高木さんの「棒グラフ捏造シリーズ」の続編が出ている。おもしろいので、これに便乗して、地球温暖化のデータがいかに偽造(捏造とまではいわない)されているかをみてみよう。一番ひどいのは「今後100年間で気温6.4度上昇との予測」という見出しを掲げたTBSだ:
なぜこういう偽造が起こるのだろうか。第1に、政府は地球温暖化が深刻だということを前提にしてさまざまなキャンペーンを始めているので、第4次報告書の予測数値が第3次報告書よりも低いというのは、彼らにとって「不都合な真実」である。環境省にとっては、予算を獲得するという明確な目標があるので、環境省クラブの記者には、めいっぱい派手な記事を書いてもらうように誇大な情報を提供する。
第2に、メディアにとっても地球環境は絵になるテーマで、政治的にも安全なので、テレビ局にとっては魅力的な素材だ。特に海外取材がからむものは、偽造するインセンティヴが大きい。ふつう海外取材は、事前にかなり多額の出張旅費を申請するので、出張に行く段階で採択が決まっている。パリへ行ってから「1.8-4度」という地味なニュースを出したのでは格好がつかないので、嘘であっても「ますます深刻化している」というニュースを出すのだ。
こういう事情は海外のメディアも同じだが、たとえばCNNは"Scientists predict global temperature increases of 3.2-7.1 degrees F by 2100"と正確に報じている(3.2-7.1F=1.8-4℃)。日本のメディアがそろって誇大な数字を出したのは、環境省が独自に「記者レク」をやったためと思われる。こういうときは、たいてい役所の代表団に随行して記者団が行き、役所が現地で(日本の記者クラブでも)日本語に訳した資料を配布する。たいていの記者は会見なんか聞かないで(聞いても英語ができないからわからない)記者レクを聞いて原稿を書くから、役所の情報操作はやり放題である。
地球環境データの偽造は、きわめて深刻な問題だ。それは政府の温暖化対策のみならず、京都議定書に従って行われる排出権の割当などに大きな影響を及ぼすからだ。実際には、京都議定書の目標を達成することは不可能だということは、霞ヶ関のコンセンサスである。本当に実行しようとすれば、ガソリン代を2倍にするとか、飲食店の深夜営業を禁止するとか、かつての石油ショックのころのような統制経済にしなければならない。官僚も、本音ではそういう政策は取りたくないが、こういうふうに危機が誇張されると、本当に統制経済がやってくるかもしれない。
地球温暖化は、科学的真理の問題ではなく、政策の費用対効果の問題である。政府が政策資源をもっとも有効な用途に配分する上で、特定の問題だけがヒステリックに誇張されることは、政策のゆがみをもたらす。本質的な問題は棒グラフのデザインではなく、おもしろいニュースに群がる一方で、それを大事なニュースに見せかけようとするメディアのバイアスと、役所にニュースを配給してもらう記者クラブの体質なのである。
追記:IPCC報告についてのロンボルグのコメントが出ている。「今回の報告書は、第3次報告書とほとんど変化がないが、海面上昇の予測が平均38.5cmになったのは注目される。1980年代には数mも上昇するといわれ、1990年にはIPCCは67cmという予測を出した。アル・ゴアは20フィートも海面が上昇した場合の光景を映画にしているが、これはフィクションである。」
報告書は未来のシナリオについて、このままの経済成長を続けた場合や省エネや環境保護が進んだ場合などいくつか用意されたのですが、最悪の場合でこれからの100年で6.4度もの平均気温の上昇が考えられるという数字が示されました。まず基本的なことだが、IPCCの予測は1980-99年の平均気温を基準にして2090-99年の平均気温を予測するもので、「これからの100年」ではない。しかも記者会見で気温上昇の予測が1.8-4度と発表されたことは無視して最悪の数字だけを取り上げ、最大とも書かずに「6.4度上昇」という断定的な見出しをつける。同じように誇大な数字を流し続けているのは、読売新聞だ。「温暖化で日本の砂浜9割が消失、農漁業も影響…環境省」という記事ではこう書く:
