人工知能の哲学入門

人工知能の哲学入門チャットGPTを「生成AI」と呼ぶのは、違和感がある。それは私が40年ぐらい前に取材した人工知能とまったく違うからだ。当時は多くのエンジニアが本当の「知能」をコンピュータで実現することをめざしていた。

通産省が1981年に第5世代コンピュータで開催した国際会議には、世界から企業や有名人が招かれたが、電機産業で世界を制覇した日本が人工知能でも覇権を握ると恐れる人が多かった。それが私の提案したNHK特集のオープニングになる予定だった。

翌年できたICOT(新世代コンピュータ技術開発機構)には電機メーカーのエリートが集まり、自然言語処理の研究開発を始めた。その方法論は単純明快だった。外国語教育のように、文法と単語をコンピュータに教えればいいのだ。文法理論はチョムスキーの生成文法で確立していたので、あとは辞書の「知識ベース」をつくればいいはずだった。

ところが何年たっても成果が出ない。そのうち私は大阪に転勤になり、番組プロジェクトは自然消滅してしまった。あれほど大きな期待を背負ったICOTが、10年後には試作機とパズル解きのゲームしか残さないで解散した。

当時その挫折の原因は謎だった。人工知能の指導者だった長尾真氏に「何がわからないんですか?」ときくと「何がわからないのかがわからない」と答えた。その原因は、今となっては明らかだ。彼らの立てた問題が間違っていたのだ。続きを読む

れいわ新選組はなぜ若年フリーターに受けるのか

このごろTikTokを開くと、必ず山本太郎の動画が出てくる。それもれいわ新選組の公式サイトではなく、匿名の支持者の投稿だ。大半は山本の街頭演説などを切り抜いただけだが、4万8000の「いいね」がついている。

@chigasaki_sarry_chan #れいわ新選組 #山本太郎 #増税ダメ絶対デモ ♬ オリジナル楽曲 - 茅ヶ崎サリーちゃん

おかげでフジ・サンケイグループの政党支持率調査では、30代でれいわ新選組が14・4%で国民民主党に次ぎ、自民を上回った。NHKの調査でも、若年層では第3党である。

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GAFAMのグローバル独占は「テクノ封建制」か

テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。(集英社シリーズ・コモン) (集英社学芸単行本)
資本主義が「新しい中世」に向かっているというのは新しい話ではない。田中明彦『新しい中世』は主権国家中心の国際秩序がインターネットで掘り崩され、国境を超えるグローバル資本主義が生まれていると述べた。

本書も似たような認識から始まるが、それをテクノ封建制と呼ぶ。なぜそれが資本主義ではなく封建制なのか、という問題についての答は曖昧だ。資本主義の原理が利潤なのに対して、封建領主が取るのはレント(地代)だというが、資本主義にもレントはある。

GAFAMのような独占企業の利潤は独占レントだから、競争的な利潤とは違って独占が続く限り消えない。このように企業集中度が高まる傾向は2000年代以降、世界共通に観察されている。それはインターネットがグローバルな規模の経済を実現したからだ。

電力や電話のような独占は物理的インフラに依存しているので独占は国内に限られるが、インターネットはインフラを選ばないので、グローバルな独占が可能になる。たとえばアマゾンの固定費用(技術開発費)はユーザーが増えても一定なので、世界にユーザーが増えれば増えるほど限界費用(単価)は小さくなり、最適規模は無限大になるのだ。

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冷戦の終わり以来最悪の安全保障危機

ヨーロッパは冷戦の終わり以来もっとも暗い一週間を過ごした。アメリカのトランプ大統領が一方的にウクライナ戦争の終結を宣告したからだ。

これが本当にアメリカのヨーロッパからの撤退を意味するのか、またヨーロッパ各国がどう対応するかはまだわからないが、それが一つの時代の終わりを告げたことは確実だ。

今ヨーロッパは、大きな安全保障の危機に直面している。ウクライナが切り捨てられ、アメリカがロシアと和解に向かう中、NATOの信頼性が揺らいでいる。これに対し、ヨーロッパは軍事費を増やし、独自の防衛戦略を構築する必要がある。

しかし、意思決定の遅さや財政的な制約が課題となっている。短期的にはロシアへの制裁強化やウクライナ支援を進めるべきだが、長期的には軍事的自立を目指し、財政改革や防衛力強化を行う必要がある。ヨーロッパがこのまま防衛力を強化しなければ、ロシアの脅威に対して無防備になり、国際社会での影響力も低下するおそれがある。

