きのうはスラッシュドットから大量のアクセスが来て、当ブログはgoo blogのアクセスランキングで12位になった。「情報大航海プロジェクト・コンソーシャム」が発足したというニュースの関連だ。こういう産業政策がなぜ失敗するかは、今までにもブログやPC Japanなどで書いたので、繰り返さない。スラッシュドットでも、肯定的な意見は見事に一つもなかった。

ここで紹介するのは「デジタル・ニューディール」(DND)というプロジェクトである。2001年に産官学の連携で技術情報の交流を行う「産業技術知識交流サイト」として、当初18億円の予算で立ち上げられたが、2ちゃんねるから大量の不正アクセスが行われ、サイトは閉鎖された(この経緯も当時のスラッシュドットにくわしい)。当時のデータはすべて削除され、今は「大学発ベンチャー起業支援」という別のプロジェクトに化けている。

DNDプロジェクトはRIETIに事務局を置き、「元請け」は国際大学GLOCOMだったが、これは富士通のダミーで、開発は富士通の下請けに丸投げだった。しかしプロジェクトが中断されたため、予算の大半が宙に浮き、GLOCOMの所長代理(当時)が経産省の官僚を過剰接待するなどの不正経理問題が起こった。所長代理は解任され、のちに辞職したが、余った数億円の国家予算はどこへ行ったのか、いまだに不明である。国際大学の赤字補填に使われたのではないかともいわれるが、「企業の社会的責任」がお得意の小林陽太郎理事長には説明責任があるのではないか。

こういうプロジェクトの問題は、失敗することではない。ITの世界で、プロジェクトが失敗するのは当たり前である。問題は、このように失敗を隠蔽してしまうため、その教訓が生かされないで、同じ失敗が繰り返されることだ。日の丸検索エンジンとよく似ている「シグマ計画」も、多くのエンジニアのトラウマになったが、その事後評価はおろか、痕跡さえウェブには残っていない。

私は、政府が科学技術に資金援助することがすべて悪だとは思わない。他ならぬインターネットも、国防総省とNSFの予算でできたものだ。しかしNSFでは毎年プロジェクト評価を行い、不合格のプロジェクトには援助が打ち切られる。先日もいった政府調達手続きとともに、官民プロジェクトの事後評価も徹底的に見直すべきである。