今国会での成立は無理とみられていた公務員制度改革が、土壇場で民主党が協力して成立した。記者会見で、渡辺行革担当相が涙したのには驚いたが、ある関係者は「あの涙はわかる。私も一時はつぶれたと思った」といっていた。年金や道路などに比べると地味だが、今度の改革のインパクトは大きい。彼が「山県有朋以来の改革だ」と語ったのも、必ずしも大げさではない。それは単なる改革ではなく、戦後はじめての公務員人事制度の創設なのだ。

日本の公務員制度の建て前は、1950年にできた職階法だが、これは官僚の抵抗で一度も実施されないまま、昨年、廃止された。キャリア・ノンキャリアというのは法律のどこにも書いてない身分で、戦前からの高等官/判任官という制度を継承した慣例にすぎない。日本は法治国家だと思われているが、このように官僚さえその気になれば、法律を50年以上、無視することもできる官治国家なのである。

100万人以上の国家公務員の人事が、法的根拠もなく行なわれている事態は異常である。したがって今度の改革は、当たり前のことをしただけなのだが、官僚機構がすべて反対に回ったばかりか、民主党も労組の意向で、「高齢の公務員は定年まで雇用しろ」と反対していた。これに対して、民主党内の若手が「渡辺氏は民主党と志を共にしているのだから応援しよう」と執行部を説得し、土壇場で成立した。渡辺氏の涙は、そういう民主党内の「同志」への感謝の涙だったのだという。

その意味では、今回の改革は、明治以来の官治国家を改める最初の一歩になるかもしれない。今後の政治の軸は「官治国家か民主国家か」になるべきだと私は思うが、この点では現在の自民・民主の二大政党は、本質的な対立と一致していない。たとえば町村信孝氏が「官僚党」の総裁になり、中川秀直氏が「政治家党」の総裁になって、自民・民主の政治家がそれぞれに再結集して選挙を戦ったほうが、選択肢がはっきりするのではないか。大正期には政治主導の時代もあったのだから、この点でもあきらめるのは早い。

追記:人材バンクができるまでの3年の猶予期間、天下りを監視する再就職等監視委員会の人事が民主党の反対で難航している。このまま行くと、猶予期間がなくなって天下りがただちに禁止になる可能性があるが、そのほうがいいのではないか。その代わり、民間への再就職の禁止もすぐ廃止すべきだ。