ITmediaによれば、「ダウンロード違法化は不可避」とのことだが、これは誤りである。小倉秀夫氏もいうように、国会では参議院で野党が多数なので、野党(特に民主党)が反対すれば、この法案は葬れる。

ところが、民主党の著作権についての政策ははっきりしない。レコード輸入権騒動のときは、法案が閣議決定されてから議員連盟ができたが、すでに遅かった。そのとき中心になった川内博史氏は、個人的にはダウンロード違法化に反対のようだが、これが党の方針に反映されるのかどうか、よくわからない。私の経験では、政治家はITとか著作権のような票にならない政策については、官僚に丸投げする傾向が強い。

著作権の根本的な問題は、所管官庁が情報通信と無関係な文化庁になっていることだ。彼らはITについての知識も経済学の常識もなく、毎日やってくる権利者団体の話をひたすら代弁し、霞ヶ関のほかの官庁からもひんしゅくを買っている。文科省のなかでも傍流の弱小官庁が各省折衝で大きな発言力をもっているのは、アメリカなどの外圧の支援を受けているからだ。

きのう判決の出た映画の著作権についても、文化庁は「2004年1月1日0時」は「2003年12月31日24時」と同時だ、という荒唐無稽な論理で延長をはかったが、最高裁に退けられた。そもそも私も4年前に指摘したように、50年前の作品の著作権を延長しても、創作者は死去しているのだからインセンティブにはならない。たとえ著作権を強化するとしても、今後つくられる作品に限るべきである。

IP放送についても、知的財産戦略本部も総務省も「IP放送は放送だ」と解釈しているのだから、国会答弁を統一すればすむのに、文化庁はわざわざ3年もかけて文化審議会で著作権法を改正し、「当該放送区域内に限る」という条件をつけた。このため、放送業界はこの条件を盾にとって、いまだに地上波のIP再送信に同意しない。

民主党は、通信・放送については独立行政委員会で規制するという法案を出したこともあるのだから、このように情報通信行政と整合性のない政策を出す文化庁から著作権政策を分離し、「情報通信委員会」に吸収する法案を参院に提出してはどうか。年金や消費税に比べれば地味な問題だが、こういう政策を民主党が打ち出せば、若い有権者は投票に行くようになるし、ネットで民主党が支持されるようになるだろう。