先日の「温暖化バブル」についての記事には、コメントやブログで多くの議論があったが、その中に「槌田氏は反原発のトンデモ学者だから信用できない」という類の批判(ともいえない批判)があった。しかし本書の著者、伊藤公紀氏は横浜国立大学教授、渡辺正氏は東大教授で、いずれも環境科学の専門家だから、肩書きを理由にして否定はできないだろう。

本書で指摘されている疑問点は、これまで当ブログで書いたものと重複する点も多いが、さすがに専門家だけに、IPCCの依拠する1次データそのものに問題があることを指摘している。具体的なデータで示されている疑問を列挙しよう。

  • 最近の「地表気温」が単調に上昇しているというデータは疑わしい。地表気温というのは地球上の数千の観測点の平均値だが、設置場所がずさんなため、多くの観測点が都市化によるヒートアイランド現象の影響を受けている。たとえば東京(大手町の気象庁)の気温は、20世紀に3℃上昇した(正確な値の出る観測点は日本中で3ヶ所しかないという)。またテキサス州の観測点は、2000年にビルのすぐそばに移設されたが、この年からテキサスの「地表気温」は急上昇した(図1)。



    図1


  • 太陽活動の影響で、気温の変化はほぼ説明できる。図2のように太陽黒点周期と気温にはきわめて高い相関がある。IPCCもこの事実は認め、「20世紀前半の気候変動は自然現象だった」としているが、後半の変動が自然現象ではないという根拠は示していない。


    図2


  • 2007年以降、地表気温は急速に下がり、特に2008年の4月は、ここ数十年の最低気温を記録した。図3はNOAAのデータだが、最近10年のトレンドは下降傾向を示している。これはロンボルグも指摘しており、特に中国では記録的な寒冷化によって大きな被害が出ている。



    図3


  • 気象学者の「圧倒的多数」が人為的温暖化を支持しているというのは嘘である。アメリカ気象学会の2003年のアンケートによれば、気候変動の原因が人為的なものだという説に「賛成」する科学者は32%、「反対」が21%、「どちらともいえない」が47%である。
この他にも多くの具体的なデータが示され、IPCCのコンピュータ・シミュレーション結果が観測データと大きく食い違うことも明らかにされている。特に、最近の気温が下降トレンドを示している図3のデータは驚きだ。地球温暖化という傾向は幻であり、長期的な循環の一局面にすぎなかったのではないか。