きょうのICPFシンポジウムは、意外に(?)おもしろかった。著作権がらみのテーマの討論会は、私自身が出たのも含めて何度も聞いたが、いつも権利強化賛成・反対のいいっぱなしで、話がかみ合わなかった。ところが今回は、パネリストの認識が、現在の著作権法が<壊れている>あるいは<変えないともたない>という点で一致していた。だから議論も、どう変えるかということに絞られた。パネリストの提案を私なりに2X2のマトリックスで整理すると(*)



  1階建て(法改正) 2階建て(契約ベース)
登録制度 林 白田
強制許諾 津田 ?

1階建ての改革案は、論理的でわかりやすいという利点はあるが、ベルヌ条約を脱退するとか改正するとかいう非常に高い壁がある。他方、2階建ては現行法の中でやれるというメリットはあるが、権利者が2階に上がってくれるのか(1階より有利か)という点がむずかしい。白田案については、前回コメントしたので、他の2案について:

林案は、たぶん私の考えといちばん近い。「デジタル社会で権利をもつには、IDをもつことが出発点だ。何もしないで権利が発生するという現行法は根本的に間違っている」と安田浩氏が言ったそうだが、同感だ。ベルヌ条約を改正して、登録主義にすることがもっともすっきりした解決策だ。これは、ある程度までは国内法だけの改正も可能だが、甲野氏は「日本だけ無茶はできない」と消極的だった。

津田案は、EFFやバークマンセンターなどが昔から提唱している改革案だが、肝心の料率をどう決めるかという点が難点だ。音楽では「定価」が事実上成立しているので容易だと思うが、映画のように当たりはずれが大きいものはむずかしいだろう。これを国が決めると「コンテンツ税」のようなものになりかねない。

現実的には、ベルヌ条約の改正案を論じても始まらないので、現行法の枠内でどうするかを考えなければならない。その点で「?」と書いたのは、実は前例があり、EU委員会が域内で強制許諾についての法律を作れというEU指令を出している。この場合、むずかしいのはベルヌ条約が強制許諾を放送業者の特権としている点だが、EU委員会はそれにはあえてふれず、WIPOの3条件(特殊ケースに限る・通常の営利利用と競合しない・権利者の利益を毀損しない)を基準にして認めるべきだとしている(**)

この点を私が質問したら、意外にも岸氏と甲野氏が賛成してくれた。またJASRACも音楽だけでなく、映像も含めた包括ライセンスの仲介業にビジネスを拡大できるなら、悪い話ではないだろう。このあたりが、実現可能な改革をさぐってゆく足がかりになるのではないかという気がした。

(*)登録制度と強制許諾(包括ライセンス)の中身については、当ブログの記事を参照。

(**)関連するEU指令などは『交感する科学』所収の論文にくわしく書いた。ウェブにドラフトがある。