今週の週刊東洋経済で、ライブドア事件を特集している。それによれば、ライブドアの「錬金術」は、今回の逮捕容疑だけではなく、MSCBなどの金融技術から、株価操縦やインサイダー取引に近いものまで、実に多様な手口でやっていることがわかる。しかし、それが違法かといえば、ほとんど前例がないので、よくわからない。
このように「法の抜け穴をつく」というのは、必ずしも悪いことではない。デリヴァティヴなどの金融商品でもっとも利益が上がるのは、規制が多く整合性のない市場である。たとえば債券の利子には課税されるがゼロクーポン債には課税されないという税制の穴があるとすると、ゼロクーポン債などを組み合わせて利付債と同じポートフォリオを複製して税金を逃れる、というように「制度的レント」の鞘取りをするのが投資銀行の大きなビジネスだ。
もちろん行政のほうは、そういう穴をふさごうとするから、やがて利鞘は縮小し、投資銀行は「焼畑農業」のように次の未発達な市場をねらう・・・といういたちごっこによって制度のひずみが是正され、市場が成熟してゆくのである。この意味で「行政の対応が後追いだ」というのは、どこの国でも制度を変更した直後には起こることであり、日本の当局だけがバカなわけではない。
「規制改革がライブドア事件を生んだ」というに至っては論外である。こういう事件を絶無にしようと思えば、昔の護送船団行政のように銀行・証券への参入を禁止し、役所の許可した金融商品しか扱えないという時代に戻すしかないが、それは不可能である。日本はもう金融自由化のルビコン川を渡ったのだから、「原則自由」にして、問題が起きたら迅速に法律やその運用を手直しする、という事後チェックで対応するしかない。
ただ、時には当局の追いつくスピードをはるかに超えて巨額の利益を上げるグレーな業者が出てくる。その意味で今回の事件は、1980年代の米国に似ている。当時、投資銀行ドレクセル・バーナム・ランベールのトレーダー、マイケル・ミルケンが開発した「ジャンク債」によって、ドレクセルはピーク時で年間40億ドル以上の利益を上げ、ミルケンの年収は5億ドルを超えた。これを司法当局がインサイダー取引として摘発し、ミルケンは逮捕され、ドレクセルは倒産した。
しかしドレクセルの事件とライブドア事件を比べてみると、金額のスケールが2桁ぐらい違うばかりでなく、ライブドアのやり方がいかにもせこいのが情けない。彼らはジャンク債のような重要な金融技術を生み出したわけでもなければ、それを使ったLBOのような新しい企業買収の手法を開発したわけでもない。ダミー会社で株を転がして帳簿をごまかす程度の手法しかないようでは、どのみち挫折するのは時間の問題だっただろう。ライブドアの功績は、むしろ日本の資本市場がいかに未熟で、東証のシステムがいかにお粗末かという実態を明らかにしたことだ。
このように「法の抜け穴をつく」というのは、必ずしも悪いことではない。デリヴァティヴなどの金融商品でもっとも利益が上がるのは、規制が多く整合性のない市場である。たとえば債券の利子には課税されるがゼロクーポン債には課税されないという税制の穴があるとすると、ゼロクーポン債などを組み合わせて利付債と同じポートフォリオを複製して税金を逃れる、というように「制度的レント」の鞘取りをするのが投資銀行の大きなビジネスだ。
もちろん行政のほうは、そういう穴をふさごうとするから、やがて利鞘は縮小し、投資銀行は「焼畑農業」のように次の未発達な市場をねらう・・・といういたちごっこによって制度のひずみが是正され、市場が成熟してゆくのである。この意味で「行政の対応が後追いだ」というのは、どこの国でも制度を変更した直後には起こることであり、日本の当局だけがバカなわけではない。
「規制改革がライブドア事件を生んだ」というに至っては論外である。こういう事件を絶無にしようと思えば、昔の護送船団行政のように銀行・証券への参入を禁止し、役所の許可した金融商品しか扱えないという時代に戻すしかないが、それは不可能である。日本はもう金融自由化のルビコン川を渡ったのだから、「原則自由」にして、問題が起きたら迅速に法律やその運用を手直しする、という事後チェックで対応するしかない。
ただ、時には当局の追いつくスピードをはるかに超えて巨額の利益を上げるグレーな業者が出てくる。その意味で今回の事件は、1980年代の米国に似ている。当時、投資銀行ドレクセル・バーナム・ランベールのトレーダー、マイケル・ミルケンが開発した「ジャンク債」によって、ドレクセルはピーク時で年間40億ドル以上の利益を上げ、ミルケンの年収は5億ドルを超えた。これを司法当局がインサイダー取引として摘発し、ミルケンは逮捕され、ドレクセルは倒産した。
しかしドレクセルの事件とライブドア事件を比べてみると、金額のスケールが2桁ぐらい違うばかりでなく、ライブドアのやり方がいかにもせこいのが情けない。彼らはジャンク債のような重要な金融技術を生み出したわけでもなければ、それを使ったLBOのような新しい企業買収の手法を開発したわけでもない。ダミー会社で株を転がして帳簿をごまかす程度の手法しかないようでは、どのみち挫折するのは時間の問題だっただろう。ライブドアの功績は、むしろ日本の資本市場がいかに未熟で、東証のシステムがいかにお粗末かという実態を明らかにしたことだ。