122兆円の予算は「インフレ大増税」による緊縮予算

来年度の一般会計予算が閣議決定された。総額は約122兆3000億円となる見通しだ。マスコミはこれを「史上最大」とか「放漫財政」とか騒いでいるが、名目GDP比では今年度並みである。高市首相と片山財務相が約束したように補正予算を組まないとすると、今年度の133兆円から実質ベースで1割も削減する緊縮予算で、プライマリーバランスも黒字になる。

積極財政を掲げた高市政権が、なぜ緊縮予算を組んだのか。それは物価を上げて税収を上げたインフレ増税のおかげである。政府支出や公共料金は名目ベースで固定されているが、たとえば消費税収は物価が上がると増えるので税収は上がるからだ。



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電通の自殺事件を生んだ日本企業の「タコ部屋」構造



10年前の電通の自殺事件についての記事が大反響を呼び、このツイートが240万インプレッションを超えた。この事件は、日本的雇用のもたらした悲劇として、今も多くの人の関心を集めているようだが、問題は「長時間労働」ではない。


リプライは「月平均105時間」が多いという点に集中したが、これは表現が正確ではなかった。「長時間労働が自殺の原因だ」というのが母親の労災認定の申し立てだったが、三田労働基準監督署の調べでは、自殺直前の1ヶ月(10月9日~11月7日)の残業時間は105時間だった。

当時の電通では200時間を超す残業も珍しくなかったので、「長時間労働による自殺」という直接の因果関係は立証できず、労基署は「長時間労働で精神障害を発症し過労自殺に至った」として労災認定し、電通と彼女の上司を書類送検したが、不起訴処分になった。

高橋さんが自殺する直前まで彼女の部屋には男性がいたという社員寮の同僚の証言があり、別れ話がこじれたという見方もあった。もう一つの要因は、上司のS部長との人間関係だった。彼には社内でもセクハラやパワハラの噂がつきまとい、高橋さんのツイートにもたびたび登場した。


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電通社員の「過労自殺」が労働者を不幸にした

きょうは電通社員だった高橋まつりさん(享年24歳)が自殺してから10年目である。母親はきのう記者会見を開いて「過労死をなくしてほしい」と訴えたが、あの事件は母親の意図とは違う意味で労働行政を大きく変え、労働者を不幸にした。

「過労死」というのは日本独特の概念で、今は海外でもkaroshiで通じる。それは世界にほとんど類例のない奇妙な現象である。自殺するぐらいなら会社をやめればいいのだが、会社という共同体に埋め込まれた日本の会社員にとって、会社をやめることは死ぬよりつらいのだ。

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「他に選択肢はない」という危機感がサッチャー首相を生んだ



社会科学で実験はできないといわれるが、サッチャーの緊縮財政は歴史的な実験だった。インフレ率と失業率が10%を超える状況で政策金利を上げることは、常識では考えられない。1970年代の労働党政権は「社会契約」と呼ばれる価格統制で賃金を抑制しようとしたが、労働組合はそれに反抗し、ゼネストで警察や鉄道が止まって社会が麻痺した。

サッチャー政権の経済政策は、フリードマンの自然失業率の理論の実験だった。それによれば、インフレ率と失業率がともに上がるスタグフレーションの原因は、人々がインフレ予想をもっているためなので、まずやるべきなのは金利を上げてインフレを止めることだ。

不況の最中に金利を上げると失業率は上がるが、そのまま金利を下げないでインフレを抑え込み、インフレ予想がなくなれば物価は落ち着き、失業率も下がるはずだ、というのがフリードマンの理論だったが、政治的に危険なので、アメリカでも実験できなかった。

しかし1979年のイギリスでは社会が麻痺し、政権は追い込まれていた。インフレを止めないとストライキも止まらず、社会が崩壊する危機に瀕していた。サッチャーは「他に選択肢はない」(There is no alternative)という危機感から緊縮財政を選んだのだ。続きを読む

日本には緊縮財政が必要だ(アーカイブ記事)

日銀が利上げしても、円安と金利上昇が止まらない。この原因は、明らかに高市政権のバラマキ財政である。インフレの中で「物価高対策」と称して財政出動する政策は岸田政権から始まったが、これは政治家の選挙対策であってマクロ経済政策ではない。

高市氏は「長期金利が名目成長率より低いときは財政赤字を増やしてもいい」という「ドーマー条件」をよく持ち出すが、これは誤用である。この点をブランシャールが、2021年に日銀で行った前川レクチャーで明快に整理している。

ドーマー条件というのは和製英語で、これはマクロ経済学では動学的非効率性と呼ばれる。これは時間を通じた資源配分がパレート効率的ではないという意味で、長期金利をr、名目成長率をgとすると、動学的効率性の定義は

 r>g

だが、何をrと考えるかで不等号の向きが変わる。Mankiwなどの有名な論文以来、多くの実証研究ではrを資本収益率と考えたので、ほとんどの先進国は動学的に効率的とされたが、政府債務を考えるときは、rは国債金利と考えたほうがいい。図のように最近の実質金利(10年物国債)は日米欧でほとんどゼロである。

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もう一つの条件は、ゼロ金利制約があるかどうかだ。これがない場合には金融政策で総需要が調節できるが、名目金利がゼロになると金融政策がきかなくなるので、財政・金融政策の有効性について次のような3つの場合が考えられる:
  1. r>g>0:動学的に効率的
  2. g>r>0:非効率的・低金利
  3. g>r=0:非効率的・ゼロ金利制約あり
1の場合には財政赤字が民間投資をクラウディングアウトするので、緊縮財政が望ましい。政府投資の社会的収益率がrより高い場合を除いて、総需要は金融政策で調節すべきだ。これが標準的なマクロ経済学の想定している環境で、現在はそれに近づいている。

