日本のエンタメをだめにしたジャニーズ事務所は解散すべきだ

ジャニーズ事務所をめぐって「タレントに責任はない」とか「会社がつぶれるとタレントが路頭に迷う」とかいう同情論があるが、私は事務所は解散すべきだと思う。ジャニー喜多川の性犯罪に事務所は全責任を負う。法人に生存権はない。

ジャニーズ所属タレントのCMを打ち切る動きが広がっているが、テレビ局も所属タレントを使うのをやめるべきだ。ただしタレントが事務所をやめて独立すれば問題ない。タレント個人に責任はないからだ。


J-CASTニュースより

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洋上風力の入札ルールはなぜ変更されたのか

秋本真利議員の入札汚職は、贈収賄事件としては単純明快だ。国会議員が収賄で逮捕されるのは珍しく、鈴木宗男以来、21年ぶりだという。ただこの事件でわからないのは、第2ラウンドの入札ルール変更で、日本風力開発が有利になったのかという点である。



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洋上風力汚職 秋本真利の次の検察のターゲットは誰か

秋本真利議員が洋上風力の入札不正にからむ受託収賄の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。これ自体は予想されたことだが、こんな小物が入札ルールの変更なんかできるはずがない。

問題は追及が「本丸」まで行くかどうかである。検察の次のターゲットは誰か。この経緯を振り返って考えてみよう(肩書きはいずれも当時)。



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中世哲学が近代科学を生んだ

中世哲学入門 ――存在の海をめぐる思想史 (ちくま新書)
福島の処理水をめぐる議論の中で、科学的データで追い詰められた反原発派がよく使う言い逃れに「科学に絶対はない」というのがある。トリチウムが「生体濃縮」する可能性もある。サンプル以外の水に未知の放射性物質が含まれている可能性もゼロではない。

その通りである。科学に絶対はない。それは経験則にすぎないので、どんな可能性も論理的にはゼロではない。太陽が今日まで昇っても、あす絶対に昇るとは断定できないのだ。これはヒュームの問題としてよく知られているが、中世哲学でも、存在の一義性が重要な問題だった。

神は唯一の存在なのか。その普遍性は個物に先立つのか。ここで普遍を先天的な実在と考える実在論と、個物の集合体の名称と考える唯名論は、根本的な世界観の違いである。通説では「普遍論争」を通じて、ドゥンス・スコトゥスなどの実在論に対立したオッカムの唯名論が、近代科学への道を開いたと理解されている。

しかし著者はそうではないという。近代への道を開いたのは、普遍が個物に先立つと考えたスコトゥスのほうだった。中世哲学を前近代的な「スコラ神学」と考えるのは誤りで、それはカントの観念論で完成したのである。

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債務償還費を廃止して「永久国債」を発行すれば財源が生まれる

来年度予算の焦点となる防衛費の増額4兆円をめぐって、一般会計の債務償還費を廃止して財源にあてる案が出ている。これは国の一般会計歳出の中で「国債費」の一部として計上されている費用で、2023年度予算では16兆7561億円である。


2023年度予算(財務省)

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「軍事革命」が近代科学を生んだ

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この投稿が炎上しているが、その発火点は「軍事研究が学問だとさ」という大石雅寿氏(国立天文台准教授・学術会議正会員)の投稿である。ここには軍事の蔑視だけでなく「技術は科学ではない」という理学部系によくある思い込みがあるが、これは誤りである。科学は本質的に技術なのだ。

知識経済の形成――産業革命から情報化社会まで
学問(エピステーメー)と技術(テクネー)を別の知識と考えるのは、古代ギリシャから同じである。中国では印刷術も火薬も発明されたが、産業革命は起こらなかった。それは学問と技術がまったく別の知識だったからだ。

学問の担い手はエリートで、その条件は古典を暗記することだったが、技術は職人が経験的に蓄積した知識で、体系化されなかった。ヨーロッパ中世でも最高の知識人は、聖書やアリストテレスを読んだ聖職者だったので、オリジナリティは重視されず、イノベーションには価値がなかった。

それを変えたのは、16世紀の植民地戦争と軍事革命だった。学問で戦争に勝つことはできない。特にアジアや新大陸を支配したイギリスにとっては、古典は役に立たなかった。大砲や爆弾などの重火器が生まれ、異民族と戦うには実証的な知識が必要になった。

しかし観察や実験だけで科学はできない。新しいパラダイムが生まれるには、聖書とは違う理論が必要だった。ニュートンは神学者であり、『プリンキピア』は神の構築した宇宙の秩序を数学的に説明するものだったが、結果的には天動説よりはるかに正確に天体の運行を予言した。

その数学理論は、大砲の軌道計算に使われた。相手をねらう鉄砲とは違って、重火器は軌道計算ができないと役に立たない。天文学が軍事技術に応用されたことで、各国は競って科学技術に多くの人材を動員し、近代科学が飛躍的な発展を遂げたのだ。

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バラマキ財政は「生産的な政府支出」か

雇用、金利、通貨の一般理論 (日経BPクラシックス) (NIKKEI BP CLASSICS)
税収が史上最高になり、コロナ補助金が10兆円も余ったので、ガソリン補助金の延長のような愚劣な財政バラマキが復活している…と切り捨てるのは簡単だが、愚劣ではない財政政策とは何かと問われると、答は簡単ではない。本書の次の言葉は有名である。

