アナーキー・国家・ユートピア

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界国民負担率が50%に近づいて「大きな政府」への不満が高まっているが、1970年代にアメリカ経済がインフレと財政赤字でボロボロになったとき、ケインズ的な福祉国家への批判として出てきたのが、「小さな政府」を掲げたリバタリアンだった。

1974年に出た本書は、ロールズの『正義論』への批判として書かれ、その後のレーガン政権の新保守主義の支柱ともなった。その特徴はロールズの「無知のヴェール」にならって、思考実験で人々の安全を守るために最小限必要な制度とは何かを考えたことだ。

個人が集まって生活するとき、生命や財産を守るための組織としての保護組合(protective association)が必要になるが、複数の保護組合が衝突すると、暴力的な紛争が日常化する。それを防ぐために、一定の地域内で公権力が暴力を独占し、他の保護組合を武装解除するのが最小国家である。

ノージックは、国家に必要不可欠な機能は暴力装置としての軍事・警察・外交だけだとして、所得の再分配などを行なう福祉国家を否定したが、実際の国家がノージックのいうような手順で発生したわけではない。これについては「ロールズと同じく空想的な国家論だ」という批判があり、以後ノージックは一度も政治哲学の本を書いていない。

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「人類が経験したことのない暑さ」の原因は気候変動なのか

昨年の地球の平均気温は、観測史上最高だった。これについて「その原因は気候変動だ」という話がマスコミには多い。



これはホッケースティック曲線と呼ばれ、最近の気温上昇が異常に急速なことを示す。IPCCの第6次評価報告書にも登場した。これが本当だとすると、今は過去2万年間なかった急速な温暖化が進行中だということになるが、本当だろうか。

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マックス・ウェーバーのニヒリズム

マックス・ヴェーバー入門 (岩波新書 新赤版 503)
日本人はニーチェが好きだ。彼はヨーロッパ(特にドイツ)では無神論者としてきらわれているが、日本では『超訳 ニーチェの言葉』などという偽書が100万部以上も売れた。その中身は「初めの一歩は自分への尊敬から」とか「いつも機嫌よく生きるコツ」といったハウツーものだ。天然ニヒリストの日本人にとっては、神が死んだかどうかなんてどうでもいいのだろう。

他方で日本には、大塚久雄以来の「ウェーバー学」の伝統がある。これは講座派マルクス主義の変種で、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を金科玉条として「日本人の精神的自立」を説くもので、膨大な文献学の蓄積がある。

こうした近代化論的なウェーバーの読み方は日本特有のもので、歴史学では『プロ倫』は否定されている。『世界宗教の経済倫理』などの宗教社会学も、ドイツ語訳の2次文献に依拠したもので、学問的価値はほとんどない。

本書はこういう日本的な読み方を離れ、彼がニーチェの影響を強く受けたという観点から、いわば「ヨーロッパのニヒリズム」の終着点としてウェーバーの思想を考えるものだ。

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コロナワクチン被害の比較データが必要だ


この文春の記事は重要な問題提起だが、これについているコミュニティノートがおもしろい。「ワクチンが原因だと主張するためには接種群と非接種群の比較が必要です」というのはその通りだ。

このノートの引用した論文を読むと、確かにリンパ節腫脹(limpaadenopathy)はワクチン接種者(青)の発症率が高いが、不整脈(arrhythmia)は非接種のコロナ感染者(赤)のほうが高い。全体として普通のワクチンより特に大きな副反応はない。

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しかし日本では厚労省と感染研が個人別データを出さないので、こういう調査ができない。あるのはワクチン接種がなかったら36万人死んだはずだという西浦博氏の誇大妄想ぐらいだ。

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高額療養費制度って何?

維新の発表した「3割削減」の提言に関連して、高額療養費制度がXのトレンドに入っています。よい子のみなさんには関係ない話ですが、わかりやすく解説しましょう。

Q. 高額療養費制度って何ですか?

これは保険医療費の窓口負担が一定の限度額を超えた場合、差額を支給する制度です。69歳までの人の自己負担の上限は次のように決まっています。



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公明党はなぜ後期高齢者の9割引医療を守るのか

維新の後期高齢者医療費3割負担の提案に対して、他の党は与野党ともに沈黙を守っているが、公明党が初めてコメントした。

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後期高齢者医療制度は廃止して医療制度を「2階建て」に

日本維新の会の医療制度改革案「医療維新」が発表された。アゴラでもずっと提言してきた「高齢者医療制度の原則3割負担化」が国政政党の公約に入ったのは初めてだ。



ただし財源については疑問がある。この提言では後期高齢者医療制度を税財源化することになっているが、これでは社会保険料の負担を税に置き換えるだけで、国民負担の削減にはならない。

