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ここ数日、各社のトップニュースは元厚生事務次官殺害事件の関連で埋まっているが、もううんざりだ。最新のニュースでは、犯人らしき人物がTBSのサイトに「今回の決起は年金テロではなく、34年前に保健所に殺されたペットの仇討ちである」などと書いており、ただの精神異常者の犯行である可能性が強い。

海外から帰ってきて日本のテレビを見ると、いつも違和感を抱くのは、こういう警察ネタの扱いが異様に大きいことだ。たとえばBBCのサイトを見ればわかるように、世界の大手メディアのヘッドラインは政治・経済・外交というのが常識で、殺人事件がトップに来るのはSunのような大衆紙だ。

ところが日本では、NHKも警察ネタだらけ。これはメディアの組織内事情もある。海外では基本的に高級紙は警察ネタを取材せず、通信社の配信した情報から重要なものがあれば取材する。ところが日本では各県警や(東京の場合)方面本部に大量の記者を張り付けるので、記者の半分以上は社会部だ。したがって整理部デスクの過半数も社会部出身なので、警察ネタ偏重になる。またデスクが「特落ち」をきらって、独自の企画より横並びの発表ものを優先する傾向が強い。

読者にはあまり知られていないが、警察のメディアへの影響力は非常に強い。昨今の大麻騒動なども、個別には大した事件ではない(過去にいくらでもあった)のに、警察が一斉摘発に踏み切ると、今のような「翼賛報道」が起こる。警察もネタのないときは記者クラブに書いてもらいたいし、記者のほうも「逮捕」という錦の御旗があれば名誉毀損で反撃される心配がないので、露骨な個人攻撃を繰り返す。独自に取材したネタを警察に持ち込んで、ガサ入れと同時にニュースにするパターンも多い。

要するに、日本のメディアは本質的には大衆紙なのだ。これは新聞が最大1000万部近くも売れている状況の必然的な結果ともいえるが、すべてのメディアがSunになってBBCが皆無なのは困ったものである。