最近、TRONが再評価されているという。「日本発の国際標準」となるはずだったのに、通商交渉で米国がスーパー301条の制裁対象の候補にしてつぶしたというのだ。これは坂村健氏がいまだに繰り返している話だが、嘘である。当時、彼と仕事で1年もつきあわされた被害者として断言するが、TRONがものになる可能性なんて万に一つもなかった。
本書は通産省の産業政策の失敗を分析した研究だが、その最大の失敗例が第5世代コンピュータとTRONである。それは坂村氏が「日の丸OS」として通産省に売り込み、だまされた官僚がメーカーと文部省を引っ張り込んで学校用コンピュータの標準にしようとしたが、MS-DOSと互換性のない国内規格をまじめに開発する企業はなく、物を実際に作っていたのはパソコンで出遅れた松下だけだった。
今でも工業用のITRONは使われているので、組み込みシステムとして地味にやればよかったのに、風呂敷を広げすぎて自滅した。セールストークは派手だが、設計は凡庸で、パソコン用のBTRONの中身はMacOSの物まねにすぎない。CPU(Gマイクロ)も、互換性がないのだからせめてRISCにして処理速度を上げればよかったのに、平凡なCISCで結局、商品にはならなかった。
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本書は通産省の産業政策の失敗を分析した研究だが、その最大の失敗例が第5世代コンピュータとTRONである。それは坂村氏が「日の丸OS」として通産省に売り込み、だまされた官僚がメーカーと文部省を引っ張り込んで学校用コンピュータの標準にしようとしたが、MS-DOSと互換性のない国内規格をまじめに開発する企業はなく、物を実際に作っていたのはパソコンで出遅れた松下だけだった。
今でも工業用のITRONは使われているので、組み込みシステムとして地味にやればよかったのに、風呂敷を広げすぎて自滅した。セールストークは派手だが、設計は凡庸で、パソコン用のBTRONの中身はMacOSの物まねにすぎない。CPU(Gマイクロ)も、互換性がないのだからせめてRISCにして処理速度を上げればよかったのに、平凡なCISCで結局、商品にはならなかった。
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