厚労省が最低の役所であることは国民の広く認めるところだろうが、きょうの「日雇い派遣を禁止する」という舛添厚労相の発言にはあきれた。彼はフランスに滞在して、欧州の労働事情も知っているはずだ。雇用規制を強めるほど失業率が上がり、しかもいったん強めた規制を緩和しようとすると、暴動が起きてますます治安が悪化する・・・という「欧州病」に日本も参加したいのだろうか。

そもそも日雇い労働は昔からある。日雇い派遣を禁止したら、日雇い労働はどうするのか。「不安定な就労形態はよくない」というなら、後者のほうが不安定だから、論理的には日雇い労働はすべて禁止しないとおかしい。建設業や荷役作業など、単純労働の多い産業は大打撃を受け、失業者があふれるだろう。

舛添氏自身もいうように、こういうみのもんた的正義が結果的には日雇い労働者を失業者にして、さらに悲惨な境遇に追いやるのだ。「企業が直接雇用することが望ましい」というのはその通りだが、日本は社会主義ではないのだから、政府が企業に雇用を命じることはできない。企業に労働需要がないかぎり、雇用は発生しない。だから直接雇用を増やすために必要なのは、正社員の雇用コストを非正規社員の2倍にしている社会保険などの義務を廃止し、解雇要件を法的に明確化して司法による事実上の解雇禁止をなくし、正社員と非正規社員の差別を撤廃して労働需要を増やすことだ。

今度の措置は、秋葉原の無差別殺人事件がきっかけだというが、あの犯人は日雇いではなく、継続的に勤務していた。その工場が「終身雇用」を誇るトヨタの下請けだったというのは象徴的だ。同じく終身雇用を売り物にするキヤノンと同様、「日本的経営」は手厚く守られた正社員と使い捨ての非正規社員の差別構造の上に成り立っているのだ。その最下層の労働者を短期労働市場からもはじき出そうとする政策は、ますます暴走する若者を増やすだろう。