昨日ある研究会で、ITU関係者の話を聞いた。おもしろかったのは、ITUが最大のテーマとして掲げる「デジタル・デバイド」の解説だった。日本ではデジタル・デバイドといえば、僻地の商売にならない話というイメージがあり、私もITUの会合で途上国の話ばかり聞かされてうんざりしていたのだが、彼によれば今やデジタル・デバイドこそ最大のビジネス・チャンスなのだという。

特にすごいのはアフリカで、年率20%で携帯電話のユーザーが増え、ガボンでは固定電話が数%しか普及してないのに、携帯電話の普及率は50%を超えている。もちろんGSMで、端末は50ドル以下。ガボンにキャリアなんかないから、ノキアが端末から基地局からオペレーションまで全部やって、アフリカで大もうけしているという。そのライバルは、中国のファーウェイ(華為)。日本の通信ベンダーは影も形もない。

アジアでも同じような状況で、こっちでもノキア、モトローラと並んでファーウェイが各国に進出している。日本のキャリアもベンダーもまったく手が出ず、ひもつきODAがなくなったら終わり。中国では去年NECが撤退して、日本の携帯ベンダーは全滅した。キャリアの下請けに慣れてしまって、ひとり立ちできないのだ。SIMロックを外したら、日本の携帯市場はノキアとモトローラに席捲されるのではないか。もともと端末メーカーが世界で5社しかないのに、その1割の日本で11社も生き残れるはずがない。

トヨタやソニーが世界企業になったのは、1950年代の日本が貧しい時代に、海外に市場を求めるしかなかったからだ。70年代以降は、なまじ国内市場が大きくなったために、PC-9800やPDCに代表されるパラダイス鎖国状態が続いてきた。しかし、それももう長くは続かない。国内市場は成熟して、これから縮小してゆく。今のペースで人口が減少すると、2050年には韓国と同じぐらいになる。ICT産業で、世界市場で闘える企業が1社もないというのは致命的だ。

それなのに、キャリアもベンダーも世界市場は眼中になく、国内で消耗戦を続けている。総務省は、今ごろから財界の老人を集めて「ICT国際競争力会議」を立ち上げているが、そんな時代錯誤の産業政策で、この内外の実力差はとても埋められない。「グローバリズム」や「格差社会」を批判していても、稼ぎ手がいなくなったら、みんな平等に貧しくなるだけだ。今年の第2四半期の実質GDPは、年率1.2%のマイナスになった。

ジュネーブから見た日本のプレゼンスは、とても小さく、また縮んでいく一方だという。日本が「ブロードバンド大国」だなどというのも昔の話で、WiMAXは各国ではもう実施段階だ。NGNも、欧州では単純な「オールIP化」としてどんどん進んでいるが、NTTはデラックスな「NTT版NGN」のトライアルばかりやって、いつビジネスになるのかもわからない。そこにも、グローバルな視野はすっぽり抜けている。

それでも「開国」するしか選択肢はないだろう。政府が支援なんかしないで、外資に合併でも買収でもされて、資本の論理で解体・再編するしかない。アジア通貨危機で破綻した韓国は、その後サムスンが世界企業に成長した。日本の携帯ベンダーも、1社残れば上等だろう。