年金法案を改悪して「ネズミ講」を延命しようとする立民党

自民党も見送った厚生年金積立金の流用を立民党が提案して、年金改悪法案をさらに改悪する修正協議が行なわれている。この奇怪な法案の背景には、年金というネズミ講がボロボロになっている現状がある。



なぜ厚生年金を流用するのか。それは国民年金の赤字を穴埋めするためだ。国民年金は保険ではなく、金持ちも貧乏人も月額1.7万円とられる超逆進的な人頭税なので、当初から未納が多かった。

今は八代尚宏氏の指摘するように、国民年金(1号被保険者)の保険料納付率は44%に下がり、半分以上が未納・猶予である。特に就職氷河期世代は50代になり、彼らがあと10年で退職するころから800万人の無年金老人が出てくる。これをすべて生活保護にすると、一般会計で20兆円の赤字になる。これも現役世代の負担だ。

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金融危機をあおる流言蜚語はやめよう

長期金利の上昇が止まらなくなり、石破首相の「日本の財政はギリシャより悪い」を初め、いろいろな流言蜚語が飛び交っている。1990年代の経験からも、これがもっとも危険な金融危機の引き金である。その重要な例として、国会議員のツイートをあげておこう。


この「先日付けた近年の最高値」というのは「最安値」の誤りだが、それはともかく「日銀が内部留保を食い終わる」というのはデマである。直近のデータでは

 ・自己資本:約14兆円
 ・ETF評価益:約33兆円
 ・保有国債の評価損:約31兆円

なので、純資産は14+33-31=16兆円の資産超過である。日銀の資産評価は簿価(償却原価法)なので評価損は計上する必要がなく、「内部留保を食い終わる日も近い」というのは嘘である。

日銀が債務超過になるのは、利払いが受け取り利息を上回る逆鞘になった場合だが、今のところ日銀当座預金の付利は0.5%、長期金利は10年物で1.5%なので金利収入がある。2023年度の経常利益は4.6兆円、国庫納付金(金利差益)が2.2兆円と史上最高で、24年度の利益は半期で3.4兆円とそれを上回った。債務超過になることは考えられない。

百歩ゆずって日銀が債務超過になったとしても、中央銀行には通貨発行益という特権があるので、破綻(資金ぐり倒産)することはありえない。現にFRB(米連邦準備制度理事会)はここ数年、債務超過に陥っているが、ドルの信認はゆるがない。

図表(FRB、「債務超過」10兆円でもなぜ無風? 日銀への教訓)_DSXZQO4010015027102023000000

日銀は「政府の子会社」なので、その財務だけを取り上げて危機をあおるのは流言蜚語である。統合政府の支払い能力(solvency)が十分なら、政府が日銀を救済する手段はいくらでもあるのだ。問題は投資家が支払い能力に疑念を抱いて国債を大量に売り、それを日銀が買って通貨を大量に供給したときである。

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中華人民共和国は「支那」と呼ぶのが正しい

このごろ中国政府が日本の「中国銀行」などに文句をつけるようになったが、これは逆である。日本の「中国地方」という言葉は、山陽と山陰をあわせた地域の名称として明治時代から使われている。Chinaを中国と呼ぶようになったのは戦後である。


「支那」はマスコミでは昔から禁止で、このごろはFacebookでも削除されるが、根拠のないタブーである。その語源は5世紀ごろインドで中国を「シナ」と呼んだもので、このもとは「秦」だといわれる。中国には「漢」や「唐」などの王朝を超える地名がなかったため、シナやチャイナという呼称がヨーロッパでも使われた(今も使われている)。

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国債バブルが崩壊すると国民民主バブルが崩壊する

日米欧で同時に、長期金利が上がっている。特に30年物や40年物の超長期債の上昇が激しい。その明らかな節目は、4月2日のトランプ関税である。日本の金利は、関税の発表直後にやや下がったが、その後は大きく上昇し、今は30年物が3%を超えた。この半年で1%ポイント近く上昇したことになる。


図1(日本経済新聞)

これを価格(10年物国債先物)で見ると、2020年からほぼ一貫して下がっており、今の水準は20年前のサブプライム危機以来の水準である。

図2(Investing.com)

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政府債務比率とデフォルト確率は無関係

石破首相の「ギリシャ発言」で、超長期の国債市場が大きく動いたが、日本の財政がどこまで危ないのかについては諸説ある。よくいわれるのは日本の政府債務のGDP比が世界一高いという話で、首相はこれを「ギリシャより悪い」と表現したのだろう。

しかしギリシャというと世界の投資家が連想するのは、ユーロ危機で事実上デフォルトした事件である。2009年の政権交代で、財政赤字がGDPの4%だという前政権の数字が嘘で、実際はEU参加条件の3%をはるかに上回る15%だとわかり、投資家がギリシャ国債を投げ売りした。2012年に長期金利は30%になり、欧州の銀行は協調してギリシャ政府に対する債権を約50%免除した。

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ギリシャの長期金利(CEIC)

海外ファンドは、石破首相が日本政府のデフォルトについて秘密の重大情報をもっていると疑ったのだろうが、それは単なる失言だった。政府債務残高1323兆円という数字は大きすぎるので、その物差しとしてGDPをよく使うが、政府債務(ストック)をフローのGDPで割っても意味がない。ギリシャが債務免除を受けたときの政府債務はGDPの172%で、当時の日本の200%より低かった。

