15d420d6.jpg「報道ステーション」はスタジオのしゃべりがうるさいのでほとんど見ないのだが、夜遅いときは、しかたなく見る。きょうも途中まで見たが、耐えられなくてテレビを消した。GDPの速報値のニュースなのだが、彼のコメントは私の記憶ではこうだ:
景気が悪くなると、まっ先に切られるのが非正規労働者です。こういう人々の痛みを私たちはどこまで知っているのでしょうか。
古舘氏がそれを知らないことは間違いない。推定年収1億円以上の彼が、非正規労働者の痛みを知ることは不可能だ。知らないことは罪ではない。競争の激しい芸能界でここまで生き残った彼の話術は(私はきらいだが)、それなりに価値があるのだろう。しかし自分を弱者の立場に置いて、格差社会を嘆いてみせるのは偽善である。

その前のNHK「ニュースウォッチ9」も、最近は見なくなった。田口キャスターになってから、意識して「古舘的」演出に変えたからだ。どうでもいい後説(あとせつ)をいちいち入れ、青山キャスターとかけあいをやるが、率直にいって見てられない。副調(スタジオの外のディレクター席)にいた感覚が残っているのかもしれないが、はらはらする。

古舘氏はかなり自由にやっているように見えるが、彼のコメントは事前にすべて決まっており、編集長が目を通している。それを感じさせないところが彼の芸なのだが、田口氏は社会部の記者だから当然そういうスキルはないので、台本をたどたどしく読むのが丸見えだ。私がNC9のスタッフだったころは、「後説は禁止」が原則だった。たいていの後説はニュース映像でできるコメントをスタジオに振り分けているので意味がなく、テンポが落ちるだけだ。欧米のニュースでも、後説はほとんどない。

しかしこういうドライな演出は、日本では受けない。素材の情報より、スタジオでみのもんたが大げさに憤ってみせるコメントのほうを視聴者(特に女性)は喜ぶからだ。私がNHKに勤務していたころ教わったのは、「典型的な視聴者は、50歳の専業主婦で高卒だと思え」ということだった(politically incorrectだが)。

たぶん民放はもっと低く設定しているだろう。それが市場メカニズムでは正解である。1億人の知的水準の平均値は、当ブログの読者には想像もできないぐらい低いのだ。それに迎合する古舘氏の戦略は正しいが、まともな視聴者が見ていて気持ち悪いということは知っておいたほうがいい。