国連の報告書は、世界中で海面上昇が発生すると予測しているが、仮に日本沿岸で海面が1メートル上昇した場合、砂浜の面積の90%が消失し、渡り鳥の餌場となっている干潟もなくなる。東京、大阪湾などでは高潮対策に7兆8000億円が必要になるなど、巨額の投資が必要になる。IPCCの予測は「28-43cm」なのに、その発表にあわせて「1メートル上昇した場合」の予測を発表する環境省もおかしいが、それを無批判に報じる読売は「御用新聞」といわれてもしょうがない。
なぜこういう偽造が起こるのだろうか。第1に、政府は地球温暖化が深刻だということを前提にしてさまざまなキャンペーンを始めているので、第4次報告書の予測数値が第3次報告書よりも低いというのは、彼らにとって「不都合な真実」である。環境省にとっては、予算を獲得するという明確な目標があるので、環境省クラブの記者には、めいっぱい派手な記事を書いてもらうように誇大な情報を提供する。
第2に、メディアにとっても地球環境は絵になるテーマで、政治的にも安全なので、テレビ局にとっては魅力的な素材だ。特に海外取材がからむものは、偽造するインセンティヴが大きい。ふつう海外取材は、事前にかなり多額の出張旅費を申請するので、出張に行く段階で採択が決まっている。パリへ行ってから「1.8-4度」という地味なニュースを出したのでは格好がつかないので、嘘であっても「ますます深刻化している」というニュースを出すのだ。
こういう事情は海外のメディアも同じだが、たとえばCNNは"Scientists predict global temperature increases of 3.2-7.1 degrees F by 2100"と正確に報じている(3.2-7.1F=1.8-4℃)。日本のメディアがそろって誇大な数字を出したのは、環境省が独自に「記者レク」をやったためと思われる。こういうときは、たいてい役所の代表団に随行して記者団が行き、役所が現地で(日本の記者クラブでも)日本語に訳した資料を配布する。たいていの記者は会見なんか聞かないで(聞いても英語ができないからわからない)記者レクを聞いて原稿を書くから、役所の情報操作はやり放題である。
地球環境データの偽造は、きわめて深刻な問題だ。それは政府の温暖化対策のみならず、京都議定書に従って行われる排出権の割当などに大きな影響を及ぼすからだ。実際には、京都議定書の目標を達成することは不可能だということは、霞ヶ関のコンセンサスである。本当に実行しようとすれば、ガソリン代を2倍にするとか、飲食店の深夜営業を禁止するとか、かつての石油ショックのころのような統制経済にしなければならない。官僚も、本音ではそういう政策は取りたくないが、こういうふうに危機が誇張されると、本当に統制経済がやってくるかもしれない。
地球温暖化は、科学的真理の問題ではなく、政策の費用対効果の問題である。政府が政策資源をもっとも有効な用途に配分する上で、特定の問題だけがヒステリックに誇張されることは、政策のゆがみをもたらす。本質的な問題は棒グラフのデザインではなく、おもしろいニュースに群がる一方で、それを大事なニュースに見せかけようとするメディアのバイアスと、役所にニュースを配給してもらう記者クラブの体質なのである。
追記:IPCC報告についてのロンボルグのコメントが出ている。「今回の報告書は、第3次報告書とほとんど変化がないが、海面上昇の予測が平均38.5cmになったのは注目される。1980年代には数mも上昇するといわれ、1990年にはIPCCは67cmという予測を出した。アル・ゴアは20フィートも海面が上昇した場合の光景を映画にしているが、これはフィクションである。」
海面上昇が1メートルの場合の被害の予測ですが、海面上昇は温室効果ガス濃度が安定した後も続いていきます。ゆえに、1メートルでの予測がそれほど間違っているとは思えません。きちんとIPCCの報告書を読んでください。
京都議定書を達成するには、困難が伴いますが、費用対効果が非常に優れている対策も多くあります。省エネを進めれば、燃料費が削減されます。京都議定書を達成することも大切ですが、その目標に近づくことも、外交での発言力や、将来の義務増加、温暖化の防止等から非常に重要です。
あなたのような考え方のもとで、温暖化対策を進めていくと、IPCCのSRESシナリオを超える温室効果ガス排出をもたらし、さらなる温暖化排出の可能性も十分ありえることを認識すべきです。