「電力ビッグバン」がもたらした「社会主義の崩壊」

6月から電気代が大幅に値上げされる。このうち東電の料金は、柏崎7号機が動く前提で低く抑えられているが、原子力規制委員会がOKを出さないので、今年の冬には再稼動が間に合わないかもしれない。その場合、この値上げ幅はさらに大きくなる。



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フリードマンはリフレ派だったのか

このツイートに対して著者から公開質問状をいただいた。6回もあるので全部はお答えできないが、要点だけ。


まずこの「チャンネルくらら」を私は見ていないし、見る気もありません。私が読んだのはKindle Unlimited版です。「ネトウヨ」などの表現で気分を害したのならおわびしますが、いま読み返しても私の評価は残念ながら同じです。

私が「フリードマンは日本経済なんか論じてない」というのは、最近のリフレ論争の話で、これは彼が2006年に死去したのだから当然です。柿埜さんが引用しているWSJのコラムは1997年のもので、そこでフリードマンが論じているのは、1990年代の金融緩和が遅きに失したという話です。

これは結果論としては(日銀も含めて)ほとんどの専門家が認めることで、別にリフレ派だけが指摘したわけではない。リフレ派というのは日本ローカルのアマチュア集団であり、フリードマンが「私はリフレ派だ」と言ったこともない。

ただリフレをゼロ金利でも通貨供給を増やせばインフレになるという主張と定義すると、フリードマンの主張には日本のリフレ派と共通点があります。そしてそれが、多くの点で正しかった彼の唯一の誤りでした。

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子供に増税する「財政的な幼児虐待」で子供は増えるのか



政府の少子化対策の骨組みが徐々に明らかになってきた。読売新聞のまとめによると、最大の歳出は児童手当の増額で、3人目以降を月3万円に倍増する。各省の支出をこども金庫という特別会計に集め、歳出は約3兆円である。


読売新聞より

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「2024年台湾有事」はあるか

習近平・独裁者の決断
ロシアがウクライナを侵略するよりずっと前に、中国は台湾を侵略する予定だった。1950年6月4日に中国は台湾を攻撃する準備をしていたが、その2日前に北朝鮮が韓国を侵略し、朝鮮戦争が始まった。スターリンは毛沢東に北朝鮮を支援するよう命じ、台湾攻撃は延期された。

朝鮮戦争さえなければ、今ごろ中国は台湾を併合していたはずだが、中国はそれから73年も攻撃を延期してきた。その最大の理由は、アメリカとの戦力の差が大きかったからだ。その差が縮まった今、習近平が台湾攻撃をためらう理由はない、というのが2人の著者の一致した見方である。

昨年の共産党大会で胡錦濤以下の反対派を一掃した習近平にとって、今は絶好のチャンスである。石氏によると、台湾が領土ではないと思う中国人はいないという。反政府的な知識人でも、台湾が中国の領土であることは自明だと思っているので、台湾攻撃で国論が二分することはない。

西南交通大学学生悼念乌鲁木齐火灾逝者_10
白紙革命(Wikipedia)

むしろ昨年11月の白紙革命以来、国内情勢が不安定になっているので、矛先を台湾に向ける可能性がある。攻撃するとすれば、いつか。峯村氏によると、アメリカ大統領選挙で政治空白のできる2024年だという。

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中世ヨーロッパでセックスはなぜタブーになったのか

異教的中世
LGBT法案で同性愛が問題になっているが、これは近代ヨーロッパに固有のタブーである。日本にはセックスが恥ずかしいとか不浄だとかいう道徳観念は、まったくなかった。古事記には、おおらかな先祖の性行為が情緒ゆたかに描かれている。

ヨーロッパでも文字で残されている記録は聖職者の書いたものなので、性に関する強い禁忌が記されているが、民衆の行動はそれとはまったく違っていた。性道徳は、中世以降にキリスト教が作り出した権力装置だ――というのがフーコーの『性の歴史』である。

権力の問題を性という具体的な素材で描く発想はよかったのだが、ほどなくフーコーは性のタブーが中世ヨーロッパだけではなく、古代からさまざまな社会にあったことを見出す。これを一つのカテゴリーにくくることは困難で、まして西欧近代の「統治性」と結びつけることはできない。

しかし本書も指摘するように、フーコーの問題の立て方は逆だった。カトリック教会が信徒に強い性のタブーを強制したのは、彼らの性生活に介入するためではなく、キリスト教の道徳を移植するためだった。それは封建領主の武力なしにはできなかったが、領主も政治的秩序を維持するために異教的秩序を排除する必要があったのだ。

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広島サミットの「献花」に感じた違和感

広島サミットは、ウクライナのゼレンスキー大統領まで飛び入りで盛り上がった。特に印象的だったのは、G7の首脳が原爆慰霊碑にそろって献花した光景だが、私には違和感があった。



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防衛費の財源は「1兆円紙幣」で

アメリカ議会の債務上限問題は、デッドラインが近づいて緊迫している。今のままだと6月1日に連邦政府の債務が上限に達して国債が発行できなくなるので、バイデン大統領が予算を組み替えて債務を削減するか、共和党が債務の上限を引き上げるかしかないが、実はそれ以外に2つの「裏技」がある。

