ニューズウィークのインタビューに答えて、安倍首相は慰安婦問題についての「責任」を認めた:
We feel responsible for having forced these women to go through that hardship and pain as comfort women under the circumstances at the time.
河野談話よりはっきり「われわれが慰安婦を強制した責任」を認めている。これで日本政府は「有罪」を自白したことになる。外務省の事なかれ主義に、とうとう安倍氏も屈したわけだ。「とりあえず頭を下げておけば何とかなる」という日本的感覚が国際政治の場で通じないことは、河野談話で思い知らされたはずなのに、こういう重大発言を週刊誌相手にさせる外務省(あるいは世耕補佐官?)の感覚も信じられない。

今後、米下院で日本非難決議(121決議案)が可決され、首相の公式謝罪や強制連行を否定する言論の弾圧を求められても、拒否できないだろう。元慰安婦が日本政府に国家賠償を求める訴訟は、これで勢いづくだろう。国連は公訴時効も罪刑法定主義も無視して「レイプ・センター」をつくった戦犯を逮捕せよと求めるマクドゥーガル報告書を採択しており、これにもとづく制裁要求が出てくることも考えられる。北朝鮮が日本に慰安婦への個人補償を求めてきたら、6ヶ国協議はめちゃくちゃだ。そして朝日新聞は「拉致と慰安婦は同じだ」と主張して、北朝鮮を応援しているのである。

ナチス・ドイツの同盟国に強制労働させられた人々が関連企業に損害賠償を請求できるというヘイデン法は、国外で起きた事件でも過去に遡及して訴えることができるとしている。これにもとづいて起こされた17件、総額1兆ドルの訴訟は、ブッシュ政権によって連邦最高裁で棄却されたが、政権が民主党に変わったら、また訴訟が出てくることは十分考えられる。そしてこのヘイデン法の共同提案者が、問題の121決議案を出したマイケル・ホンダ議員なのである。

これは痴漢の疑いで逮捕された容疑者が、「正直に認めないと家に帰れないぞ」と脅されて「自白」したようなものだ。いったん罪を認めたら、終わりである。植草一秀被告のように、後になっていくら「やってない」と主張して、大がかりな弁護団を組んでも無駄だ。世界史にも「日本軍が20万人の女性に性奴隷を強要した」という、とんでもない「史実」が残ることになるだろう。

追記:国内各紙の報道では「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況に、我々は責任がある」という表現になっており、「強制」という言葉は入っていない。こっちが外務省の用意した回答(首相の言葉)だとすれば、"forced these women ..."という部分はニューズウィークの訳しすぎかもしれない。

追記2:鈴木官房副長官の記録したインタビュー全文によれば、問題の部分の首相の答に「強制」という言葉はない(コメント欄参照)。