林紘一郎 湯川抗 田川義博

NTT出版

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林氏の『ネットワーキングの経済学』(1989)の第3版。第1部が旧著の改訂版、第2部がWeb2.0など最近の現象を扱っている。第1部の主要なテーマが「ネットワークの外部性」による「ひとり勝ち」であるのに対して、第2部は「ロングテール」などのニッチな世界をテーマにしているが、両者は実はベキ分布という同じものの表と裏である。そのへんのネットワーク理論のおさらいも、まとめられている。

動きの激しいこの世界で、初版から17年もたって第3版が出るというのは、きわめてまれなことだ。それだけ、著者の着眼に先見性があったということだろう。通信規制の水平分離の考え方も、日本では林氏が初めて提唱したものだ。しかし、日本ではなぜか放送業界が、IT戦略本部の使ったこの言葉に激しく抵抗し、民放連の会長が首相官邸にどなり込むという騒ぎまで演じた。おかげで総務省は、通信設備を利用した放送を規制する法律を「電気通信役務利用放送法」と名づけ、水平分離の代わりに「水平的市場統合」という間違った言葉を使っている。