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政府がアクセルを踏んで日銀がブレーキをかける日本経済


● 日銀の利上げと市場の反応
  • 日銀が政策金利を0.75%に引き上げたが、市場では織り込み済みで反応は限定的。
  • 注目は上田総裁の会見での「今後の利上げ方針」の発言。
  • 円安や長期金利への影響を避ける発言が求められるが、バランスが難しい。

● 為替と経常収支の変化
  • 昔は円高を警戒していたが、今は円安が続いている。
  • インバウンドが回復したにもかかわらず、クラウド利用などでデジタル赤字が拡大し、サービス収支が改善しない。

● 国債市場と財政不安
  • アベノミクス期は日銀が国債を大量に購入していたが、今は購入を減らしている。
  • 誰が国債を買うのかという「需給不安」が長期金利上昇の要因。
  • 高市政権の大型経済対策がさらなる不安を招いている。

● 政治と経済政策のずれ
  • 高市政権はアベノミクスの継承を掲げつつも、実際は異なる財政ばらまきを実施。
  • 財政赤字を拡大させる「高圧経済論」には、経済学的根拠が乏しい。

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アゴラセミナー「日本病のカルテ:インフレ・円安から資産をいかに守るか」」

1970年代、イギリス経済はどん底でした。10%を超えるインフレ率と失業率が続き、バラマキ福祉で財政赤字は拡大し、労働組合のストライキで経済は麻痺してポンドは暴落し、成長率はマイナスになって英国病という言葉が使われるようになりました。



これは今の日本の状況と似ています。もう30年以上も経済の低迷が続き、インフレと円安が止まらず、政府債務は世界最大規模で、長期金利は急上昇を続けています。これは日本病ともいうべき状況で、みなさんの資産を守る上でも大事な問題です。

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企業の海外収益が国内に還元されない日本は「グローバル経済の植民地」

いまどうするか日本経済 (ちくま新書)
今週の金曜には日銀の政策金利が0.75%に引き上げられる見通しだが、本書も指摘するように今や政策金利には大した影響力がない。日本の企業は貯蓄超過で、金を貸す側だからだ。これを知らなかった黒田日銀は、大量にゼロ金利のマネーを供給したが、それは国内投資には回らなかった。

企業が貯蓄主体になったきっかけは1998年から始まった金融危機で銀行が不良債権を回収したことだが、不良債権処理が終わってからも企業は「内部留保」を厚くして危機にそなえるようになった。次の図のように企業はこの25年間、一貫して貯蓄超過である。

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非金融法人企業の資金循環フロー(資金循環統計)

金を借りて投資するはずの企業が金を貸している(最大の借り手は政府)という状況は世界に類のないもので、日銀にも理解できなかった。黒田総裁はこれを無視してマネタリーベースを500兆円以上に拡大したが、上の図のように国内投資は増えなかった。増えたのは海外直接投資である。

こういう指摘は今年の良書ベスト10であげた経済書と同じだが、海外収益が最終的に配当やキャピタルゲインとして国内に還元されれば悪くない。かつて大英帝国は、海外の植民地に投資した企業の配当で史上最大の栄華を築いた。

日本の問題は、海外収益が国内に還元されないことだ。上場企業の株主の6割が外国人で、株式売買高の7割が外国人株主なので、日本はグローバル経済の植民地になっているようなものだ、と本書はいう。この最大の原因は、家計が極端にリスク回避的で、金融資産の半分以上を実質マイナス金利の預貯金にしていることだ。続きを読む

「英国病」のスタグフレーションがサッチャー首相を生んだ(アーカイブ記事)

マーガレット・サッチャー: 政治を変えた「鉄の女」 (新潮選書)
高市首相の経済政策は、海外メディアがそろって指摘するようにサッチャー首相とは対極にある。サッチャーはその11年の任期を通じて「積極財政」という言葉を使ったことがない。彼女は徹底的な緊縮財政でイギリスを「英国病」から救ったが、それは新自由主義と呼ばれるほど普遍的な思想ではない。

本書も指摘するように「サッチャリズムは20世紀後半にイギリス社会が直面した状況から生み出された、すぐれて歴史的な産物」である。のちにマネタリズムと呼ばれる政策を彼女が実行したのはフリードマンの思想を理解していたためではなく、1970年代に英国病が完全に行き詰まった状況で、他に手段がなかったためだ。

その症状は10%を超える失業率とインフレで、その原因は財政赤字だった、この点は日本と似ているが、最大の敵は長期にわたってストライキを繰り返す労働組合、特に炭鉱労組だった。この点では保守党内の意見は一致していたが、違うのは手法だった。

ヒース首相は保守党の本流でイギリス的な紳士だったので炭鉱労組との対決を回避し、財政出動で失業を止めようとしたが、これによってインフレが悪化し、スタグフレーションに陥った。石油危機でイギリス経済が崩壊する大混乱の中で、党内の異端だったサッチャーが「反ヒース」の急先鋒としてかつぎ出されたのだ。

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今年の良書ベスト10

世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ (文春新書 1478)
  1. 齋藤ジン:世界秩序が変わるとき
  2. 河野龍太郎:日本経済の死角
  3. Ray Dalio: How Countries Go Broke
  4. トマ・フィリポン:競争なきアメリカ
  5. 藤代宏一:株高不況
  6. 池本大輔:サッチャー
  7. 河浪武史:円ドル戦争40年秘史
  8. 家近亮子:蒋介石
  9. レイ・カーツワイル:シンギュラリティはより近く
  10. 渡辺努:物価を考える
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