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意識を超える宇宙は実在するのか

純粋理性批判 1 (光文社古典新訳文庫)
今年はカントの生誕300年だが、彼以降の近代哲学はすべて観念論である。カントはプラトン以来の「形而上学」を批判し、意識から独立の実在を否定したが、これはほとんどの人の直感には合わない。

私の目の前にあるコーヒーカップは、私が目をつむっても存在するはずだ。私がその存在を否定しても、それを倒したらコーヒーはこぼれる。それを疑う哲学者は、頭がおかしいのではないか――レーニンは『唯物論と経験批判論』で、このような「ブルジョア観念論」を罵倒した。

これは誤解である。カントは人間の外側の「物自体」の存在は認めたが、主観を超える先験的な本質が実在する根拠はないと論じたのだ。太陽の存在は認めても、それがあすも東から昇るという本質は帰納できない。それは主観的な経験則にすぎないからだ。

しかし現実には天体の運動は確率100%で帰納でき、宇宙の隅から隅まで同じ法則が成立している。それはなぜだろうか。カントはそれを先験的カテゴリーという概念で説明したが、これは先験的な本質を先験的カテゴリーに置き換えただけである。

最近の思弁的実在論はこの謎にあらためて取り組んだが、結局カントの袋小路に入ってしまった。宇宙の均質性は人間原理で説明するしかない。それはメイヤスーも批判するようにトートロジーだが、彼の実在論もトートロジーである。カントの取り組んだ謎は、いまだに解けていないのだ。

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「ヨーロッパのニヒリズム」の後に来るものは何か

ニーチェ全集 12 (ちくま学芸文庫 ニ 1-12)
「私の物語るのは、次の2世紀の歴史である。私は来たるべきものを、もはや別様には来たりえないものを、すなわちニヒリズムの到来を書きしるす」。本書の序文でニーチェがこう宣告して狂気の世界に旅立ったのは1889年。それから135年たち、彼の予言はリアリティを増しているが、その意味は誤解されている。

ニーチェはニヒリストではなく、それを克服しようとした哲学者である。彼が本書でヨーロッパのニヒリズムと呼んだのは、プラトン以来の形而上学だった。プラトンのイデアは現象の背後に普遍的な実在を想定する本質主義だったが、それがキリスト教に取り入れられ、超越的な神を世界の本質とするヨーロッパの世界観ができた。だが神は近代科学の法則に置き換えられ、世界は意味を喪失した。

ニーチェが「すべての価値の価値転換の試み」と名づけた草稿は、彼の狂気によって完成せず、草稿が断片のまま遺された。本書は妹エリザーベトがその草稿を恣意的に編集したもので、彼女がナチスのイデオローグとして兄を利用したことから、今日に至るまでニーチェはドイツ語圏では禁書に近い存在になっている。

しかしニーチェがニヒリズムを克服するために独裁的な「権力への意志」を志向したという通俗的な解釈は誤りである。彼が否定したのはヨーロッパの形而上学であり、その原因はプラトン以来の本質主義だった。それは多くの民衆を支配するために必要なイデオロギーだが、宿命的に挫折する。なぜなら世界には本質も意味もないからだ。

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2023年の死亡数はなぜ史上最高になったのか



2023年の死亡数は3年連続で増加して約160万人となり、過去最高だった。超過死亡数も昨シーズン(2022年12月~23年2月)は史上最高となった。コロナ流行が始まった2020年はマイナスだった超過死亡数がワクチン接種の始まった2021年から増え、欧米とほとんど変わらなくなったのだ。

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昨シーズンは世界的にもオミクロン株の流行で死者が増えたが、日本の超過死亡数はコロナ死者数の3倍以上だった。超過死亡は平年にはない現象(感染症や災害)によるものだが、コロナ以外に大きな感染症があったわけではない。

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小島勢二氏のアゴラ記事より

これは医療の逼迫などによる「コロナ関連死」だというのが厚労省の見解だが、コロナ死より関連死のほうが多いのは不自然だ。昨シーズンは日本のワクチン接種率が世界一になった時期でもある。ワクチンは本当に命を救ったのだろうか?

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