
・・・というのが標準的な考え方だが、本書はこうした「非対称な金融政策」は根本的に誤っていると批判する。この政策は、通常は資産価格はファンダメンタルズを織り込んでいると想定する効率的市場仮説(EMH)にもとづいているが、最近の状況はこの仮説の明白な反証だ。財市場では価格の上昇によって需要は減るが、資産市場では価格が上がると需要が増えるself-reinforcingな効果があるので、不安定化する傾向が内在的にあるのだ。
EMHが成り立たないというのは、最近は教科書にも書かれるようになったので大して目新しくない。それに代わる理論として著者が推奨するHyman Minskyの金融不安定性仮説は最近、金融関係者に注目されているが、これは簡単にいうとファイナンスには次の3種類があるというものだ:
- ヘッジ・ファイナンス
- 投機的ファイナンス
- ねずみ講(Ponzi)ファイナンス
しかしこの仮説は、主流派の金融理論のように洗練されたものではなく、計量データに裏づけられてもいない。本書も定性的な話ばかりで、EMHの系統的な批判にはなっていないが、中央銀行が資産価格を目的関数に入れるべきだという提言は傾聴に値する。