通信・放送懇談会の最大の焦点はNHKだが、第2回の会合までに「公共放送は必要だ」という結論が出てしまったようだ。しかし、これまでの議論の経緯を聞いても、「公共性とは何か」という本質的な議論がされたようには思えない。そこを飛ばして、「NHKを何チャンネル減らすか」みたいな議論に入ると、「文字放送はやめるから受信料制度は残してください」といった業界と役所の取引になってしまう。
しかし、郵政民営化のときも問題になったように「公共的な仕事は官でなければできない」というのは官の思い上がりである。通信にしても電力にしても、公益事業的なサービスを民間企業が提供している分野はいくらでもある。「電力は公共のインフラだから特殊法人にして一律の電気料金にすべきだ」といった議論は聞いたことがない。これまでNHKが公共性の具体的な内容として主張してきたのは、
・災害報道
・ユニバーサル・サービス
・視聴率に左右されない高品質の番組
といったところだが、このいずれも受信料制度でなければできないことではない。災害報道は民放でも見られるし、大地震などになれば、民放でも定時番組の枠をはずして放送している。100%のユニバーサル・サービスが必要なら、衛星放送を使えばよい。高品質の番組は、有料放送でもできる。欧米のCS放送はみんな有料放送だが、NHKよりはるかに質の高い番組でも採算に乗っている。
最近では橋本会長は、有料放送化によって「視聴者を限ることは、情報弱者を作ることにつながる」といっているが、これは論理的に矛盾している。この「情報弱者」が有料放送の料金を払うことのできない人だとすれば、今も受信料は払っていないだろうから、これは違法行為を弁護していることになる。逆に、その人が今、受信料を払っているとすれば、有料放送になっても同じ料金なら払えるはずだ。
不払いについては、橋本氏は「官の力での取り立てはなじまない」からBBCのように罰則を設けず、民事訴訟でやるのだという。彼は、民事訴訟は官ではないと思っているのだろうか。裁判の結果を執行して取り立てる(あるいは差し押さえる)のは官の力である。
受信料制度を弁護するのに、こういう無内容な建て前論を持ち出すから話がややこしくなるのだ。NTTも東電も従量料金で公共的なサービスをしているのに、NHKだけが一律の受信料になっているのは、テレビの電波を電話や電力のように止めることができなかった50年前の技術的制約によってできた制度にすぎない。デジタル化によって従量制課金ができるようになった現在でもNHKが有料放送化を拒否するのは、契約者が激減することを恐れているためだ。
しかし、それは杞憂である。NHKでも、私が勤務していたころからいろいろなシミュレーションをしていたが、少なくとも報道に限れば、CNNのような有料の24時間ニュースとして十分採算に乗るという結果が出ている。娯楽やスポーツなどは、チャンネルごとに分割して民間に売却すればよい。問題は教育番組だが、これは100%パッケージの番組なので、リアルタイムで放送する必要はない。NHKがサーバー型放送で考えているように、オンデマンドでインターネット配信すればよいのである。NHKも、サーバー型では有料で学校向けに流すらしい。教育番組には「公共性」がないのだろうか。
しかし、郵政民営化のときも問題になったように「公共的な仕事は官でなければできない」というのは官の思い上がりである。通信にしても電力にしても、公益事業的なサービスを民間企業が提供している分野はいくらでもある。「電力は公共のインフラだから特殊法人にして一律の電気料金にすべきだ」といった議論は聞いたことがない。これまでNHKが公共性の具体的な内容として主張してきたのは、
・災害報道
・ユニバーサル・サービス
・視聴率に左右されない高品質の番組
といったところだが、このいずれも受信料制度でなければできないことではない。災害報道は民放でも見られるし、大地震などになれば、民放でも定時番組の枠をはずして放送している。100%のユニバーサル・サービスが必要なら、衛星放送を使えばよい。高品質の番組は、有料放送でもできる。欧米のCS放送はみんな有料放送だが、NHKよりはるかに質の高い番組でも採算に乗っている。
最近では橋本会長は、有料放送化によって「視聴者を限ることは、情報弱者を作ることにつながる」といっているが、これは論理的に矛盾している。この「情報弱者」が有料放送の料金を払うことのできない人だとすれば、今も受信料は払っていないだろうから、これは違法行為を弁護していることになる。逆に、その人が今、受信料を払っているとすれば、有料放送になっても同じ料金なら払えるはずだ。
不払いについては、橋本氏は「官の力での取り立てはなじまない」からBBCのように罰則を設けず、民事訴訟でやるのだという。彼は、民事訴訟は官ではないと思っているのだろうか。裁判の結果を執行して取り立てる(あるいは差し押さえる)のは官の力である。
受信料制度を弁護するのに、こういう無内容な建て前論を持ち出すから話がややこしくなるのだ。NTTも東電も従量料金で公共的なサービスをしているのに、NHKだけが一律の受信料になっているのは、テレビの電波を電話や電力のように止めることができなかった50年前の技術的制約によってできた制度にすぎない。デジタル化によって従量制課金ができるようになった現在でもNHKが有料放送化を拒否するのは、契約者が激減することを恐れているためだ。
しかし、それは杞憂である。NHKでも、私が勤務していたころからいろいろなシミュレーションをしていたが、少なくとも報道に限れば、CNNのような有料の24時間ニュースとして十分採算に乗るという結果が出ている。娯楽やスポーツなどは、チャンネルごとに分割して民間に売却すればよい。問題は教育番組だが、これは100%パッケージの番組なので、リアルタイムで放送する必要はない。NHKがサーバー型放送で考えているように、オンデマンドでインターネット配信すればよいのである。NHKも、サーバー型では有料で学校向けに流すらしい。教育番組には「公共性」がないのだろうか。