84227edd.jpg佐々木俊尚

文春新書

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本書の前半は、いま話題のWinnyに関する話だ。ほとんどは知られている話だが、1次情報に取材している点で信頼性が高い。特に著者が指摘するように、2ちゃんねるで、金子氏と目される「47」氏が
個人的な意見ですけど、P2P技術が出てきたことで著作権などの
従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。

お上の圧力で規制するというのも一つの手ですが、技術的に可能であれば
誰かがこの壁に穴あけてしまって後ろに戻れなくなるはず。
最終的には崩れるだけで、将来的には今とは別の著作権の概念が
必要になると思います。
などと述べ、著作権で情報を守るビジネスモデルを崩壊させる目的で開発したと受け取れる発言をしている点は重要である。デジタル情報が自由にコピーできる時代に、それを警察力で禁止することによって辛うじて支えられているビジネスモデルは時代錯誤ではないか。かつてWWWがアンダーグラウンドで世界中に広がり、国家がそれを規制しようとしたときにはもう後戻りできなかったように、P2Pも「壁に穴」をあければ、あっという間に普及して後戻りできなくなるだろう――そう考えた彼のねらいは、少なくとも前半は正しかった。

しかし国家権力は、全力を挙げて後戻りさせようとした。それが今回の訴訟である。金子氏が(47氏だとすれば)自説の正当性を信じるなら、「著作権法は表現の自由を侵害する憲法違反の法律だ」と主張すべきだったのではないか(そういう学説もある)。ところが公判では、被告側は「47は金子氏ではない」と否定し、Winnyの公開の目的は「技術的検証」だったと主張した。これは訴訟戦術としてはやむをえなかったのかもしれないが、被告側の主張の説得力を弱めたといわざるをえない。

本書の後半は、インターネット・ガバナンスやiPodや日の丸検索エンジンなど脈絡のない話が出てきて、内容にも新味がない。それを「ネットvsリアルの衝突」というテーマでまとめたのも無理がある。問題はネットとリアルの対立ではなく、著作権のような工業社会の遺制が情報社会に持ち込まれて混乱を引き起こしていることである。それをリアルな世界一般の問題だと思い込むから議論が空回りし、最後は「Web2.0の覇権をグーグルが握るか政府が握るか」というナンセンスな話で終わってしまう。Winnyとオープンソースの話だけで「著作権」をテーマにして、200ページぐらいの本にまとめたほうがよかったと思う。