上杉隆氏が、麻生政権が政権末期の「学級崩壊」の様相を呈してきたと書いている。連日の報道も、漢字が読めないとか失言とか、政策と関係のない悪口ばかりだ。党内でも若手が公然と反旗をひるがえし、石原幹事長代理まで「麻生政権で選挙をやって与党でいられるのか」といい出した。

しかし私が政治家に取材した印象でいうと、麻生氏の知能は平均的なレベルだと思う。頭脳明晰というわけではないが、どうしようもないバカではない(そういう政治家は多い)。政治家の失言なんて、そう珍しいことではない。問題は、それが頻繁に報道されるようになることだ。たとえば詳細を「ようさい」と読み間違えたのは9月30日の記者会見だったが、それが初めて報じられたのは11月上旬だ。上杉氏もいうように
私語が問題なのではない。問題は、首相が自分の内閣、自ら任命した閣僚すらコントロールできなくなってしまうという「現実」、それを首相周辺に知らせ、世間に晒してしまうことなのである。
政治家にしても記者にしても、普段は漢字の読み間違いなんか取り上げない。そんなつまらない問題で首相の機嫌をそこねると損するからだ。特に番記者は、首相を批判しないと「甘い」といわれるが、批判しすぎると首相にきらわれるという微妙なバランスの中で仕事をしている。それがみんな悪口を言い出すと、自分だけいうコストが低くなるので、一斉に悪口が始まる。それは「首相はなめられている」というシグナリングなのだ。

党内で首相の威信が強いかどうかを外部から知ることはむずかしい(情報の非対称性がある)が、このようにインサイダーがシグナルを出すと、威信の低下が公然化する。そうなると何も決められなくなり、それがさらに悪口を増幅する・・・という負のスパイラルに入る。安倍政権の「学級崩壊」がいわれはじめてから、辞任するまで半年だった。麻生政権がそこまでもつかもあやしくなってきた。