一つは合衆国憲法修正14条4項の「合衆国の法律で認められた公的債務の効力は争うことができない」という規定を使うものだ。これを使えば連邦政府は無限に借金できるので、上限を超えても国債を発行できる。サンダース上院議員などの左派は、これを使って今の予算のまま国債発行を続けるべきだと主張している。


もう一つは、連邦政府が国債の代わりに1兆ドル硬貨を発行し、これをFRBが買い取って資金を提供する方法だ。政府はFRBの発行したドルで行政サービスを続けられる。この硬貨は市場で流通しないので、政府紙幣でもデジタル信号でもいいが、今のところ連邦政府は否定している。


このうち日本にも応用できるのは、第二の方法である。いま国会で防衛費の財源が問題になっているが、これを解決するには増税も国債も必要ない。もし1兆円の財源が必要なら、政府が1兆円紙幣を発行し、それを日銀が買い取ればいいのだ。

これは現行法で可能で、2003年にスティグリッツが日本で提言した。紙幣は返済する必要がないので政府債務は増えず、金利もつかない。増税の必要もなく、防衛費は簡単にまかなえる――MMTは大喜びしそうだが、このアイディアには落とし穴がある。

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遺伝と文化のフィードバック・ループ

人間性の進化的起源: なぜヒトだけが複雑な文化を創造できたのか
進化は保守的なので、ほとんどの突然変異は淘汰され、普通は特定の器官が一方的に巨大になるような進化は起こらない。ところが動物の脳の大きさは過去4億年で100倍になり、しかも脳の大きい動物ほど繁殖しているようにみえる。

これは進化の歴史の中で特異な現象である。そこには脳を一方的に大きくするフィードバック・ループがあるのではないか、というのが、アラン・ウィルソンの「文化駆動仮説」である。これは

 脳が大きくなる
 →他の個体の行動をまねやすくなる
 →成功した行動をまねる個体が増える
 →脳の大きい個体が繁殖する

というループで脳が大きくなるという仮説である。著者はこれを霊長類で検証し、おおむね肯定的な結果を得た。それによると、脳の大きさと推論・計画・学習などの「一般知能因子」には相関があり、これは集団の大きさとも相関がある。

単純化すると、脳が大きいほど知能が高く、大きな集団で行動できるため、集団淘汰の中で生き残りやすくなる。とりわけ人間の脳は1.5kgもあって霊長類では最大で、集団の大きさも150人と最大である。その原因は、脳の主要な機能が社会的学習にあるからだと考えられる。

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「最大多数の最大幸福」は実現できるか

功利主義入門 ──はじめての倫理学 (ちくま新書)
経済学者の意見はバラバラだといわれるが、対立が多いのはマクロ経済学だけで、ミクロ経済学ではほとんど対立はない。むしろ経済学者とそれ以外の対立が大きい。たとえばエネルギー問題では、世界の3500人の経済学者が世界一律40ドル/トンの炭素税を提言したが、政治家には相手にされない。

その最大の原因は、経済学者が功利主義(utilitarianism)で考えるからだろう。「地球を守れ」とか「人類を救え」といった話は、普遍的な価値を想定しているが、経済学者は価値判断は主観的なもので、すべての人にとって望ましい価値は存在しないと考える。1.5℃目標もカーボンニュートラルも目的ではありえない。

経済学者の認める目的は、効用(utility)だけである。ベンサムはその原理を最大多数の最大幸福という言葉で表現した。これは一見するとシンプルな問題で、答を出すのも簡単である。全知全能の計画当局が人々の効用を知っていれば、その合計を最大化するように社会を設計すればいい。

すべての人命は同じように重いとすると、アフリカで餓死する子供の命も先進国の高齢者の命も同じである。アフリカのワクチン接種などの医療援助1兆円で、400万人の命が救えるという。1人あたりの命のコストは25万円である。

それに対して日本では、8万人のコロナ死者に120兆円以上のコストをかけた。1人15億円である。費用対効果で考えると、先進国でコロナ対策に金をかけるよりアフリカでワクチン接種をするコストのほうがはるかに低く、幸福を最大化できる。

ベンサムが最初に功利主義を適用したのも公衆衛生だった。当時のロンドンは衛生状態が悪く、1軒の家に50人以上が住み、ゴミや排泄物は道に捨てられていた。ベンサムはそれを解決する「保健省」を設立し、社会全体を計画当局が管理することを提言した。有名なパノプティコンも彼の提案だが、このようなパターナリズムは反発を受け、実現しなかった。

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ベンサムの描いたパノプティコン

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LGBT法案はなぜこんなに混乱しているのか

自民党総務会の合同部会で「幹部一任」されたLGBT法案は、16日にも国会に提出される予定だが、自民党内では反対派が多数なので、まだどうなるかわからない。なぜこんなにもめているのか。最初から経緯を振り返ってみよう。
  • 2016年:野党4党が「LGBT差別解消法案」を国会に提出
  • 2018年:野党6党が同じ法案を提出
  • 2021年:自民党が「LGBT理解増進法案」をまとめたが、国会に提出できず
  • 2023年:同じ法案の文言を一部修正して自民党の部会で幹部一任

この法案の特徴は、野党の議員立法で始まり、自民党の稲田朋美議員が「性的指向・性自認に関する特命委員会」をつくったことだ。このため自民党が了承すれば、ただちに国会に提出できる。野党は(参政党を除いて)賛成なので、19日からのG7サミットまでに法案を可決・成立させることも不可能ではない。

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