政府は「天下り斡旋の禁止」を含む公務員制度改革の政府案をまとめ、自民党に説明した。これはニュースとしては地味な扱いだったが、その決定過程でこれまでの霞ヶ関にはみられない二つの「事件」が起きていた。

一つは、この政府案に関連して「予算や権限を背景とした押しつけ的な斡旋」が行なわれているという内容の政府答弁書に対して、経産省が「押しつけというのは主観的で、答弁としては適切でない」と反論する文書を内閣府に提出したことだ。これを出したのは、今や霞ヶ関の抵抗勢力のチャンピオンとなった北畑隆生事務次官である。

もう一つは、26日の事務次官会議で北畑氏と財務省の藤井秀人事務次官が、この答弁書に公然と反対したが、翌日の閣議で安倍首相がそれを「事務次官会議なんて法律でどこにも規定されていない。単なる連絡機関だ。方針通り閣議決定する」と押し切ったという話だ。

この事務次官会議というのは、不思議な会議である。閣議の前日に、それと同じ議題を各省庁の事務次官が集まって審議し、その結果が翌日そのまま閣議決定される。法的根拠はないが、これが実質的な政府の最高意思決定機関である。今回のように事務次官会議で異論が出ることも異例だが、そういう場合は差し戻されて各省折衝をやり直すのが通例だ。それが閣議決定されたことは、異例中の異例である。

このように国民に対して説明責任を負わない非公式の機関が実質的な意思決定を行い、内閣はそれにラバースタンプを押すだけという状況が「変われない日本」の根底にある。この構造が変わらない限り、どこの官庁の既得権も傷つけない決定しかできないからだ。実質的な調整は各省折衝で終わっており、事務次官会議はそれを追認する儀式にすぎないので、廃止すべきだ。今度の公務員制度改革は、各省庁が総力戦でつぶしにかかっており、ここでまた腰砕けになったら、安倍政権は終わりである。