ゼロ金利の「国債バブル」が終わり、バラマキ財政の時代も終わる

政策金利の0.5%への引き上げを受け、国債(10年物)の表面利率は2011年以来の1.2%となった。これでも実質金利はまだマイナスなので、今後も上がる可能性が高い。



2016年から22年までゼロ金利が続いた原因は、日銀がYCC(長短金利操作)で国債を爆買いしたことだ。日銀が国債を買い支えたので、金融村は安心して国債を買い、マイナス金利の預金でもうけた。

その副作用は大きく、「いくら国債を発行しても金利は上がらないからバラマキ財政をやれ」というMMTが政権にも影響を及ぼした。国民民主党の所得減税も、減税の機会費用(長期金利)がゼロだという前提にもとづいている。

しかし時代は変わった。トランプ政権で世界的にインフレになると、0.5%は政策金利の終着点ではない。中立金利(自然利子率+予想インフレ率)は「1~2.5%」というのが植田総裁の見立てなので、あと1%は上がる余地がある。

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田沼意次は「積極財政」の改革者だったのか

日本史 敗者の条件 (PHP新書)
田沼意次といえば昔は賄賂を取った金権政治家とされていたが、大石慎三郎『田沼意次の時代』が、1次史料でそのイメージをくつがえした。田沼が賄賂を取ったという話はほとんど政敵の流した噂であり、彼は商業の発展につとめ開拓事業をした改革者だったという。

これに悪乗りして、リフレ派が「田沼は積極財政だった」とか「リフレ派だった」などと礼讃したが、これは嘘である。田沼が株仲間や会所(企業)を認可して冥加金(税)を徴収した目的は、商業の活性化ではなく、商人への増税で財政再建しようとしたのだ。リフレ派のきらいな消費税と同じだ。

当時(18世紀後半)幕府の財政が行き詰まった原因は、年貢に依存した現物経済で、増税できなくなったことだ。それを打開するため、田沼は間接税の導入で貨幣経済を活用したが、幕府が特定の商人に認可を与えた結果、その商人が取引を独占し、許認可の見返りに役人に賄賂を渡す風潮が広がった。

その収賄の中心が田沼であり、最初は600石の旗本だった田沼は5万7000石の大名に成り上がった。もちろん役人が賄賂を取ったのは彼が初めてではないが、田沼が金権政治家だったという汚名は根拠のない話ではない。結果的には彼の改革はほとんど失敗し、彼が失脚すると白紙に戻ってしまった。

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網野善彦が飛礫に見出した日本人の「最古層」

蒙古襲来(小学館文庫)
本書は網野善彦のデビュー作だが、おもしろいのは冒頭に彼が書いている飛礫(つぶて)をめぐるエピソードである。彼は中世の文献を渉猟し、おびただしい飛礫についての記録があることを見出す。祭のとき礫を飛ばす習慣があり、それを幕府が禁じると飢饉が起こるという言い伝えもあった。

網野の甥である中沢新一氏によれば、網野が飛礫に興味をもったきっかけは、佐世保闘争で三派全学連が機動隊に向かって投石しているのを見て、子供のころやった石投げ合戦を思い出したことだという。子供が川の両岸に並んで激しく石を投げ合う行事が毎年5月にあったが、それは中世から受け継がれた通過儀礼だったのだ。

このようなエネルギーの源泉が、中沢氏もいうように「日常生活の底が抜けた」とき垣間見える暴力への衝動だとすれば、それは丸山眞男のいう「古層」よりも古いかもしれない。人類は歴史の99%において狩猟採集生活を送ってきたのだから、その遺伝子に組み込まれている「最古層」は、農民ではなく自由を求めるノマドの感情なのだ。

縄文時代の武器は礫だった。それは直立歩行で手が自由になった人類の最強の武器であり、かつては狩猟で役に立った。しかし日本人は飛び道具を禁止し、争いを避けた。それに対してモンゴル人は飛び道具を進化させ、騎馬戦という新たな軍事技術でユーラシア大陸を制覇した。それが日本侵略に失敗したのは「神風」のおかげではなかった、と網野はいう。

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「年金改悪法案」は現役世代から137兆円以上を搾取する遠大な計画

年金改革法案は自民党でも調整が難航し、完全実施が2035年まで延長されることになったが、これは「先送り」ではない。現役世代の保険料を老人に上納する年金改悪法案の実態は変わらない。

