自民党の総裁には、予想どおり福田氏が当選した。麻生氏も予想以上に善戦したが、この1週間ほどの地方遊説などを見ていて気になったのは、2人の政策が「都市と地方の格差解消」を最優先するという点で一致していたことだ。これは参院選で民主党のバラマキ政策が一人区でアピールしたという判断があるようだが、これから総選挙に向けてバラマキ合戦が始まるのかと思うと憂鬱だ。
この点でも、先日紹介して大きな反響のあった「『丸山眞男』をひっぱたきたい」の続編が重要な問題提起をしている。赤木氏は、若松孝二氏の「フランスでも若者が立ち上がったんだから、お前も立ち上がれ」というアジテーションに対して、
赤木氏は、こういう左翼に絶望して、むしろ八代尚宏氏の「正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要」という発言に共感している。これは当時、2ちゃんねるなどで激しいバッシングを受けたが、経済学者の多数意見(だがpolitically incorrectなので口にはできない)である。日本は、フランスのように法律で規定してはいないが、判例によって「正当な事由」なしに解雇することは事実上、不可能だ。
労働組合の始まりは、ギルドである(cf. Wikipedia)。組合員であることが就業の条件になる「クローズド・ショップ」が、その原型だ。つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。それが社会主義の主張と重なったため、資本家と労組の「階級闘争」が社会問題として取り上げられてきたが、労組の組織率が15%にまで落ちた現在では、赤木氏も指摘するように、むしろ組織労働者と未組織労働者の「戦争」こそ本質的な問題だ。
にもかかわらず自民党のみならず、労組を基盤とする民主党も、この問題を正視できず、「都市と地方の格差」などという話にすりかえている。地方の所得が低いなら、都市へ移動すればいいだけのことで、こんなものは「非問題」である。ところが1970年代以降、「国土の均衡ある発展」の名のもとに地方にバラマキを続けたことが、日本経済に歪みをもたらし、成長率が下がった。特に90年代に都市で仕事がなくなり、地方に大量のバラマキが行なわれたため、若者は地方に戻って土方をやるしかなくなった。バラマキは、むしろ格差を再生産しているのだ。
問題は「格差社会」などという一般論ではなく、若年層に非正規労働者が増えていることだ。それを解決するには、労働組合の既得権を解体し、正社員を解雇自由にするしかない。「終身雇用の美風が失われる」などと嘆く向きには、かつてサラリーマンだった私が自信をもっていうが、サラリーマンは終身雇用が好きで会社にいるのではない。やめてもつぶしがきかないから、辛抱しているだけだ。解雇自由にする代わり、職業紹介業も自由化して中途採用の道を広げれば、みんな喜んで会社をやめるだろう。
この点でも、先日紹介して大きな反響のあった「『丸山眞男』をひっぱたきたい」の続編が重要な問題提起をしている。赤木氏は、若松孝二氏の「フランスでも若者が立ち上がったんだから、お前も立ち上がれ」というアジテーションに対して、
このデモと、このデモへの単純な翼賛からは、現に失業しているフランスの若年層や移民が直面している状況への配慮を読み取ることはできない。これは、日本における既存の左翼がいわゆる「労働者」という名前の安定労働層の利益確保ばかりに注力し、私のような貧困労働層の問題を正面から取り上げないという配慮のなさと同質のものであるように思える。と、どっちが「識者」だかわからないぐらい冷静な分析をしている。赤木氏も言うように、フランスの雇用改革に対するデモは、解雇制限をゆるめるなという学生の暴動に労組が合流したものだが、これを政府が撤回したおかげでフランスの世界一きびしい解雇制限は変わらず、したがって企業は正社員を採用せず、結局は学生や移民が被害者になるのだ。
赤木氏は、こういう左翼に絶望して、むしろ八代尚宏氏の「正社員の待遇を非正規社員の水準に合わせる方向での検討も必要」という発言に共感している。これは当時、2ちゃんねるなどで激しいバッシングを受けたが、経済学者の多数意見(だがpolitically incorrectなので口にはできない)である。日本は、フランスのように法律で規定してはいないが、判例によって「正当な事由」なしに解雇することは事実上、不可能だ。
労働組合の始まりは、ギルドである(cf. Wikipedia)。組合員であることが就業の条件になる「クローズド・ショップ」が、その原型だ。つまり労組は「正社員」による独占を守る組織なのだ。それが社会主義の主張と重なったため、資本家と労組の「階級闘争」が社会問題として取り上げられてきたが、労組の組織率が15%にまで落ちた現在では、赤木氏も指摘するように、むしろ組織労働者と未組織労働者の「戦争」こそ本質的な問題だ。
にもかかわらず自民党のみならず、労組を基盤とする民主党も、この問題を正視できず、「都市と地方の格差」などという話にすりかえている。地方の所得が低いなら、都市へ移動すればいいだけのことで、こんなものは「非問題」である。ところが1970年代以降、「国土の均衡ある発展」の名のもとに地方にバラマキを続けたことが、日本経済に歪みをもたらし、成長率が下がった。特に90年代に都市で仕事がなくなり、地方に大量のバラマキが行なわれたため、若者は地方に戻って土方をやるしかなくなった。バラマキは、むしろ格差を再生産しているのだ。
問題は「格差社会」などという一般論ではなく、若年層に非正規労働者が増えていることだ。それを解決するには、労働組合の既得権を解体し、正社員を解雇自由にするしかない。「終身雇用の美風が失われる」などと嘆く向きには、かつてサラリーマンだった私が自信をもっていうが、サラリーマンは終身雇用が好きで会社にいるのではない。やめてもつぶしがきかないから、辛抱しているだけだ。解雇自由にする代わり、職業紹介業も自由化して中途採用の道を広げれば、みんな喜んで会社をやめるだろう。