IPマルチキャストについては、「有線放送」扱いとすることで文化庁も動き出したようだ。その最大の理由は、2011年にアナログ放送を停止するというデッドラインがもう水平線上に見えてきたからである。こういう点では、地上デジタル放送も役に立つ。
しかし実は、もっと根本的な問題が残っている。そもそも通信と放送で著作権処理が異なるのはなぜか、という問題である。この原因は、1997年の著作権法改正で文部省(当時)が「自動公衆送信」という概念を創設し、インターネットをその対象としたことにある。当時の著作権課長だった岡本薫氏(現・政策研究大学院大学教授)は、「インターネットに対応する世界に誇るべき制度」だと自画自賛しているが、WIPOではこの概念を承認したものの、日本以外でこの概念を法制化した国はない。
おかげで日本では、ファイルを送信しなくても、ウェブサイトに置くだけで「送信可能化」する行為として処罰できるようになった。Winny事件を含めて、日本のインターネットをめぐる刑事事件のほとんどの根拠は、この送信可能化権侵害である。合法的に音楽ファイルをインターネットで利用するには、著作者だけではなく、実演者やレコード会社などの著作隣接権者の許諾が必要で、現実には不可能に近い。このため、米国では何万局もあるインターネット・ラジオも、日本では営業が成り立たない。
これに対して、放送(CATVを含む)の場合には、隣接権者の許諾は必要なく、JASRACと包括契約を結ぶだけでよい。なぜこのように放送だけが特別扱いされるのかという理由は明らかではないが、放送局には一定の公共性があるとか、事業者の数が限られていて利用状態が把握しやすいといった理由があるものと考えられる。
しかし著作権の及ぶ範囲と、通信か放送かというのは、本来は別問題であり、メディアの違いによって権利処理が違うのはおかしい。こういう規定はベルヌ条約にもあるが、もともとは通信を1対1の電話のようなものと想定して区別したのであり、インターネットのような両者を包括するメディアが普及した今日では、通信と放送で著作権の扱いが違うということが時代錯誤である。
・・・というような話をすると国際的な問題になって、是正はほとんど不可能になってしまうが、現実的には、小倉秀夫さんの提案するように、音楽についてはメディアを問わず強制許諾(compulsory license)とする著作権法の改正を行えば十分だろう。同様の提案は、EFFもしている。
しかし実は、もっと根本的な問題が残っている。そもそも通信と放送で著作権処理が異なるのはなぜか、という問題である。この原因は、1997年の著作権法改正で文部省(当時)が「自動公衆送信」という概念を創設し、インターネットをその対象としたことにある。当時の著作権課長だった岡本薫氏(現・政策研究大学院大学教授)は、「インターネットに対応する世界に誇るべき制度」だと自画自賛しているが、WIPOではこの概念を承認したものの、日本以外でこの概念を法制化した国はない。
おかげで日本では、ファイルを送信しなくても、ウェブサイトに置くだけで「送信可能化」する行為として処罰できるようになった。Winny事件を含めて、日本のインターネットをめぐる刑事事件のほとんどの根拠は、この送信可能化権侵害である。合法的に音楽ファイルをインターネットで利用するには、著作者だけではなく、実演者やレコード会社などの著作隣接権者の許諾が必要で、現実には不可能に近い。このため、米国では何万局もあるインターネット・ラジオも、日本では営業が成り立たない。
これに対して、放送(CATVを含む)の場合には、隣接権者の許諾は必要なく、JASRACと包括契約を結ぶだけでよい。なぜこのように放送だけが特別扱いされるのかという理由は明らかではないが、放送局には一定の公共性があるとか、事業者の数が限られていて利用状態が把握しやすいといった理由があるものと考えられる。
しかし著作権の及ぶ範囲と、通信か放送かというのは、本来は別問題であり、メディアの違いによって権利処理が違うのはおかしい。こういう規定はベルヌ条約にもあるが、もともとは通信を1対1の電話のようなものと想定して区別したのであり、インターネットのような両者を包括するメディアが普及した今日では、通信と放送で著作権の扱いが違うということが時代錯誤である。
・・・というような話をすると国際的な問題になって、是正はほとんど不可能になってしまうが、現実的には、小倉秀夫さんの提案するように、音楽についてはメディアを問わず強制許諾(compulsory license)とする著作権法の改正を行えば十分だろう。同様の提案は、EFFもしている。