ちょっと前に、佐々木俊尚氏のコラムに私の名前をあげて事実誤認の記述があったので、コメントで訂正したのだが、今月の『諸君』にも同様の記事が出ている。さすがに私の名前がはずされているのは、事実誤認は認めたということだと思うが、これは私個人の問題を超えて、今度のネット規制法の運用にもかかわる問題なので、コメントしておく。
今度の規制については、「有害情報の例示」や「登録制」など問題は残るが、基本的に民間による自主規制という線が守れたのはよかった(高市氏は採決に欠席したそうだ)。これは民主党が粘った結果で、「健全野党」としての存在感が示されたと思う。しかし問題は、民間だけでどこまで実効あるコントロールができるかということだ。携帯はともかく、ウェブでは(海外も含めれば)最初から100%取り締まるのは不可能で、これは公的規制にしても同じだ。
問題は、最初からルールを守る気のない確信犯である。たとえば天羽優子氏は、私や多くの人々の批判に対して「私信の公開はマナーとしてすべきではないことは私も同意する」と非を認めながら、問題の記述を削除しなかったが、最終的には大学のサイトから追い出された。つまり悪質な確信犯は、サイト管理者が制裁するしかないのである。
これを「所属志向に囚われている」とかいう佐々木氏の批判は(彼も認めたように)お門違いである。責任は、彼女がどんな組織に「所属」しているかとは無関係に、そのブログをホスティングしている業者に発生するのだ。たとえば彼女のブログがgooにあれば、私はgooの事務局に抗議する。通告があった場合に業者が違法なファイルを削除することは、プロバイダ責任制限法で義務づけられている。
今度はそれが有害情報まで広がったわけだが、こうなると「有害」の基準がむずかしい。今度の規制法では、3類型が例示されているが、それに該当するかどうかは自主規制機関が判断するので、公的な強制力はない。はてなのように「違法でない限り削除しない」という方針を公然と掲げている業者は、最初から自主規制団体に入らない可能性もある。
率直にいって、これは自主規制の限界である。ISPでフィルタリングが始まれば、2ちゃんねるがその対象になることは確実だが、そうすると「うちは2ちゃんねるが見られます」というのを売り物にするISPが出てくるだろう。もちろん彼らは自主規制団体に入らないから、制裁もできない。さらに個人でサーバを立てれば、まったく規制の対象外になる。そういうISPやサイトが大量に出てくれば自主規制は尻抜けになり、「それ見たことか」と高市氏がまた登場するだろう。
これはもう民度の問題だ。Facebookのみならず、校内網でも日本人よりはるかに多くの中国人が実名で議論しているのに、日本のSNSもブログも匿名だから、人的ネットワークが広がらない。最近、急成長しているLinkedInでは、SNSで求職できるが、そういうビジネスも匿名では生まれない。
先日も、アメリカの友人(日本語も読める)に「日本人は、ふだんはシャイで礼儀正しいのに、匿名になると、なぜ人が変わったように攻撃的になるのか」と質問されて、恥ずかしかった。彼のいうように「先進国で最低」の日本のウェブがこれ以上、劣化するのを防ぐには、小倉秀夫氏の提唱する実名制も一つの選択肢になるかもしれない。
今度の規制については、「有害情報の例示」や「登録制」など問題は残るが、基本的に民間による自主規制という線が守れたのはよかった(高市氏は採決に欠席したそうだ)。これは民主党が粘った結果で、「健全野党」としての存在感が示されたと思う。しかし問題は、民間だけでどこまで実効あるコントロールができるかということだ。携帯はともかく、ウェブでは(海外も含めれば)最初から100%取り締まるのは不可能で、これは公的規制にしても同じだ。
問題は、最初からルールを守る気のない確信犯である。たとえば天羽優子氏は、私や多くの人々の批判に対して「私信の公開はマナーとしてすべきではないことは私も同意する」と非を認めながら、問題の記述を削除しなかったが、最終的には大学のサイトから追い出された。つまり悪質な確信犯は、サイト管理者が制裁するしかないのである。
これを「所属志向に囚われている」とかいう佐々木氏の批判は(彼も認めたように)お門違いである。責任は、彼女がどんな組織に「所属」しているかとは無関係に、そのブログをホスティングしている業者に発生するのだ。たとえば彼女のブログがgooにあれば、私はgooの事務局に抗議する。通告があった場合に業者が違法なファイルを削除することは、プロバイダ責任制限法で義務づけられている。
今度はそれが有害情報まで広がったわけだが、こうなると「有害」の基準がむずかしい。今度の規制法では、3類型が例示されているが、それに該当するかどうかは自主規制機関が判断するので、公的な強制力はない。はてなのように「違法でない限り削除しない」という方針を公然と掲げている業者は、最初から自主規制団体に入らない可能性もある。
率直にいって、これは自主規制の限界である。ISPでフィルタリングが始まれば、2ちゃんねるがその対象になることは確実だが、そうすると「うちは2ちゃんねるが見られます」というのを売り物にするISPが出てくるだろう。もちろん彼らは自主規制団体に入らないから、制裁もできない。さらに個人でサーバを立てれば、まったく規制の対象外になる。そういうISPやサイトが大量に出てくれば自主規制は尻抜けになり、「それ見たことか」と高市氏がまた登場するだろう。
これはもう民度の問題だ。Facebookのみならず、校内網でも日本人よりはるかに多くの中国人が実名で議論しているのに、日本のSNSもブログも匿名だから、人的ネットワークが広がらない。最近、急成長しているLinkedInでは、SNSで求職できるが、そういうビジネスも匿名では生まれない。
先日も、アメリカの友人(日本語も読める)に「日本人は、ふだんはシャイで礼儀正しいのに、匿名になると、なぜ人が変わったように攻撃的になるのか」と質問されて、恥ずかしかった。彼のいうように「先進国で最低」の日本のウェブがこれ以上、劣化するのを防ぐには、小倉秀夫氏の提唱する実名制も一つの選択肢になるかもしれない。