大東亜戦争肯定論(アーカイブ記事)

大東亜戦争肯定論 (中公文庫)
毎年この季節になると、参政党のような無知なネトウヨが「大東亜戦争は正しかった」という類の話を蒸し返すが、本書(初版1964年)はそのネタ本である。日中戦争は「アジア解放」の戦争だったとか、日米開戦は「ルーズベルトの罠」だったとか、パル判事の日本無罪論などは、みんな本書がオリジナルだ。

しかし本書がそのエピゴーネンと違うのは、日本とアジアについての一貫した歴史観にもとづいていることだ。著者は1850年以降の日本の歴史を東亜百年戦争という観点から整理し、グローバル資本主義の中で日本が生き残っていく戦いだったと位置づけている。

19世紀以降の帝国主義戦争の中で、アジアで最後に残された小国、日本が自衛するには「富国強兵」で軍事大国になることが至上命令だった。結果的にそれが失敗だったことも認めているが、戦争は「勝てば官軍」。正義の戦争などというものはないという。

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無知な参政党が無知な若者を洗脳する「愚民マーケティング」

石破首相の「戦後80年談話」は党内の反発を受けて封じ込められたようだが、今回の選挙で躍進した参政党の歴史観もちょっと話題になっている。
@jvft4o2e 【参政党】先人達が命懸けで守ってくれたもの #参政党 #神谷宗幣 ♬ original sound - Oliver Collins

中身は戦中派老人によくある「大東亜共栄圏」賛美だが、ネット上では若者の「そうだったのか!」という反応が多い。今の世代は学校でほとんど近代史を学ばないので、白紙状態である。マスコミの左翼史観に疑問をもつと、戦中派レトリックに洗脳されやすいのだろう。

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国債バブルは信用金庫から崩壊するか

長期金利が上がって国債の時価が下落し、全国の信用金庫の8割以上が有価証券の含み損を抱える状況に陥っている。そんな中で信金中央金庫は栃木信用金庫への資本支援を決定した。

栃木信金は保有国債の簿価327億円に対し、金利上昇で3月末時点の時価は277億円に下落し、50億円の含み損が生じた。地方債や株式なども含めた有価証券全体では68億円の含み損を抱え、約50億円の自己資本を上回ったが、国債は長期保有が目的なので減損処理する義務はない。

信用金庫法では、有価証券の含み損が自己資本を上回ると金融庁による早期是正措置の対象となる。最悪の場合は業務停止命令に至る可能性があるが、金融庁は停止命令を見送り、信金中金の50億円規模の出資を通じて自己資本比率を最低基準(4%)の約2倍へと引き上げる方針だ。


これ自体は小さな事件だが、1990年代にもほとんどの金融機関が保有不動産に含み損を抱えていた。それが表面化したきっかけは、1994年の2信組事件だった。その経験からいえるのは、事件が金融危機になる原因は金額ではないということである。

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政府と日銀は「インフレ目標2%」のアコードを変更すべきだ

日銀の政策金利は予想どおり据え置きだったが、最近になくきびしい批判が寄せられた。食品の物価が大きく上がり、石破政権が「物価高対策」に失敗して少数与党に追い込まれ、野党はさらにインフレを促進する消費減税を要求しているのに、なぜ日銀は動かないのか。



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最低保障年金の制度設計

国会では「現金給付か消費減税か」というくだらないバラマキ論争が続いているが、日本の財政には消費減税という選択はない。140兆円の社会保障給付がこれから激増する時代に、社会保険料の負担増を防ぐ財源は消費税しかないからだ。

特に最低保障年金を実現するには、1階部分(基礎年金)を消費税で置き換える必要がある。これは民主党政権が提案し、社会保障国民会議で議論されたが、2008年のシミュレーションを見ると、1階部分の設計にかなり違いがあった。

一番シンプルなのは、河野太郎氏などの「年金制度を抜本的に変える会」の案(ケースA)である。これは保険料支払いとは無関係に一律に給付するものだ。

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これに対して未納期間に応じて給付を減額する経団連や連合の案(ケースB)、過去に払った保険料を加算して給付する案(ケースC)もあったが、民主党政権では結論が出なかった。このため安倍政権が、年金改革をもみ消してしまった。

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「40日抗争」は再来するか(アーカイブ記事)

自民党戦国史 下 (ちくま文庫 い 67-2)
石破首相が選挙で惨敗して開き直るのに対して反対派が署名運動を始め、両院議員総会が開かれることが決まった。多くの人が連想するのが、1979年の「40日抗争」である。

著者は当時の大平首相のアドバイザーで、政治家の駆け引きを(カネの話を除いて)赤裸々に描いている。当時は主流派(大平・田中)と非主流派(福田・三木・中曽根)の対立があり、前年の総裁選で大平が田中の支持を得て福田を破った経緯をめぐって怨恨が残っていた。

当時は第2次石油危機の最中で、財政が逼迫し、新たな財源の必要に迫られていた。大平は財政を再建するために一般消費税を創設しようと考えたが、党内では賛否両論があった。このため大平は解散・総選挙で国民の支持を得て増税を実行しようと考え、9月17日に解散した。