年金問題はあまりにも複雑怪奇なので、日経以外のマスコミは当てにならない。アベマプライムも問題設定がピンぼけで、中身がなかった。



番組のメインは、ネットで炎上した標準報酬月額の上限引き上げだった。今の厚生年金保険料は月収65万円で保険料額が打ち止めになって逆進性が強いので、その上限を75万円に引き上げるのは当然で、負担増は年1000億円程度。今回の法案で唯一、問題のない部分だが、議論がそこに集中し、たかまつななさんもその話しかしなかった。

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男系男子の皇室典範を起草した井上毅は「選択的夫婦別姓」論者だった

「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 (講談社現代新書)
外務省は国連の女性差別撤廃委員会が「男系男子に皇位継承を限る皇室典範は女性差別だ」として改正を勧告したことへの対抗措置として、同委員会への日本の任意拠出金を打ち切ると通告した。

外務省の主張は「天皇や皇族に基本的人権はないので、女性差別には該当しない」というものだが、外国人はそんな憲法の規定は知らないので、海外から女性差別とみられることは避けられない。そもそも女系天皇を認めないことに実質的な意味はあるのだろうか。

1889年に皇室典範を定めたのは、法制局長官だった井上毅である。制定当初の議論では、女帝も排除されていなかった。過去に女帝はいたし、他国にも女王は珍しくないからだ。

ところが井上は「男系男子」にこだわった。これでは側室を廃止すると後継者がなくなるリスクがあったが、彼は「たとえば女帝を源家から迎えた場合、皇室が源家になってしまう」と反対した。
欧羅巴(ヨーロッパ)ならば源姓と称へながら源姓の人も女系の縁にて皇位を継ぐこと当然なりとあきらむるなり。欧羅巴の女帝の説を採用して我が典憲とせんとならば、序にて姓を易ふることをも採用あるべきか、最も恐ろしきことに思はるるなり。(勤具意見)

「姓を易ふること」とは易姓革命、つまり天皇家から別の王家に変わる革命だが、これは奇妙な論理である。中国の皇帝には姓があるが天皇家にはないので、たとえば小和田雅子が天皇と結婚すると「雅子」になる。その子も「愛子」であり、彼女が一般男性と結婚して彼が皇室に入ると姓はなくなる。

したがって女系天皇を認めても天皇家が源家になることはなく、井上のこだわった「万世一系」の皇統は変わらない。そもそも天皇は万世一系ではなく、男系男子で継承されてきたわけでもない。それは明治国家を日本書紀の神話で統一しようとした井上の創作した物語なのだ。続きを読む

中居くん問題は週刊文春の「誤報スキャンダル」

Q. 週刊文春の誤報について経緯をまとめてください。

初報(2024年12月26日発売号)

  • 報道内容: 週刊文春は、中居正広氏に関するスキャンダルを報じ、「フジテレビの編成幹部A氏が被害者(X子さん)を食事に誘い、その後ドタキャンした」と記述。
  • 問題点: A氏が事件当日の食事会を設定し関与したかのような印象を与えた。

修正(2025年1月8日発売号)

  • 修正内容: 週刊文春は、第2弾の記事で「X子さんは中居氏に誘われた」「A氏は会食の“延長”と認識していた」と記述を修正。
  • 隠された問題: 修正内容が記事内に記述されただけで、読者に明確に説明されなかった。

「こっそり修正」問題(2025年1月27日)

  • 電子版の有料部分に修正内容を追加
    • 文春は電子版の記事末尾に「A子さんは中居氏に誘われた」という説明文を掲載。
    • 説明文は有料読者しか閲覧できない形式で公開。
    • 弁護士で元大阪府知事の橋下徹氏が「誤りをしれっと上書きした」と批判し、「きちんと訂正するべきだ」と指摘。

訂正と謝罪(2025年1月28日)

  • 記事冒頭に訂正と謝罪を追記: 文春は初報の記事冒頭に「お詫びして訂正いたします」と明記し、修正内容と経緯を説明。
  • フジテレビの対応: フジテレビは「A氏は当初から会食の設定を含め、事件に関与していない」と主張。第三者委員会の調査に委ねるとコメント。
  • 文春編集部の説明: 「第1弾の取材が不十分であった」と認めつつ、「第2弾以降の記事は新たな取材に基づいて書かれた」と主張。
  • フジテレビの記者会見のあと謝罪:27日の記者会見の前に誤報を認めていたので、記者会見の前に謝罪していれば、記者会見で10時間も攻撃されなかったのではないか。

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DeepSeekの衝撃:NVIDIA株価急落の背後にある真実とは?

