高市政権と日銀の迷走でインフレと「日本売り」が始まる

高市総裁は東京で開かれたサウジの投資セミナーで「いいから黙って全部私に投資して!」と呼びかけた。

しかし国債の買い手はなく、長期金利は1.8%台に乗り、リーマンショック以来の水準になった。この直接の原因は日銀の植田総裁が今月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に上げるとほのめかしたことだが高市政権が補正予算で11兆円の国債発行を決め、需給が悪化した影響も大きい。



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「追われる国」の経済学(アーカイブ記事)

「追われる国」の経済学―ポスト・グローバリズムの処方箋
リチャード・クーは日本では忘れられた存在だが、彼の「バランスシート不況」理論はクルーグマンやサマーズなどが高く評価し、日本でも日銀の白川元総裁などが評価している。現在の観点から興味あるのは、黒田日銀が過激な円安誘導で産業空洞化をもたらしたと指摘している点だ。

昔の貿易理論では為替レートは購買力平価で決まり、貿易赤字の国の通貨は弱くなると考えたが、現実には大きな貿易赤字を抱えるアメリカのドルが世界の「一強」になり、ユーロも円も弱くなっている。「正しい為替レート」を決める理論は存在しないが、その動きを説明するのは実質金利の均等化である。

日本の長期金利は2010年代、実質金利でみると、ほぼ一貫してマイナスだった。アメリカの実質金利はこれより2~3%高かったので、投資家は円を借りてドルで投資する。黒田日銀はゼロ金利の円資金を大量に供給したが、これがドルに転換され、円安が進んだ。

この結果、アメリカの「長期金利ー予想インフレ率」に連動して、ほぼゼロ金利だった日本の長期金利が上がった。2021年までは急速なインフレに金利上昇が追いつかなかったので、実質金利は日>米だったが、ウクライナ戦争のころから米>日になって金利差が拡大し、ドル高になった。

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日米実質金利差とドル円レート(株式マーケットデータ)

ゼロ金利によって投資機会の少ない日本から、資金需要の旺盛なアジアの新興国に直接投資が増え、製造業の空洞化が起こった。これは黒田総裁にとっては意図せざる結果だった。彼は円安で輸出が増え、景気がよくなると思ったのだが、その逆に貿易赤字になり、円安が続いても企業は帰ってこなかった。

*この記事は2023年に刊行された英語版によるもの。

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「失われた2010年代」の原因は黒田日銀の円安誘導だった

世界経済の死角 (幻冬舎新書)
1990年代以降の日本経済の長期低迷を「失われた30年」ということがあるが、これは正しくない。GDPが増えない最大の原因は高齢化で生産年齢人口が減ったためで、労働人口で割ると1990年代から2000年代までは増えている。G7諸国と比べても、リーマン前の2008年までは特に低い水準ではない。

ところが労働人口あたりGDPは2010年ごろ頭打ちになり、安倍政権の2013年以降にG7で最低になって今に至っている。つまりアベノミクスが2010年代の停滞をもたらしたともいえる。その原因は何だろうか。

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河野龍太郎氏は、安倍政権の始まる前から「過剰な量的緩和とゼロ金利は金融市場をゆがめる」と警告していた。このような金融抑圧は円安で交易条件を悪化させ、資本流出をまねくからだ。しかし日銀は円安誘導をおこない、1ドルは80円から120円に大幅に下がった。

黒田総裁は「円安で貿易黒字になり、日本経済は復活する」と言ったが、貿易収支は赤字になった。1ドル120円になっても、日本経済は成長せず、産業空洞化が激しくなった。製造業はゼロ金利で借りた資金をアジアに投資し、アジアに売って(海外との連結決算では)高い収益を上げたが、国内の賃金は上がらなかったのだ。

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日銀が利上げを見送ると「政治的景気循環」がやってくる

インフレなのに事業規模で42.8兆円、真水で18.3兆円という「平時」としては最大の補正予算が閣議決定された。



補正予算というのは文字通り当初予算では足りない経費を補正するもので、当初予算が116兆円なのに補正が43兆円というのは、高市首相も認めるように異常なバランスである。

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需給ギャップはほぼゼロだから、真水だけでもGDPの3%が上乗せされる。他方、高市内閣は絶好調なので、年末年始にも解散・総選挙があるといわれる。日銀の植田総裁はこういう政治的な空気に敏感なので、12月の利上げはないだろう。こういう現象を政治的景気循環と呼ぶ。

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ヘリコプターマネーでインフレは起こせる(アーカイブ記事)

金融政策に未来はあるか (岩波新書)黒田日銀の大規模な量的緩和は「黒田バズーカ」などと呼ばれたが、空砲だった。その原因は、本書58ページの次の式でわかる。FTPLで政府と日銀の統合B/Sを考えると、物価は「名目政府債務/実質政府財源」すなわち

  M+B
P= ―――
   S

で決まる。ここでPは長期的な均衡物価水準、Mはマネタリーベース、Bは市中で保有されている国債の評価額、Sは政府の財源(プライマリー黒字の割引現在価値)である。日銀券も国債も統合政府のバランスシートでは債務だから、日銀がBを買ってMを増やしても、同じだけBが減るので政府債務(M+B)は変わらず、物価Pは上がらない。これが日銀の「異次元緩和」が失敗した原因である。

財政バラマキでインフレは起こせる

黒田総裁は、こんな単純な関係に気づかなかったのだろうか。おそらくそうではないだろう。彼の脳内には、統合政府債務(M+B)が中央銀行のオペレーションで動かせるという伝統的な金融理論があったと思われる。

