高市首相の国会答弁が炎上した「存立危機事態」とは何か?

高市発言の炎上した発火点は朝日新聞の誤報

高市首相の「存立危機事態」は、中国側の強硬な態度で混乱が増しているが、いつものように左翼は「謝罪しろ」とか「辞任しろ」、右翼は「高市様は全面的に正しい」という不毛な対立が続いている。

しかしヒートアップする前に、国会の議事録を読んでみよう。
岡田:例えば台湾とフィリピンの間のバシー海峡、これを封鎖されたという場合に、それは迂回すれば、何日間か余分にかかるかもしれませんが、別に日本に対してエネルギーや食料が途絶えるということは基本的にありませんよね。どういう場合に存立危機事態になるのかって言ういうことをお聞きしたいのです。いかがですか?

高市:これはやはり他国に…台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのとき[昨年の自民党総裁選]は確か、台湾有事に関する議論であったと思います。

その台湾に対してですね、武力攻撃が発生する、まあ、海上封鎖っていうのも、これ、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて、まあ、対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。

例えば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。まあ、こういった事態も想定されることでございますので、まあ、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかっていうことの情報を総合的に判断しなければならないと思っております。

太字で書いた部分が問題になったわけだが、「海上封鎖」の主語は人民解放軍であり、自衛隊が台湾海峡に出動することは想定していない。この発言は米軍の支援として出動するという意味で、従来の政府見解を踏み出していない。

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マンデル=フレミング・モデルの落とし穴(アーカイブ記事)

インフレで急速な円安が進む中で、高市政権は20兆円を超える補正予算を組もうとしている。これは2022年の「トラス・ショック」のような悲劇をもたらすおそれが強いが、リフレ派エコノミストが「財政赤字を増やせばマンデル=フレミング・モデルで円高になる」と主張して物笑いの種になっている。

日銀の黒田前総裁や浜田宏一氏も「マンデル=フレミング理論によれば、量的緩和で景気がよくなる」と言っていた。これは固定為替相場の時代にできた「どマクロ」理論で、簡単にいうと開放経済でIS-LMモデルを考えるものだ。

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国際資本移動が完全に自由で、実質金利が世界全体でiwに決まっているとすると、変動相場制では、財政支出を増やしてIS曲線を右に動かしてIS1にしても、LM曲線との交点で決まる自国の金利iがiWより高くなるので資本流入が起こり、為替レートが上がって輸出が減る。この変化は実質金利が均衡水準iwに戻るまで続くのでIS曲線は元に戻り、財政政策は無効とされた。

片岡氏はこれを「財政政策で円高が起こる」と誤解しているが、それは実質金利が世界全体で同一という前提の話である。これによると日米金利差が縮小するとドルが下がるはずだが、現実には次の図のように日米金利差とドル円は逆相関になっている。マンデル=フレミングは成り立たないのだ。

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片岡剛士氏の知らない「ソブリンリスク」



高市政権の補正予算は17兆円といわれているが、片山財務相は「規模的には(17兆円より)大きくなる」と語り、「25兆円にしろ」という議連も出てきた。政府の成長戦略会議に入った片岡剛士氏は「20兆円の補正を組め」とロイターのインタビューで語った。


円安の最中に財政赤字を増やしたら円はもっと安くなる、という批判に対して片岡氏はこう答えて失笑を買った。彼がソブリンリスク(国家リスク)を知らないからだ。


実際には彼のインタビューが世界に配信されたのをきっかけに円安は一段と進み、1ドル=155円台になった。

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日本人には「希望を捨てる勇気」が必要だ(アーカイブ記事)

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
2009年に出した本書は、タイトルが暗すぎて受けないだろうと思ったが、就職氷河期世代に読まれて3刷になり、中国語訳まで出た。中国ではまだ希望を捨てる必要はないと思ったが、中国語のタイトルは『失われた20年:日本の長期的な経済停滞の本当の理由』。日本経済の失敗に学ぼうというわけだ。

このタイトルは「日本経済をだめにする悲観論だ」と批判されたが、中身を読んでもらえばわかるように、これは財政バラマキや金融緩和などの小手先の政策で雇用を守り、古い企業を延命すれば何とかなるという希望を捨てないかぎり、長期停滞を抜け出せないという意味だ。

日本経済のボトルネックは高度成長期から受け継いだ古い雇用慣行で、これを変えない限り量的緩和なんかいくらやっても無駄だ。これをリフレ派は「清算主義だ」などと批判したが、安倍政権の量的緩和で成長率も実質賃金も上がらず、日本経済は長期停滞から抜けられなくなった。

それから16年。私の予想した通り、日本経済は「暗いトンネル」を抜けられない。高市政権の補正予算には、自民党の支持団体の要望した補助金や投資減税などのバラマキが並び、各業界に利益を分配する構造は変わっていない。野党も減税のバラマキを求めている。もう本当に希望を捨てて出直すしかないのではないか。続きを読む

存立危機事態って何?

高市首相の「台湾有事は存立危機事態だ」という発言で中国の薛剣(せつけん)大阪総領事が「その汚い首は斬ってやる」と発言したことが大きな波紋を呼んでいますが、そもそも存立危機事態とは何か、知っている人は少ないでしょう。



Q. 存立危機事態って何ですか?

「存立危機事態(そんりつききじたい)」とは、2015年に日本の安全保障関連法(安保法制)で新しく定義された概念で、集団的自衛権を限定的に行使できる条件を指す法律上の用語です。

■ 存立危機事態とは?

日本と密接な関係にある国が攻撃され、日本の存立(国家としての存続)が脅かされ、国民の権利などが根底から覆される「明白な危険」がある場合に、必要最小限度の武力行使が認められると定めたもの。

■ なぜ作られた概念なのか?