ところが選挙が始まってからも党内では反対論が続出し、地元で「私は増税に反対だ」と演説する議員まで出てきた。このため大平は方針を変更し、9月末に「一般消費税を断念する」と発表したが、時すでに遅く、10月7日の投票では248議席と自民党は過半数を割った。これに追加公認を加えても258議席で、過半数をかろうじて上回った2議席減となり、非主流派からは大平の退陣を求める声が上がった。

しかし田中派の支持を得た大平は譲歩せず、11月6日に開かれた臨時国会では、首班指名に自民党から大平と福田の2人が立候補する前代未聞の事態となった。このとき野党が福田に投票すれば福田が選ばれる可能性もあったが、結果は大平138票、福田121票だった。これが40日抗争だが、派閥抗争はこれで終わらなかった。

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啓蒙の終わった時代に普遍的な倫理はあるのか

美徳なき時代【新装版】今年5月に死去したアラスデア・マッキンタイアは、最後のモラリストともいうべき哲学者だった。かつて倫理は宗教の同義語だったが、ヨーロッパ世界が神を失って以来、人々はキリスト教に代わる倫理を求めていた。

マッキンタイアは若いころマルクス主義者として、キリスト教に代わる救済を社会主義に求めた。のちにカトリックに改宗したが、非倫理的な資本主義に対する批判を最後まで持ち続けた。死の直前に書いたエッセイでは、トランプ大統領の出現を憂慮し、彼は「啓蒙の生んだモンスター」だと語った。

啓蒙は個人の快楽を最大化するよう社会を設計する。そういう倫理的アナーキズムの体系化が経済学である。ケインズのようなもっとも洗練された経済学者でさえ、倫理を「選好」の集計としてしか語れなかった。社会を好き嫌いで決める功利主義は、徹底するとトランプのポピュリズムになってしまう。

マッキンタイアは啓蒙を否定し、それを超える普遍的な倫理を考えた。彼はあるときはアリストテレスに、あるときはトマス・アクィナスに、あるときはイルカに答を求めたが、最終的には人類に普遍的な倫理は存在しないという諦念にたどりついたようにみえる。

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同床異夢の日米関税交渉は破談にして新政権が仕切り直せ

アメリカの関税率を8月1日から15%にするという日米交渉は、合意文書もない口約束で、日本側とアメリカ側の説明が大きく食い違っている。関税をかけるのはアメリカなので、税率を決めるのはアメリカ側の解釈である。ラトニック商務長官の説明はこうだ。


FOXニュース



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参政党は相互扶助ネットワークで情弱を集める「創価学会型カルト」

完全版 創価学会(新潮新書)
参政党について多くの論評が出ているが、あれを政党と考えると本質がわからない。彼らの党是ともいうべき「新日本憲法」でさえ、基本的人権が書いてないことを突っ込まれると神谷代表は「書き足せばいい」という。彼らにとって政策なんかどうでもいいのだ。

これは創価学会(公明党)と似ている。創価学会は高度成長期に地方から出てきて都市に流入した未組織労働者や自営業など、島田裕巳氏のいう都市下層の人々がつくった「巨大な村」である。彼らにとって重要なものは本尊でも教義でもなく、都市の中で孤独をいやす人間関係なのだ。

牧口常三郎が創価学会を創立したのは1930年だが、急速に成長したのは戦後、戸田城聖が会長になってからだ。戦前は農村にしばりつけられていた農家の次三男が、高度成長期に都市に出てきて工場労働者になった。彼らの学歴は中卒や高卒が多く、大企業には就職できなかった。

創価学会はこういう都市下層を「折伏」と呼ばれる布教活動で勧誘した。教義を教えるだけではなく、彼らの生活の悩みを聞いて相談に乗り、時には金を貸す相互扶助の共同体を都市の中につくったのだ。参政党の場合は、無農薬のオーガニック食品を集会で売るマルチ商法的な手法でネットワークを拡大した。

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自民党は石破総裁を解任して15%の関税協定を破棄すべきだ

アメリカの対日関税が15%と決まったことをトランプ大統領は勝ち誇っている。


われわれは日本との大規模な合意を締結した。おそらく過去最大の合意だろう。日本はわたしの指示のもと、アメリカに5500億ドルを投資し、その利益の90%をアメリカが受け取るだろう。この合意は数十万人の雇用を創出するだろう。これはかつてない規模のものだ。

おそらく最も重要な点は、日本が自動車やトラック、コメやほかの農産物を含む貿易で国を開放することだろう。日本はアメリカに対して15%の相互関税を支払う。これはアメリカにとって特に日本との良好な関係を今後も維持する点で非常に喜ばしいことだ。

これは経済学者からみると笑止千万である。日本が「アメリカに5500億ドルを投資」するとその利益をすべて日本企業のものであり、「利益の90%をアメリカが得る」ことはできない。これによって日本に対する経常収支の赤字は増える

いわゆる日本の合意(独裁?)について。トランプ氏は多くの戦いに勝つことができるが、会計の同一性に対する戦いには勝てない。貿易協定は、それがどのようなものであれ、主張されているようにアメリカの経常収支赤字の削減と純資本流入の増加は同時に実現できない。理由は、経常収支赤字=純資本流入だからだ。

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