きょうのASCII.jpのコラムで、私的録音録画補償金をめぐる文化庁のおかしな論理を紹介したが、さらに奇妙なのは文化庁が、「電機業界がこれに反対するならダビング10もだめだ」として、6月からのダビング10実施を凍結したことだ。これについて読売新聞の社説は、まるで補償金をのまないメーカーが悪いように書いているが、これは逆である。ダビング10は、コピーワンスが不便だという批判を受けて昨年、総務省が決めたものだ。それを補償金の「人質」にして妨害しているのは文化庁である。
しかし文化庁のねらいは外れ、電機業界は補償金を飲む気はない。コピーワンスとダビング10なんて実質的には変わらず、くるくる変わるとかえって混乱するだけで、大したメリットはないからだ。それよりB-CASも含めた、今の複雑で使いにくい放送システムを抜本的に変えない限り、デジタルテレビは売れず、2011年にアナログ放送を止めることはできない。困るのはメーカーではなく、総務省とテレビ局である。
他方、アイキャストとNTTぷららは今月から、日本初の地上波放送のIP再送信を開始した。とはいえ、そのサービスは東京都内だけ。テレビ局のつくる「地上デジタル放送補完再送信審査会」が、IP放送が「当該放送区域外」に伝送されないかどうかを審査して、放送を許可するからだ。IP放送業者は、東京から他県に出て行くルータに細工してわざわざパケットを止め、「審査会」をパスしたのである。
これは文化庁が「IP放送は放送ではない」と主張し、著作権法の改正でIP再送信エリアを県域に限定したためだ。国境を超えて情報が流通するインターネットに文化庁がわざわざ県境をつくったのは、県域免許で営業している地方民放の既得権を守るためだ。IP放送なら、在京キー局の放送を全国に放送できるが、そうなるとキー局の番組を垂れ流すだけで「電波料」をとる地方民放のビジネスが成り立たなくなる。そこで文化庁は、著作権法に彼らの既得権を守る規定を入れたのである。
このように消費者の利益を犠牲にして業者の既得権を守る文化庁の姿勢は、見事に一貫している。しかし総務省のみならず、経産省も公取委も内閣府(知的財産戦略本部)も、こうした著作権行政に不満をつのらせている。先日のJASRACへの立ち入り調査なども、競争を阻害してきた文化庁への警告とみるべきだ。特に文化庁の妨害によって2011年のアナログ停波ができなくなれば、いま議論されている電波の新規割り当てもパーになり、国民経済にも深刻な影響が及ぶ。官邸や自民党は指導力を発揮して、文化庁の妨害工作をやめさせるべきだ。
しかし文化庁のねらいは外れ、電機業界は補償金を飲む気はない。コピーワンスとダビング10なんて実質的には変わらず、くるくる変わるとかえって混乱するだけで、大したメリットはないからだ。それよりB-CASも含めた、今の複雑で使いにくい放送システムを抜本的に変えない限り、デジタルテレビは売れず、2011年にアナログ放送を止めることはできない。困るのはメーカーではなく、総務省とテレビ局である。
他方、アイキャストとNTTぷららは今月から、日本初の地上波放送のIP再送信を開始した。とはいえ、そのサービスは東京都内だけ。テレビ局のつくる「地上デジタル放送補完再送信審査会」が、IP放送が「当該放送区域外」に伝送されないかどうかを審査して、放送を許可するからだ。IP放送業者は、東京から他県に出て行くルータに細工してわざわざパケットを止め、「審査会」をパスしたのである。
これは文化庁が「IP放送は放送ではない」と主張し、著作権法の改正でIP再送信エリアを県域に限定したためだ。国境を超えて情報が流通するインターネットに文化庁がわざわざ県境をつくったのは、県域免許で営業している地方民放の既得権を守るためだ。IP放送なら、在京キー局の放送を全国に放送できるが、そうなるとキー局の番組を垂れ流すだけで「電波料」をとる地方民放のビジネスが成り立たなくなる。そこで文化庁は、著作権法に彼らの既得権を守る規定を入れたのである。
このように消費者の利益を犠牲にして業者の既得権を守る文化庁の姿勢は、見事に一貫している。しかし総務省のみならず、経産省も公取委も内閣府(知的財産戦略本部)も、こうした著作権行政に不満をつのらせている。先日のJASRACへの立ち入り調査なども、競争を阻害してきた文化庁への警告とみるべきだ。特に文化庁の妨害によって2011年のアナログ停波ができなくなれば、いま議論されている電波の新規割り当てもパーになり、国民経済にも深刻な影響が及ぶ。官邸や自民党は指導力を発揮して、文化庁の妨害工作をやめさせるべきだ。