インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門

白田秀彰

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きのう著者の「出版記念パーティ」に行ってきた。政治家でも財界人でもない人の出版記念パーティというのは初めてだが、意外に知っている人が多く、ネット業界も「スモールワールド・ネットワーク」であることを実感した(*)

扉を開くと、いきなり明治時代のような「著者近影」が出てきて驚くが、これは内容とは関係ない。テーマは、リアルな世界の法律(特に著作権)のサイバースペースにおける有効性の問題だ。日本のような大陸法の国では、法律(statute)の条文がすべてであり、それを解釈して具体的な事件についての判断が決まるが、英米法では常識としての法(law)が優先され、法律の条文はその判断のガイドラインにすぎない。

法的強制力のないサイバースペースでは、慣習や「名」によってコントロールするしかないが、日本では匿名で無責任なメッセージを書き込む慣習が成立してしまった。2ちゃんねるのような巨大な匿名掲示板があるのは、欧米ばかりでなく、隣の韓国と比較しても特異な現象だ。著者は、こうした日本の「名無しさん」文化を批判するが・・・

本書の内容は、HotWiredで連載されたものに「あまり手を加えないで本にした」とのことで、おしゃべり口調で読みやすいが、話にまとまりがない。著者の論文なども含めて、書き直したほうがよかったのではないか。

ところでHotWired Japanは、今年3月で更新が止まってしまった。運営していたNTTレゾナントはNTTコミュニケーションズの子会社になり、アメリカのHotWired本社は雑誌Wiredの版元に買収され、いずれも前途は多難だ。編集長の江坂さんもパーティに来ていたが、日本版の再建はむずかしいようだ。サイトが消滅する前に、私のコラムもアーカイブしておいたほうがいいかもしれない。

(*)ちなみに、BBCによれば、この理論のもとになったミルグラムの「任意の相手に6段階で手紙が届く」という実験のノートが最近、発見され、実際には手紙の95%はどこにも届いていなかったという。