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インフレが加速しているとき、バラマキ減税をやってはいけない

1月の消費者物価指数は総合で4%、コアCPIで3.2%の大幅な上昇となりました。特に食料品の値上がりが大きく、21.9%となりました。食料品の値上がりが目立ち、米類は70.9%の上昇で、4か月連続の過去最大更新という歴史的な高騰となっています。

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大乗仏教とイスラム神秘主義を「脱構築」でつなぐ哲学的アクロバット

コスモスとアンチコスモス: 東洋哲学のために (岩波文庫 青 185-5)
井筒俊彦は一般にはイスラム学者として知られているが、本人はこのレッテルをきらい、「言語哲学者」と自称していた。事実イランから日本に帰国した1980年代以降の研究の重点は、大乗仏教に移っていった。

本書の第一論文は、大乗仏教の完成された形態である華厳経スーフィズム(イスラム神秘主義)とつなぐ大胆な試みである。それが成功しているのかどうか私にはわからないが、井筒以外には不可能な離れ業であることは間違いない。

ここで井筒は華厳経の事事無礙(あらゆる事象が互いに関連・融合し、障害なく自在に関わり合い調和する世界)がスーフィズムの哲学と本質的に同じだという。もちろん一神教のイスラムは、教義としては仏教とまったく違うが、その根底に同じ「東洋哲学」があるという。

そして両者に通底する哲学には、現代的な意義があるという。それはニーチェ以降の西洋哲学が逢着した行き詰まりを――デリダの言葉でいうと――脱構築(井筒は「存在解体」と訳す)する可能性をもっているからだ。

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ウクライナ戦争の突然の終わり

アメリカのトランプ大統領は19日、Xに次のような投稿をした。


ウクライナのゼレンスキー大統領は戦争を開始してアメリカに3500億ドルの支出をさせた。アメリカはヨーロッパより 2000億ドルも多く 負担しているが、見返りはない。

ゼレンスキーは選挙を実施せず、ウクライナ国内で支持率が低下している。アメリカからの支援金の 半分が行方不明 になっている。バイデンを「手玉に取っている」ゼレンスキーは独裁者だ。

トランプがウクライナをプーチンに売り渡すことは予想されていたが、これほどあからさまな形でプーチンの言い分を丸のみし、ウクライナに全面的な譲歩を求めるとは思わなかった。ロシアには何の譲歩も求めず、いま占領しているウクライナ東部をロシアの領土にする形で停戦するのだろう。

このような全面的譲歩が何をもたらすかは、1938年のミュンヘン会談で歴史の教訓となっている。100点満点の結果を得たプーチンは、トランプのいるうちにウクライナに傀儡政権をつくって全土をロシアの領土としようと考えるだろう。

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国民民主党の所得減税案で納税者は半減し、年金受給者はほとんど無税になる

国会では、予算案の修正をめぐって与野党協議が続いている。このうち日本維新の会は「高校無償化」を来年度から実施することで折り合う(予算案に賛成する)見通しだが、国民民主党は基礎控除を引き上げる交渉を続けている。

昨年、自民党税調は年収123万円まで引き上げる案を提示したが、国民民主は納得せず、18日にも新提案が政府・与党から出る見通しだ。

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トランプ大統領が日本の消費税に「相互関税」?

アメリカのトランプ大統領が、輸入品に関税をかけている国には相互関税をかける方針を打ち出した。その調査対象として、ヨーロッパの付加価値税(VAT)や日本の消費税も含まれていることがわかった。

相互関税とは?

  • トランプ大統領が「相互関税」政策を発表し、特定の国に高関税を課す方針を打ち出した。
  • 単なる関税だけでなく、非関税障壁(規制・商慣行など) も対象とされる。
  • アメリカの貿易赤字が多い国が特に調査対象になり、日本や韓国が名指しされた。
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高額療養費制度は過剰医療や延命治療の温床

厚生労働省は高額療養費制度の負担増について見直す方針を決めた。これは命にかかわる抗癌剤などの負担が軽減される一方、無駄な延命治療につながるとの批判も強い。

高額療養費制度とは?

  • 医療費が一定額を超えた場合に、超過分を公的医療保険が補助する制度。
  • これにより、患者は高額な医療費を支払う必要がなくなり、経済的負担を軽減できる。1ヶ月300万円の抗癌剤も、保険適用になれば以下のような負担額で使える。
  • 生命にかかわるリスクを軽減することは保険医療のコア機能。窓口負担を増やして高額療養費制度に重点を置くべきだが、現状は過剰医療の温床になっている。
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