野党やマスコミ(朝日新聞など)が「集団的自衛権の全面解禁」に強く反発したため、政府が行使できる集団的自衛権の条件を限定するために作られた政治的な“縛り”。実際には「台湾有事を想定したものだが、中国が怒るので曖昧にした」という指摘も多い。

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財務省から出てきた「医療費の窓口負担一律3割」の提案

財務省が医療費のタブーに踏み込み、70歳以上も一律3割負担とする改革案を打ち出しました。政治家が避け続けた“聖域”に、財務省が本気でメスを入れ始めたのです。

「減価償却費の一括計上」は法人税改革の第一歩

政府の「日本成長戦略会議」で減価償却費の一括計上が議論された。これは自民党総裁選挙で茂木候補があげた公約だが、単なる投資減税ではなく、法人課税の全面的改革の第一歩になる可能性がある。

チャットGPTの解説:減価償却の廃止(一括計上)という提案は、Alan J. Auerbachらが提唱する税制改革の理論的帰結の一つです。以下で体系的に解説します。

法人所得税はゆがみが大きい

現在の法人所得税は会計操作の余地が大きく、日本では企業の60%以上が赤字法人で税を払っていないなど、ゆがみの大きい税として知られています。法人所得は海外移転などで減額できるため、租税回避を促進します。

特にゆがみが大きいのが減価償却です。法人税は投資の時点で支出した資本財(設備など)を減価償却で分割して控除しますが、これは投資のタイミングによって課税の現在価値が変わり、過少投資になります。

また減価償却には裁量の余地が大きいため企業の会計操作に使われやすく、税務当局の裁量も大きいので、租税特別措置のような特定の企業の優遇措置として使われます。

「キャッシュフロー税」で減価償却を廃止する

Auerbachは、これを根本的に修正するためにキャッシュフロー税(CFT)を提唱しました。その基本原理は課税対象をキャッシュフロー(現金の流入-流出)に変えるものです。つまり:

 •投資も現金流出なので即時一括控除。
 •減価償却の概念が不要(廃止)。
 •課税ベースは「営業収入-経費-投資支出」。

AuerbachとDevereuxは、さらにこのCFTを貿易取引に適用して、DBCFT(Destination-Based Cash Flow Tax)を提案しました。これは「どこで生産したか」ではなく「どこで消費されたか」に基づいて課税します。

これによって法人所得税はなくなり、VATのようなキャッシュフロー課税に一元化され、大幅に簡素化されます。政府の裁量や会計操作の余地が少なくなり、法人税の国際的な租税競争を回避できます。

ただし現行の法人所得税のもとで投資を一括償却すると、法人税がゼロになったり、財政赤字が増えたりして大きな問題が起こります。政府の提案は設備投資減税として出ているようですが、税制の整合性という点で疑問があります。

続きは11月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

政治が「強すぎる円」を生み、空洞化が「弱すぎる円」を生んだ

円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか (日本経済新聞出版)
ミルトン・フリードマンが1950年代に変動為替相場を提案したとき、それをまじめに受け取る人は少なかった。為替レートは物差しのようなもので、それが毎日、伸びたり縮んだりしては貿易はできない。

それが1970年代にドルが弱くなって金・ドルが兌換停止になり、なし崩しに変動相場制になった。フリードマンは通貨価値がその購買力に等しい水準に決まると考えたが、実際の為替レートは購買力平価(PPP)とはほど遠い。今の円のPPPはBISによれば1ドル=約95円だが、名目為替レートは154円で、その60%である。

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歴史上、これほど大きくPPPと名目レートが離れた例は少ない。円高方向に大きく外れたのは1995年で、ピーク時には79円台を記録した。これはクリントン政権のドル安誘導で政治的につけたレートだったが、意外に大きな影響をもたらした。この時期から所得収支の黒字が増え始めたのだ。

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これは初期には、円高による製造業の資本逃避だった。不良債権問題で弱った日本の通貨価値が史上最高になったのは明らかに過大評価だったので、海外生産を増やしたのだ。その後クリントン政権の方針転換で円は下がり、金融危機の起こった1998年には140円まで下がったが、空洞化は止まらず、今では経常収支の黒字はすべて所得収支である。

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ワトソンの不都合な真実(アーカイブ記事)

二重らせん (ブルーバックス)
ジェームズ・ワトソンが死去した。97歳。本書は、彼とクリックが「遺伝子」の正体がDNAの二重らせんという単純な構造にあることを発見するまでを描いた、20世紀最高の科学読み物である。ただワトソンの役割が誇大に描かれ、最初に二重らせんを発見したロザリンド・フランクリンの業績を無視しているなど、学問的には問題が多い。

ワトソンは陽キャラで、その後もいろんな問題を引き起こした。大スキャンダルになったのは、2007年に「黒人の知性は白人と同じではない」と発言し、国際的なブーイングの嵐を巻き起こしたことだ。彼は全面的に謝罪したが、所長をつとめるコールド・スプリング・ハーバー研究所の理事会は、彼を停職処分にすると発表した。

問題のインタビューを読むと、たしかに軽率にしゃべった印象はまぬがれない。世界一有名な分子生物学者のコメントとあれば、当然科学的な根拠のある話だろうと読者は思うが、彼はこの点も「科学的根拠がない」とあっさり引っ込めてしまった。

しかしIQと遺伝子には明らかな相関があり、その遺伝子の一部も同定されている。また、かつて大論争を巻き起こした"The Bell Curve"のように、黒人のIQが平均して白人より低いとする実証研究は多く、学問的には認められている。カリフォルニア大学などでは、ハンディキャップをつけないとアジア系が圧倒的多数を占めて、黒人がほとんど入学できないという実態もある。

続きは11月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)
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