先日の記事のコメント欄で、「青少年有害情報法案」の紛争処理機関(ADR)をどう評価するかについて議論が続いている。OhmyNewsのインタビューによれば、高市氏はこの「紛争処理機関に期待しています」とのことなので、これが今回の法案のコアだ。

しかし、その中身として「想定しているのは、インターネット・ホットラインセンターやインターネット協会です」という。ホットラインセンターについては、昨年インターネット協会副理事長の国分明男氏にICPFセミナーで話してもらったが、苦情の受理総数が、2006年には半年で約24000件だったのが、昨年(通年)は85000件と激増し、「パンク状態」だという。

今こういう紛争処理機関があり、違法性の高いものは警察に通報するしくみもあるのだから、これを増強すれば刑法などの一般法で十分だ。「青少年健全育成推進委員会」のような行政機関が懲役や罰金を課す業法が業界ごとにできるのは、日本の悪習である。有害情報は本にもビデオにもあるのに、なぜインターネットだけが行政処分を受けるのか。

ある官庁OBによると、「業界ごとに同じような法律をたくさん作るのがよくないことは、官僚もわかっている。しかし刑法や商法などの基本法を改正するには、法制審で5年ぐらいかかる。業法なら、最速1年でできる」という。要するに、法制審の老人が「慎重審議」でいつまでも結論を出さないため、行政が立法・司法を兼ねる悪法ができてしまうのだ。

しかし、法制審なんか必要ないのである。1997年、自民党が議員立法で商法を改正し、ストックオプションを創設する法案が出たとき、商法学者225名が連名で「基本法の改正に法制審を通さないのはおかしい」という抗議声明を出し、自民党側が「立法府は国会だ。法制審に話を通す必要なんかない」と反撃する事件があった。法律家自身が、官庁→法制審→閣議決定というのが本来の立法プロセスだと錯覚しているのだ。

また内閣や衆議院の法制局が、法案に事実上の拒否権をもっている慣行もおかしい。『裁判と社会』で著者も驚いているように、元内閣法制局長官は「もしも私が長官として認めた法案を最高裁が違憲と判断したら、私は切腹しなければならぬ」と語った。本来は裁判所が行なうべき違憲立法審査を、法制局が事前にやっているのだ。

こういう変則的な立法プロセスを是正するには、制度改正の障壁となっている法制審を廃止すべきだ。法制局が法案を「許可」する慣行もやめ、助言機関とすべきだ。欧米のように、法案は立法者である国会議員が自由に提出し、国会で修正すればいい。

また昨年、消費者団体訴訟制度が施行され、「適格消費者団体」が差し止め訴訟を起せるようになった。今回の法律が罰則つきで成立するようなら、消費者団体が違憲訴訟を起し、司法の場で決着をつければよい。「消費者庁」構想は、各省庁が既得権を手放さないで難航しているようだが、そんなものがなくても、ADRも含めて消費者司法が機能すれば、官僚集権制度を改めることは可能だ。