学習院大学の岩田規久男教授は「昭和恐慌のようにデフレに陥ると、相当果敢な政策を採らないと立ち直れない」と政府・日銀の積極対応を促す。ただ、当時と違い現在は国債発行残高が積み上がり、政策の自由度を奪っている。
この神谷毅という記者は、今のほうが「政策の自由度」が低いぶん昭和恐慌より悪いといいたいようだが、この記事は他方で「金本位制が大恐慌の原因だった」とも書いている。彼は、今の日本が金本位制だと思っているのか。EichengreenBernankeが明らかにしたように、金本位制による信用収縮の連鎖が大恐慌の大きな要因であり、日本の昭和恐慌の引き金も1930年に行われた金解禁だった。だから、こういう「大恐慌の再来」論は、ほとんどの専門家が否定している。大恐慌の教訓に学んで、いま世界の中央銀行は流動性を最大限に供給しているからだ。

岩田氏のいう「昭和恐慌のようなデフレ」とは何のことか。この記事にも出ているように、昭和恐慌ではGDPは18.3%も下がったが、今はマイナス1.7%だ。両方をデフレという言葉で一括するのはナンセンスである。小泉内閣の構造改革を「浜口内閣と同じ清算主義だ」などと攻撃した岩田グループの主張は、学界でも批判を受けた。フーバー政権のメロン財務長官のいった「銀行がつぶれるにまかせる」という意味での清算主義を実行している国は、現代には存在しない。

救いがたいのは、経済部の記者がこんな支離滅裂な記事を書き、それをデスクが誰もチェックできないことだ。しかもこういう無学な記者に限ってリフレ派だけに取材して、ケインズ経済学が最新理論だと思い込んでいる。朝日新聞は、経済部の記者には経済理論研修を義務づけるべきだ。