ライブドア事件の捜査体制が容疑に比べて大げさすぎるという意見は、専門家のブログにも少なくない。証取法158条違反は、懲役5年以下、罰金500万円以下で、過去の判例でもほとんど執行猶予がついているという。エンロンやワールドコムのように経営が破綻したわけでもなく、「偽計」の規模もはるかに小さい。

「風説の流布」というのは、嘘の記者発表で株価を吊り上げたような場合に適用されるもので、今回のように投資事業組合を支配しているという事実を開示しなかったという「不作為」を風説とするのは過去に例がない。同じ証取法でも、159条には「相場操縦」という具体的な規定があるのに、今回それを使わなかったのは、取引の手続きを違法とするのがむずかしいと検察が判断したためだろう。いわば158条は令状をとるための名目で、「ガサ入れさえやれば証拠は出てくる」と踏んで見込み捜査をやった可能性もある。

新聞にはしきりに「本体でも粉飾か」といった観測記事が出るが、これは検察のねらいを夜回りで教えてもらっただけのことで、証拠があがっているかどうかはわからない。少なくとも監査法人は財務諸表に適正意見を出したのだから、彼らが見落としたか、経営陣にだまされたか、それともグルだったのか、のどれかを立証しなければならない。

したがって、エンロン事件でアーサー・アンダーセンが消滅したように、監査法人の責任も追及されるだろう。ライブドアの監査を行っていた港陽監査法人も、家宅捜索を受けたもようだ。これは会計士12人という中小の監査法人で、その代表社員はライブドアの宮内元CFOと共同で「ゼネラル・コンサルティング・ファーム」(通称ゼネコン)という会社を設立した(この会社も家宅捜索を受けたようだ)。

ライブドア・グループの財務は、すべてゼネコンで会計処理され、それを港陽がチェックしていたというから、一連の会計操作を港陽が見落としたということは考えにくく、黙認していた可能性が強い。これはエンロンのときも問題になったように、コンサルティングと監査を同一人物がやるという「利益相反」の疑いがある。

こういう「なれあい」は日本の会社の監査のほとんどに見られることで、この意味ではライブドアもきわめて日本的な会社だったわけだ。今回の事件を「市場原理主義」の結果だとか論評する向きも多いが、粉飾決算は日本企業のお家芸だ。今回はそれが公になっただけ一歩前進である。