啓蒙された経済(アーカイブ記事)

The Enlightened Economy: An Economic History of Britain 1700-1850 (The New Economic History of Britain seri)産業革命は、一般には多くの発明によって経済が爆発的に成長した時期だと思われているが、最近の研究では18世紀のイギリスで初めて生まれた技術というのは少なく、成長率もそれほど高くなかった。

当時のイギリスに特徴的なのは、このようなイノベーションが長期にわたって続き、ビジネスに応用されたこと、そしてそれが奨励されたことである。これは当たり前のようだが、キリスト教では人間はアダムとイブの時代から堕落を続けており、社会が進歩するという思想は異端だった。

Innovationというのは非難の言葉であり、スコットランド啓蒙思想の中心人物ヒュームは、無神論者とみなされて一生アカデミックな地位を得られなかった。啓蒙は、神に代わって人間が自然をコントロールする思想だったからだ。

本書が強調するのは、イノベーションにとって重要なのは技術ではないということだ。技術だけなら同時代の中国(清)のほうがはるかに進んでいた。火薬も活版印刷も羅針盤も、中国で発明されたものだが、それは産業革命を起こさなかった。それはなぜだろうか。

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次の自民党総裁はアベノミクスを転換できるのか

岸田首相の突然の不出馬で、自民党総裁選が動き始めた。現役閣僚や党三役も手を上げ、最近まれに見る混戦である。


日本経済新聞

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資本主義を生んだのは独裁だった

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岸田首相が退陣を表明した。3年間、何をしたのかほとんど記憶に残らない、存在感の希薄な首相だった。日本の大企業によくある調整型のサラリーマン社長である。派閥均衡の力学で生まれたので、政治資金問題でも各派閥のバランスを取っているうちに何をしているのかわからなくなり、自滅した。

これが日本でグローバル企業の育たない原因である。資本主義のコアにあるのは、ウェーバーのいうようなプロテスタントの職業倫理ではなく、資本家の独裁による株式会社という軍団だった、とファーガソンはいう。この意味でウェーバーは、誤った理由で正しかったのだ。

宗教改革(Reformation)という上品な名前で呼ばれているのは、ローマ・カトリック教会が異端派を弾圧した戦争である。ほとんどの異端派は武力攻撃で壊滅したが、それに武力で対抗したカルヴァンの軍団だけが生き残った。

カルヴァンはフランスからカトリック教会の弾圧を逃れてスイスに亡命し、ジュネーブで教会の指導者になり、政治の実権を握った。そして彼の教義を批判する者を弾圧し、三位一体説を批判したセルヴェートを火刑に処すなどの神権政治を行なった。

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日本がいまだに「デフレ」だと思っている政治家のための経済学

アゴラに珍しくリフレ派の記事が出ていると思ったら、自民党の長島昭久議員だった。今回の株暴落では、経済の専門家にはこういうコメントはなくなったが、いまだに政治家がこのレベルの認識だと困るので、超簡単に解説しておこう。


まず「デフレ脱却」の意味がわからない。デフレーションとは物価下落で、これ以外の意味はない。今年6月の消費者物価上昇率(コアCPI)は2.6%で、34ヶ月連続で日銀のインフレ目標2%を上回った。これは堂々たる物価上昇であり、デフレではない。

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黒田日銀の過剰流動性が100兆円の「円キャリートレード」を生んだ

今回の世界同時株安の発火点は日本である。アメリカにはこれといった材料はなかった。日銀の利上げのサプライズで円キャリートレードの巻き戻しが起こり、それによってアメリカ株が売られたのが原因だ。

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日経平均バブルの崩壊は大企業の「海外財テク」の終わり

日銀の利上げをきっかけに1ドル=143円まで円高になり、日経平均は2営業日で10%以上も下がったが、相場にはあまりパニック感はない。これは株式バブルの正常化と受け止められているからだ。

まず為替レートについては、たった0.15%ポイントの利上げで円が5%も上がったのは過剰反応だ。このように針の一刺しで風船がはじけるのは、バブル崩壊の典型的症状である。特に日経平均銘柄の下落率が大きい。


日経平均とTOPIX(Yahoo!ファイナンス)

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世界一賢い日本人を外資が雇わないのはなぜか

最近の円安の原因が産業空洞化だということは、多くの専門家のコンセンサスになりつつある。この空洞化を是正するには対内直接投資を増やす必要があるが、そのGDP比は約5%で、198ヶ国中の196位。北朝鮮より低いという驚くべき状況である。



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「弱い円」の正体(更新)

弱い円の正体 仮面の黒字国・日本 (日経プレミアシリーズ)
1ドル=150円を切って「円高だ」と騒がれているが、これはおかしい。理論的には、円はもっと上がってもいいのだ。1ドル=145円でも、購買力平価(PPP)に比べると、まだ大幅な過小評価である。図のようにビッグマックインデックスでおなじみの消費者物価PPPは108円で、これに比べると名目為替レートは約25%弱い。

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図1 円の購買力平価(本書)

この理由は単純である。為替レートを決める要因の中で貿易収支の占める比重が低くなったからだ。アゴラでも紹介したように、2010年代以降は貿易収支が赤字基調なのに、経常収支は黒字である。為替レートを決めるのは貿易ではなく、投資なのだ。

著者も指摘するように、今の円安は黒田日銀の過剰な量的緩和がもたらした大規模な資本流出によるものだ。それは黒田総裁の意図だっただろうが、日本経済を強くする方向ではなく、産業空洞化で弱体化させる結果になった。グローバリゼーション自体は悪くないが、その副作用に配慮しないで超緩和を10年も続けたことが、植田総裁の重荷になっている。
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アベノミクスを清算して企業の新陳代謝を進めるとき

株式市場は、日銀の利上げを受けて大荒れだった。これはある程度、予想できたことで、日経平均株価も今年3月ぐらいの水準に戻っただけだ。植田総裁も、この程度の反応は織り込みずみだろう。それより大事なことは、これが彼のアベノミクス卒業宣言だということである。



日銀が政策金利を0.25%に上げたのは、福井総裁以来18年ぶりである。あれ以来、日銀は金利を下げることはあっても、上げることはなかった。このようなアベノミクスの超緩和路線と手を切り、金利を正常化するのが今回のねらいだろう。

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河野太郎氏と原子力村の「停戦協定」を提案する


河野太郎氏の「変身」が話題になっている。2021年の総裁選でも原発再稼動には賛成だったので、反原発だったわけではないが、当時はSMRには反対し、新増設には否定的だった。それが東海第二原発を見学し、核融合にまで言及した。

その理由について「生成AIやデータセンターなどによる電力需要の増加を考えると、原発を再稼働していっても、さらに需要が上回る可能性もある」と述べた。これはかつて「脱工業化社会にエネルギー多消費産業はいらない」と言っていたのに比べると大きな前進である。

「総裁選向けのリップサービスだ」と警戒する向きも多いが、彼はもともと「私は反原発ではなく反核燃料サイクルだ」と言っていた。そのサイクルも宙に浮き、六ヶ所村の再処理工場は運転を26回延期しても見通しが立たない。これに引導を渡せるのは河野氏しかいない。

といっても再処理工場を解体しろというのではない。原子力は日本が世界トップの競争力をもつ数少ない産業である。再処理工場で蓄積された技術や人材を生かせば、六ヶ所村は原子力開発の拠点になりうる。

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