ロンボルグの本の邦訳が出る。あいかわらず邦題が(おそらく訳文も)下品だが、それを我慢して読めば、現在の温暖化騒動のバカさ加減がよくわかるだろう。この種の議論には、少なくとも5段階の疑問がある:
  1. 「地球が温暖化している」という大前提が疑わしい:ここ18ヶ月連続して、-0.7℃以上という観測史上最大の寒冷化が進行しており、東工大の「理学流動機構」のモデルによれば、これは2000年ごろをピークにして始まった寒冷化の局面の始まりである。
  2. かりに温暖化しているとしても、その主要な原因がCO2かどうかは疑わしい:IPCCの報告書でさえ、「人為的なCO2排出が温暖化の原因である可能性がきわめて高い」と書いているだけで、それが決定的な原因だとは書いていない。人為的な要因があることは明らかだが、自然要因で相殺される可能性もあり、CO2の排出量を削減すれば温暖化が緩和するかどうかもわからない。
  3. かりに人為的温暖化が主要な原因であるとしても、京都議定書によって温暖化を止めることはできない:京都議定書が完全実施されたとしても、それはCO2の濃度を減らのではなく、温暖化を5年ほど先延ばしするだけである。
  4. かりに京都議定書によって温暖化を先延ばしすることに意味があるとしても、その効果がコストに見合わない:Beckerなども指摘するように、100年先の気温をわずかに下げる政策の割引現在価値はたかだか500億ドルであり、1兆ドルを超えるコストに見合わない。同じコストを飢餓や感染症への対策にかければ、数千万人の生命を救うことができる。
  5. かりにCO2削減に意味があるとしても、排出権取引による統制経済は莫大な経済的損失をもたらす:今週のMankiw's Blogでも指摘しているように、この種の絶対的基準のはっきりしない問題には、Coase型(財産権方式)よりもPigou型(課税方式)の政策のほうが望ましいのだ。
温暖化に疑問を呈する科学者を「査読つきの学会誌に出ていない」などという権威主義で否定する向きもあるが、少なくとも経済学の世界では、Mankiwに賛成する経済学者が多数派である(権威主義がお好きなら、ここにはノーベル賞受賞者も2人含まれている)。論理的には、上の5段階の4が成り立つことは経済学で証明できるので、それまでの3段階が(自然科学的に)成り立つとしても、京都議定書の実施に1兆ドルもかけることは政策として正当化できない。温暖化騒動は、経済の論理を知らない自然科学者と環境ロビーの作り出した幻想にすぎないのだ。