5ヶ国とゲイツ財団が、感染症のワクチンを開発・配布するための基金に15億ドル支出することを決めた。これによって540万人の生命が救えると予測されている。効果の不明な京都議定書の実施に1兆ドルかけるよりも、こっちのほうが基金の「資本収益率」ははるかに高い。

このAMCという基金は、Michael Kremerのアイディアをもとに発足したものだ。途上国の人々には高価なワクチンは買えないが、かといって安価な代用薬が出回ると、製薬会社が新薬を開発しなくなる。このジレンマを解決するため、新薬の技術を財団で買い上げて無償で途上国に供与するのだ。アル・ゴアとリチャード・ブランソンも、地球温暖化を防ぐ技術の開発に2500万ドルの基金を創設した。

これは「知的財産権」のパラドックスを解決するメカニズムでもある。情報は、事後的には無料(=コピーの限界費用)で配布することが効率的だが、それは事前の情報生産への投資のインセンティヴを低下させる。しかし今回のような報奨システムを使えば、インセンティヴをそこなわないで技術を開放できるのである。

同じ考え方で、特許を補完する制度として政府が発明を買い上げ、それを無償で公開してもよい。こういう制度は、実は特許よりも古く、カメラの銀塩フィルムはフランス政府が技術を買い上げて無償開放したことで普及したものだ。日本政府も「日本発の国際標準」をつくりたいのなら、同様の買い上げ制度をつくってはどうだろうか。