小沢一郎氏が民主党の代表に3選された。その所信表明を読んで、おやっと思ったのは「明治以来の官僚を中心とする国の統治機構を根本的に改革する」など、統治機構という言葉が3回出てくることだ。「格差是正」や農業保護などのくだらない政策が並んでいるのはこれまで通りだが、その財源が明示されていないという批判に答えて、統治機構を変えることで行政を効率化するというロジックになっている。

それにしても「明治以来の統治機構」という言葉が、政治家から出てきたのは珍しい。こういう観念的な言葉は、選挙向けのスローガンとしては役に立たないが、当ブログでもたびたび書いてきたように、これが日本経済の行き詰まっている本質的な原因である。バラマキの財源を捻出するために統治機構を変えるというのは逆で、「官僚内閣制」を変えないかぎり、どんな改革も法律として実現できない。

この意味で、高橋洋一氏が新著で書いている公務員制度改革こそ「本丸」である。今回は人事を変えただけだが、その立法化が麻生内閣のもとで行われたら、換骨奪胎されるおそれが強い。本気で霞ヶ関を変える気なら、小沢氏の所信に公務員制度改革が入っていないのはおかしい。

私の友人に小沢氏の元秘書がいるが、彼によると小沢氏は読書家で、書庫には歴史の本が多いそうだ。特に明治の元勲にくわしく、大久保利通が好きだという。大久保は版籍奉還や廃藩置県を行い、プロイセンの中央集権システムを輸入して「明治の統治機構」をつくった人物である。彼は内務省を設置し、初代の内務卿になった。大久保が現在の霞ヶ関をつくったといってもよい。

大久保を敬愛する小沢氏は、本当に統治機構を変える気があるのだろうか。かつて大蔵省と画策した「国民福祉税」のように、むしろ官僚機構を掌握して使おうというのが彼の戦略だったのではないか。民主党がシンクタンク「プラトン」をつくろうとしたときも、小沢氏は「政権をとったら霞ヶ関を使えばいいんだ」と反対したという。少なくとも最近までの彼の議論に、霞ヶ関そのものを変えるというという方向性はなかった。

これも選挙向けのリップサービスなのか、それとも「大久保以来の官僚機構」を否定する心境に達したのか、聞いてみたいところだ。民主党の若手議員も「小沢さんが格差社会を語るのは似合わない。彼にはもっと大きな話をしてほしい」といっている。今回の所信表明で彼が出した囲碁のたとえでいえば、「急場」の話しかない麻生太郎氏に対して「大場」の話をぶつけてこそ小沢氏の本領が発揮されるのではないか。