「サイバーリバタリアン」の第2回は、永遠のテーマ「実名・匿名」論争である。当ブログでこういうテーマを扱うと、はてなブックマークがいつも大騒ぎになる。そこに群れるお子様たちは、匿名で悪口を書ける(しかも反撃されない)おもちゃを取り上げられるのがいやなのだ。既得権にしがみついて自立できない古い日本人の卑しさを、彼らも受け継いでいるわけだ。

コラムにも書いたように、私は小倉さんの提唱する実名登録制には反対だが、松岡美樹氏などの主張する「何もするな」という主張は、もっと有害だ。彼は「ネットの本質は性善説」だというが、何世紀の話をしているのか。世の中が善人ばかりなら、情報セキュリティは必要ない。そのうち韓国のように匿名の中傷が原因で自殺者が出たりすると、ウェブを規制したい政治家たちに絶好の口実を与えるだろう。

松岡氏もDan氏も勘違いしているが、完全匿名の補集合は完全実名ではない。OpenIDでもいいし、当ブログのようにgooIDでもいい。diggやSlashdotのようにメンバーどうしで格づけして悪質なコメントを隠すしくみもあるし、Boing BoingのようなIDと事前承認の2段構えもある。何もしないと、日本のウェブは芸能情報とオタク情報で埋め尽くされるだろう。

リバタリアンは、こういう「ルールは何も必要ない」という無政府主義を、もっとも強く批判する。それはハイエクの主著『法と立法と自由』のタイトルだけで明らかだろう。自由とは、数百年にわたる多くの人々の闘いと犠牲によって獲得された貴重なルールなのだ。自由のコストがゼロだと思っているのは、その闘いの経験のない日本人だけである。

追記:O'Reilly Radarによれば、Google、IBM、Microsoft、VeriSign、Yahoo!がOpenID財団に参加したそうだ。