朝日新聞が、少しずつ左翼的なカラーを払拭しようとしているのに対して、毎日新聞はむしろ左翼色を強めることでニッチ市場をねらおうとしているようにみえる。貸金業規制のときも、突出して過激な規制強化論を主張していた。今年は、「ネット君臨」というインターネットを敵視するトンチンカンな連載を始めている。

攻撃のターゲットが2ちゃんねるならまだしも、今度は村井純氏だ。「富生んだIT戦略」という思わせぶりな見出しなので、何かスキャンダルでもつかんだのかと思ったら、中身はIPv6を提唱して、その関連企業の株に投資してもうけたというだけの話だ。

この記者は、IPv6というものを誤解している。政府がIPv6にコミットすることを決めたのは森内閣のときであり、それはすでに政府調達の条件になっている。村井氏だけが知りうる事実ではないし、彼がIT戦略本部委員の地位を利用して利益を上げる余地はない。彼が「インサイダー」だとすれば、その源泉は日本のインターネット業界を動かす彼の実力であって、政府の力ではない。

滑稽なのは、ベンチャー企業への投資をまるで打ち出の小槌であるかのように書いていることだ。ネットベンチャーなんて、10社のうち1社でもうまく行ったらいいほうであって、そのもうかった部分だけを取り上げても、村井氏の投資全体のパフォーマンスを示すことにはならない。毎日は、失敗した投資を含む彼の資産全体を調べたのか。

今後の新聞業界で、朝日と読売は確実に生き残るが、毎日は「ナイアガラの滝の縁まで来ている」と河内孝『新聞社:破綻したビジネスモデル』は指摘している。ネットをきらう左翼の老人におもねっても、市場は先細りだ。滝壺に落ちるのが早まるだけではないか。

むしろ毎日にすすめたいのは、ネット中心への移行だ。日本の新聞サイトは、記事の全文が読めず、過去の記事もリンクがすぐ切れる。毎日だけでも全文を提供し、アーカイブを整備して特色を出せば、生き残れる可能性はある。最終的にはマイクロソフトが買収して、世界初のネット専門新聞として再生をはかるというのもいいと思うが、どうだろうか。

追記:この記事の続きでも村井氏にからんでいるが、意図がよくわからない。IT政策を批判するつもりだとすれば的はずれだし、金銭スキャンダルがねらいなら、こんなネタは週刊誌でも記事にならない。要するに、取材班がインターネットをまるでわかっていないのではないか。