永田議員が記者会見し、メールは偽物だと事実上みとめた。その根拠として鳩山幹事長は、「Eudoraのバージョンが堀江氏の使っているものと違う」「署名が『@堀江』となっており、彼がふだん使っている署名と違う」などの点をあげた。これらの疑問点は、永田氏の質問直後に、すでにブログなどで指摘されたことである。結果的には、ブログの情報が民主党を追い込んだという点では、CBSのアンカーマン、ダン・ラザーを辞任に追い込んだ「キリアン文書」事件と似ている。

キリアン文書の場合には、軍の様式に沿って書かれていたが、フォントが30年前のタイプライターではなくMS-Wordのものであることがブログで指摘され、それがCBSの謝罪につながった。しかし今回のメールは、Fromが消され、文体も署名も本人のものと違うなど、偽物としてもB級だ(偽作者は堀江氏のメールを見たこともないのだろう)。こんなものに引っかかった民主党がお粗末だったという以外にないが、問題は、だれがどういう目的でこんな偽物を持ち込んだのかということである。

ブログで実名のあがっている元週刊ポスト記者のN氏は、「事実無根だ」と抗議する内容証明を送ったりしているが、手口は彼が過去にやった捏造記事と似ている。今回も、1月末に毎日新聞に問題のメールを持ち込み、その後も週刊誌に持ち込んで、いずれも断られたことがわかっている。ただ、永田氏と現金のやり取りはなかったようなので、何のためにこんなすぐばれる偽物を持ち込んだのかが不可解だ。

キリアン文書の場合には、大統領選挙の最中で、ブッシュ候補を攻撃する材料だったという目的が明確であり、その文書を書いた(ことになっている)キリアン中佐は故人だったので、偽造する合理的な理由があったが、今回の場合は武部氏の次男の実名を出しているのだから、確認は容易である。民主党を陥れようとする謀略と考えられないこともないが、最初はメディアに売り込んだところをみると、それほどの計画性があったとも思えない。

問題のN氏は「笹川良一の孫」を自称するなど虚言癖があり、過去にも2件、名誉毀損事件を起こし、業界からは追放された人物だというから、一種の病気なのかもしれない。だとすれば、そんな人物の背景も調べないで「親しくしていた」永田氏と、それをチェックもしないで国会に出した執行部の情報管理能力が問われよう。まあ堀江氏を「わが息子」と持ち上げた人物がそれを批判するのも滑稽だが。