もし財務省が古い瓶に紙幣を詰めて廃鉱の適度な深さに埋め、それを町のゴミで地表まで埋め立て、民間企業に紙幣を再び掘り起こさせれば、もう失業は起きないだろうし、そのおかげで社会の実質所得と資本資産も、おそらく現状をはるかに上回る水準になるだろう。(本書p.201)

もちろんこれは冗談だが、当時は失業保険がなかった。紙幣を瓶に埋める代わりに失業者に配るのが失業手当だと考えると、それほど荒唐無稽な話でもない。失業は人的資本の浪費なので、不完全雇用では財政赤字は生産的なのだ。

これがMMTの元祖とされるラーナーの機能的財政論で、ブランシャールも認めるように、意外に重要な指摘である。新古典派的な純粋財政論では、需要不足が長期にわたって続くことはありえないので、財政赤字は長期的にはゼロと想定しているが、2000年以降の日本経済では需要不足(財政赤字)が続いてきた。

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「ガソリン・ポピュリズム」でよみがえるバラマキ財政の誘惑

国民民主党の玉木代表が、毎日しつこくガソリン補助金の延長を主張している。


自民党も9月末で終わる予定だった石油元売りへの補助金を今年いっぱい延長する方向で検討している。これはコロナ収束で使い残した予備費を使うもので、2022年4月に補助上限をリッター当たり35円に増額。170円を超える場合は、超過分の2分の1を支援した。

これによって補助金は総額6.2兆円が使われたが、これはマクロ経済的にはまったくナンセンスである。もとはといえば今回のインフレの原因は、コロナでばらまいた100兆円以上の補助金だから、それを止めるには緊縮財政が必要なのだ。

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日本の政治に残る「寄り合い」の伝統

忘れられた日本人 (岩波文庫)
処理水放出をめぐる騒動で不可解なのは、福島県も地元市町村も了解したのに、福島県漁連という何の権利もない団体が、最後まで粘ったことだ。その組合員は約1300人。これを無視して海洋放出しても、法的には何の瑕疵もないのだが、東電は最後まで説得しようとした。

結果的には、県漁連が反対のまま放出したので意味がなかったようにみえるが、そうではない。あらゆる手をつくしたと漁民が納得することが大事なのだ。今回に限らず原子力行政では、原発再稼動に県知事の了解を求めたり、再処理工場への使用ずみ核燃料搬入に地元市町村の了解を求めたりして、地元の意向が異常に強い。

すべてのステイクホルダーが拒否権をもつのは日本の政治の特徴だが、その原型は意外に古い。本書は全国の村を歩いた民間伝承の記録だが、その重要なテーマは寄り合いである。たとえば著者が村の古文書を貸してほしいと頼むと、村の寄り合いで協議するという。2日たっても返事がないので、寄りあいに同席すると、朝から晩までいろいろな話をしている。

そのうち「この先生も悪い人ではないみたいだから、一つ貸してあげてはどうか」と年寄りがいうと、みんながうなずき、著者が借用証を書くと、年寄りがそれを読み上げて「私が責任を負うから」といって、古文書を渡した。そこまでに3日かかった。

どこの村でも寄り合いの様子は同じで、一つの議題を話し合って多数決を取ることは決してない。いろいろな議題や世間話が何日もとりとめなく続き、全員一致するまで同じ話題が繰り返される。議長は「年寄り」と呼ばれる60歳以上の老人だが、彼が決めるわけではない。

これは現代の企業でもみられる会議の風景だが、意外に普遍的な現象である。クラストルの調査した「国家に抗する社会」でも、原初的な共同体に国家権力はない。首長(年寄りに相当)はまとめ役で、権力をもっていない。まれに権力を行使する首長がいると排除され、殺される。

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「日本化」する中国経済

20230826_DE_US大手の不動産会社、恒大集団がアメリカで破産法を申請し、中国バブルの崩壊も近いといわれる。負債総額は3400億ドル(約50兆円)。最大手の碧桂園も今月、ドル建ての社債2250万ドルの返済を延期し、危機が迫っている。

今週のEconomist誌は「中国経済が日本化している」という特集を組んでいるが、その症状は日本の1990年代より深刻だという。当時の日本人の所得はアメリカ人の60%だったが、今の中国は20%。それに対して債務は当時の日本に匹敵するので、バブルが崩壊すると中国経済が壊滅するリスクが大きい。

中国は2008年以降の世界金融危機に対しては、4兆元の景気対策で経済を支えたが、これによって不良債権が積み上がった。2020年のゼロコロナ政策の失敗でバブルが崩壊し始めたが、これに対して十分な財政支出をしていない。習近平が緊縮的な姿勢を打ち出し、財政赤字を3%以内に収めようとしているからだ。8月21日に発表された中国人民銀行の政策金利は3.55%から3.54%と、わずか0.1%しか下げなかった。

このような誤った政策の背景には、習近平の共同富裕政策がある。彼はアメリカとの戦争が避けられないと覚悟して軍備増強を最優先の目的とし、貧富の格差を拡大しないために、アリババのような成功した企業を規制し始めた。上司の命令に忠実な官僚を出世させるため、トップに正しい情報が上がらない。若年失業率も発表しなくなった。

かつて西側は中国が豊かになると民主国家になると期待したが、その期待は裏切られた。しかしその逆(独裁国家は貧しくなる)を中国は証明しつつある。それは日本にとっても望ましい未来ではない。

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