田原総一朗講談社このアイテムの詳細を見る |
著者はもう70歳を超えるが、その野次馬精神は衰えない。本書も、ライブドアや村上ファンドの「国策捜査」をはじめ、最近の事件について論じたものだ。検察の捜査と、それに付和雷同するメディアの姿勢についての批判には私も同感だが、新聞などの2次情報がほとんどで、中身が薄い。
後半は、メディア業界の話。第4章はデジタル放送問題で、私へのインタビューが15ページにわたって続く。単なる取材だと思っていたのに、オフレコの話まで直接引用されているが、まぁいいか。ただ録音の書き起こしが不正確で、「民放連」が「銀行連」になったりしている。NHKの原田放送総局長にもインタビューしているが、理論武装が足りないので、官僚的な答弁で逃げられている。傑作なのは、民放連の氏家元会長へのインタビューだ:
8年前、私が民放連の会長だったとき、当時の郵政省からいってきたんだけど、「デジタル化する。これは国策である」と。それで僕は、それは筋が違うと反論しました。[・・・]それで一度は郵政省も引いたんです。ところがその後、「国の助成金を、郵政省で何とかとるように考えます」といってきた。そうか。アナアナ変換の国費投入は、98年に決まってたのか。民放連に要求されて仕方なく電波利用料に手をつけたのではなく、最初から流用するつもりだったわけだ。氏家氏は、官僚主義で自縄自縛になっているNHKよりもはるかに冷静に業界の状況を見ているが、インターネットについては何も知らない。「IPマルチキャストの維持費は膨大だ」というから、どんなにかかるのかと思えば「ひと月約2500万円」(単位は不明)。これが「厳密な予測計算をした結果」だというのだから、テレビ業界の情報過疎は重症だ。