Marginal Revolutionにおもしろい提案が出ている。すべての納税者にデビット・カード口座をつくらせ、そこに政府が一定の金額を振り込む。このデビット・カードは一定の期限が来たら無効になる、というしくみだ。これはスタンプつき貨幣に似たマイナス金利だが、税務署が銀行振り込みで電子的に行なえるので、役所で金券を渡す方式よりはるかに効率的で、安全性も高い。日本の定額給付金も、これでやってみてはどうか。

効果をもたせるには2兆円ぐらいではだめで、来年度予算で「4月から消費税を5%引き上げ、来年度の税収増10兆円を期限つきデビット・カードで全額還付する」と決めればよい。所得制限なんて必要ない。この政策の主要な効果は、人々の期待に影響を与えることだからである。効果は国会で決まった段階でただちに生まれ、まず4月から上がる消費税を避けるための駆け込み需要が発生する(これは1997年に実験ずみ)。しかし4月以降はその反動で消費が落ち込むので、デビット・カードは4月以降(たとえば)期限を1年として還付すればよい。

こういうデビット口座をつくっておけば、今後も不況のときはこの口座に税を還付すれば確実な効果が見込め、財政収支にも中立だ。マイナス金利は、フィッシャーやケインズをはじめ、多くの経済学者が賛同している政策だから、日本政府が実験すれば歴史に残るかもしれない。少なくとも、迷走して麻生政権の「マイナス選挙対策」になっている今の定額給付金よりましだろう。