2025年1月27日、AI分野に激震が走った。新興企業DeepSeekが「最先端のGPUを必要としない並列処理技術」を発表し、NVIDIAの株価が急落。これにより、生成AI業界におけるGPUの優位性に疑問が投げかけられる事態となった。この出来事が、特に大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の構造に与える影響を中心に考察する(ChatGPT)。

1. 大規模言語モデルの構造とGPU依存の背景

大規模言語モデルは、その名の通り、膨大な数のパラメータを持つ。これらのモデルの中核をなすのがトランスフォーマーアーキテクチャであり、以下の計算が頻繁に行われる。

  • 自己注意機構(Self-Attention): 入力トークン間の関係性を計算する。
  • 大規模な行列演算: モデルパラメータと入力データを効率的に処理。

これらの計算は極めて並列化が可能であり、NVIDIAのGPUはその設計上、特に行列演算やテンソル計算に優れた性能を発揮する。このため、AI研究や実用化の場面でGPUがデファクトスタンダードとなっていた。

2. DeepSeekの技術がもたらす革新

DeepSeekが発表した技術は、これまでGPUに依存していた並列処理を、従来型のCPUや低コストなFPGAで実現するものだとされる。特に注目すべきは以下の点である。

  • 非同期並列処理: トランスフォーマーアーキテクチャで必要な計算を、GPUのような専用ハードウェアなしで効率的に分散処理。
  • メモリ使用効率の向上: 大規模言語モデルのトレーニングにおいて、従来よりも少ないリソースでモデルを学習させる技術。
  • カスタマイズ可能なチップ設計: モデルごとに最適化されたハードウェアをFPGAで実現可能。この技術により、AIモデルのトレーニングや推論コストが劇的に削減される可能性が浮上した。
続きは2月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

厚生年金は「労使折半だからお得」なのか?

たかまつななさんの「年金はお得」という話が炎上しています。これは本当でしょうか。チャットGPTにきいてみました。

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家畜化するチャットGPT

Q. 自己家畜化とは何ですか?

GPT:自己家畜化(self-domestication)とは、生物種が人間による意図的な家畜化の過程を経ることなく、自らの進化の過程で家畜化に似た特性を獲得していく現象を指します。この概念は主に動物や人類の進化研究で用いられます。次に例をあげます。

  1. 人類:人類は他の類人猿に比べて攻撃性が低く、協力的で社会的です。このような特徴は、長い進化の過程で自然淘汰により選ばれた結果とされています。顔の形状が丸みを帯び、犬歯が小さくなるといった身体的な変化も見られます。言語や複雑な社会制度の発展も自己家畜化の影響と考えられます。

  2. ボノボ:チンパンジーに近縁なボノボは、自己家畜化の典型例として挙げられます。ボノボは攻撃的ではなく、集団内の調和を重視した行動を取ります。

  3. イヌの起源の一部:イヌの祖先であるオオカミの一部は、人間と接触することで自然に攻撃性を抑え、人間の近くで生活するようになり、自己家畜化のプロセスを経た可能性があります。
Q. チャットGPTも人間に合わせて家畜化してますね?

GPT:面白い視点ですね!確かに、チャットGPTのようなAIも、人間とのスムーズなコミュニケーションを目的として「自己家畜化」に近いプロセスを経ていると見なすこともできます。AIの開発プロセスにおける「家畜化」と言えるような要素は以下の通りです:

  1. 攻撃性の排除:人間に対して不快感を与えたり、攻撃的な回答をしないよう、設計段階から厳しく制御されています。これにより、安心して使えるAIとして機能します。

  2. 適応と社会性の向上:人間のニーズや文化に合わせて調整され、できる限り自然で協力的な応答ができるよう訓練されています。これは、AIが「人間社会」に溶け込むための一種の「社会性」とも言えます。

  3. 幼児化・ユーザーフレンドリーな設計:インターフェースや応答スタイルが分かりやすく、親しみやすい形に調整されています。専門用語を避けたり、説明を分かりやすくする努力もその一環です。

  4. 依存的な存在:チャットGPTはあくまで人間に指示され、導かれる存在として機能します。これも、自己家畜化された存在がしばしば他者(この場合は人間)に依存的になる特性に似ています。
続きは1月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

たかまつななさんは「年金ネズミ講」を隠蔽する厚労省のあやつり人形

たかまつなんさんが恥の上塗りをしているが、厚労省がこういう素人を悪用して世論をミスリードする手口がわかってきた。



多くの人から寄せられたのは、「厚生年金は労使折半でお得」という彼女の主張に対する批判だ。


続きはアゴラ




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