
厳密な数学的証明は、International Economic Review(2003)に出た彼らの論文で行なわれている。それによれば、知的財産権と称するものは、本来の財産権とは異なる特定の業界に与えられた特権(privilege)であり、知的独占とよぶべきだ。これを全面的に廃止しても、財産権と市場メカニズムだけでイノベーションのインセンティブは守れる(むしろ競争によって高まる)。
彼らの論文は、賛否両論の反響を呼んだ。SolowやStallmanは賛成したが、KleinやRomerは「特殊な需要関数を想定していて非現実的だ」と批判した。ケンブリッジ大学出版局のレフェリーからも何度もNGを出され、5年がかりで出版にこぎつけた。その結果、主張はかなりマイルドになり、初期投資が大きくコピーしやすい技術については、ライセンス契約などの補完的な制度も提案している。なおLevineは、ゲーム理論の世界ではだれでも知っている有名な理論家である。
当初は問題外のトンデモ議論という感じだったが、最近では彼らの主張を引用する経済学の論文も増えてきた。法技術的な問題を別にすれば、原理的にはすべての権利は契約によってエンフォースできるので、民法さえあれば特殊な業界ごとの権利を設定する必要はないはずだ。特にDRMや電子契約ができた現在では契約を実装するコストも低く、ファイルのコピーぐらいに警察が出てくるような法律は過剰規制である。
単行本のほうは数式を使わずにやさしく書いてあるので、邦訳してくれる出版社はないだろうか。これは日本語という付加価値があるので、商品として成り立つと思うが・・・