上の式でBは金利で割り引いた現在価値なので、日銀が国債を買うと金利が下がってBが上がり、左辺の物価Pが上がるのだが、ゼロ金利になるとそれ以上は金利が下がらないので、物価は上がらない。

今の日銀のオペレーションでは市中銀行の保有している国債を買うが、それをしないで日銀がヘリコプターから直接、日銀券をばらまけばいい、というのがフリードマンの1969年の提案である。日銀が国債を買わなければ、Mだけが増えて上の式の分子が増え、Pが上がる。これは過激なインフレ税である。

もちろんヘリコプターというのは冗談で、実務的には財務省が政府紙幣を発行して、日銀が買えばいい。これは市中に出ないのだから、政府と日銀だけが知っている「1兆円札」のようなものでいい(クルーグマンは1兆ドルコインを提案した)。それを日銀券に替えて政府が給付金を配れば、Mだけが増えてBは減らない。

だから財源は本質的な問題ではない。インフレの中で財政バラマキをやったらインフレが起こることは確実だから、高市政権の「積極財政」はヘリマネの一種だ。問題はそれをどうコントロールするかである。続きを読む

インフレ税を実現するには「財政と金融の協調」が必要だ

インフレ税の一つのリスクは、国債の暴落である。日本国債の価格は過大評価されており、「国債バブル」が崩壊すると長期金利が上がり、日銀がそれを引き受けて通貨を大量に発行するとハイパーインフレが起こる――というホラーストーリーはよくあるが、それを具体的にシミュレーションした論文は少ない。

Del Negro & SimsはFTPL(物価水準の財政理論)で、インフレ税をシミュレーションしている。すべての経済主体が合理的である(予想がその通り実現する)と仮定すると、金融市場では何も起こらない。たとえば物価が200%になっても、名目金利も200%になるケース(Baseline)では国債の実質価値は同じなので、中銀のバランスシートは毀損しない。

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インフレ税のシミュレーション(縦軸はインフレ率)

しかし投資家の予想が振動すると実質金利が上がり、中央銀行が物価をコントロールできない「爆発的経路」に入る。振動パラメータθπが2以上の場合にはインフレ率は2500%以上になって名目金利も発散し、中銀の実質資産はゼロに近づく。もちろんこれはFTPLの超合理的な世界で、現実には途中で止まるだろうとシムズも述べている。

日銀は2%のインフレ目標にも四苦八苦している状況だから、3%のインフレを実現するには政府と日銀のアコードを更新する必要がある。インフレ率が3%に満たない場合には政府が永久国債を発行し、日銀がそれを無制限に引き受けて通貨を供給すればよい。この場合、インフレと金利上昇が上の図のように暴走するリスクがあるので、それをコントロールするには、財政と金融の協調が必要である。

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高市政権の「隠れたインフレ税」の盲点

今年度の税収が初めて80兆円台となる見通しだ。昨年度の75兆円から5兆円以上の増収だが、これは当たり前である。政府支出や公共料金は名目ベースで固定されているが、たとえば消費税収は物価が上がると増えるので税収は上がるのだ。これがインフレ税である。

ここ5年、財政収支が改善した最大の原因は、島澤諭氏も示すようにインフレ税である。2020年を100とする消費者物価指数でみると、今年10月は112.7。つまりこの5年間に政府の実質債務が約13%減ったのだ。税収面でみても、2020年度から25年度までに税収が約60兆円から20兆円も増え、財政赤字が減った。



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バラマキ財政で政府債務を踏み倒す「インフレ税」がやってきた

高市政権の補正予算は、経済対策ではない。インフレ率が3%で需給ギャップがプラスのとき、21.3兆円もの景気刺激策をとる国はない。中身は自民党や野党の要求した補助金や減税を寄せ集めた財政バラマキである。



高市氏は「物価高対策」だというが、物価を下げると言ったことがない。政府支出は名目額で決まっているのに対して、物価が上がると消費税収が増えるので税収が増え、財政赤字が減る。

2020年から今まで物価は12.7%上がったので、税収は14.6兆円も増えた。これがインフレ税で、すべての国民への一律課税になる。そのしくみをnano banana proに図解してもらった。


nano banana pro

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浜田宏一氏に何が起こったのか


アベノミクスの生みの親ともいわれる浜田宏一氏は私の大学時代のゼミの教官だが、このごろ高市政権を批判する発言を繰り返している。


話の内容は標準的なマクロ経済学と同じで「インフレのとき財政赤字を増やすと物価がますます上がる」とか「日銀は利上げすべきだ」とか常識的なものだが、わからないのは彼がなぜ理論的にも経験的にも成り立たない(ほとんどの経済学者が反対した)リフレにあれほどこだわったかである。

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日本国債がデフォルトする可能性はあるか?

いまだに国会では「日本国債は自国通貨建てだからデフォルトしない」とか「CDSプレミアムが低いから大丈夫」といった幼稚な議論がおこなわれているが、財政破綻は形式的なデフォルト(政府が債務不履行を宣言する)だけではない。チャットGPTとnano banana proに整理してもらった。

Q. 日本政府がデフォルトする可能性はありますか?

GPT: 可能性はゼロではないがきわめて低い、というのが経済学的な結論です。ただし日本特有のリスク構造があるため、「絶対にない」とも言い切れません。理由を体系的にまとめて図解しました。


nano banana pro

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