つまり債務残高とデフォルト確率は無関係なのだ。では何が財政リスクを示すのか。これについてはいろんな考え方がある。

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日本の財政は「ギリシャよりよくない」のか

石破首相の「日本の財政はギリシャよりよくない」という発言が話題になっている。



我が国の財政状況は間違いなく、きわめてよろしくないと。ギリシャよりもよろしくないという状況でございます。そして税収は増えているけども社会保障の費用も増えているわけで、そこにおいて減税を行い、財源は国債で賄うという考え方には賛同いたしかねる。

この「ギリシャよりもよろしくない」という言葉がロイター

"Japan's fiscal situation is worse than that of Greece at the height of the European debt crisis"

と尾ひれをつけて配信され、世界をかけめぐった。首相は「欧州債務危機の最中のギリシャ」とは言っていないが、海外ではギリシャというと2012年の事件(投資家が債務の約50%を帳消しにした)を連想する人が多い。

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「愛子天皇」はなぜ許されないのか

読売新聞が女系天皇に道を開く皇室典範の改正を提言して話題になっている。これは男系男子の皇室典範を守ると、皇室が絶えてしまうという心配によるものだ。

皇位を継承できる男性は秋篠宮親王、悠仁親王、常陸宮親王の3人しかいないが、秋篠宮は今年60歳、常陸宮は90歳になる。このままでは皇室が絶えるおそれがあるので、将来は女系天皇を認めようという読売の提言はもっともだ。

しかし与党だけでなく野党からも反発が出ている。その理由は、有識者会議で男系男子を守る方向で議論が集約され、今国会で結論を出すからだというが、そんなことは理由にならない。読売はまさにそのタイミングをねらって提言を出してきたのだ。

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「マイルドなインフレ税」が維持できれば年金問題は解決する

消費減税をめぐる議論は、意外な展開を見せてきた。当初は全野党が減税の大合唱で、石破政権も何か減税を打ち出さざるをえないだろうと思っていたが、今のところ森山幹事長も小野寺政調会長も「消費税は社会保障の貴重な財源なので減税できない」という正論で一致している。

他方、国民民主党は比例代表候補の「四人衆」が悪評サクサクで、失速ぎみだ。特に山本太郎氏と一緒にバラマキ路線を走っていた須藤元気氏を立候補させるのは「いよいよ国民民主もれいわと同じ無責任バラマキ路線か」という憶測を呼び、コア支持層が離反している。

根本的な問題は、国民民主党が掲げている社会保障改革と消費減税が矛盾していることだ。これから高齢化で社会保障支出は毎年3兆円増えるともいわれているのに、その財源となる消費税を毎年13兆円も減らしたら、社会保障財政は破綻してしまう(減税が2年で終わる保証はどこにもない)。

特に危機的なのは、未納が半分を超えてボロボロの国民年金である。これを放置すると、就職氷河期世代が大量に無年金老人になる。解決する一つの方法は、厚労省の年金改悪法案のように厚生年金積立金を流用することだが、これは自民党にも拒否された。野党がこれを復活しろと要求しているのは、とんでもない話である。



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日本にはなぜ「宦官」がいなかったのか

宦官 改版 側近政治の構造 (中公新書)
読売新聞の提言で、また「男系の皇統」が話題になっているが、これは明治時代に井上毅が皇室典範で決めたルールであって「古来の伝統」ではない。『日本書紀』は、継体天皇を垂仁天皇の女系の子孫とし、それ以前の天皇は男女の別も書いていない。継体以降は男系が続いたが、それは側室の産んだ子の中から男子を選んだだけで、男系を定めた文書はない。

日本に男系の皇統がなかったことは、宦官がいなかったことでも明らかだ。中国では男系男子の皇統が厳格に決められ、歴史上も例外は一人(則天武后)だけだ。後宮は男子禁制で、皇帝や側室の世話をする宦官は去勢し、皇帝が側室とセックスした日付を記録して産まれた子の血統を確認した。その子が皇帝の子であることを証明し、帝位を簒奪しようとする者が「この子は俺の子だ」と主張できないようにしたのだ。

しかし日本の御所には皇族以外の男も自由に出入りでき、側室の産んだ子は誰の子かわからなかった。天皇には権力がなかったので、その血統は問題ではなかったのだ。ただ家が絶えると困るので、天皇以外の父親の子でもよかった。島田裕巳氏も指摘するように、歴史上は天皇家以外の「不義の子」ではないかと噂された天皇もいる。第57代の陽成天皇である。

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陽成天皇

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日本国債は「合理的バブル」である(アーカイブ記事)

バブルの経済理論 低金利、長期停滞、金融劣化
貨幣はバブルである。これは150年前にマルクスが「商品の物神性」として指摘したことだが、今も正しい。1万円札の使用価値は20円しかないので、その価値はバブルだが、人々がそれを1万円の商品と交換する限り続く。中央銀行は「国営バブル」を維持する機関ともいえる(2021年8月1日の記事の再掲)。

ゼロ金利の状況では国債も貨幣と同じであり、余剰資金を社会的に循環させる合理的バブルである。これには次のような特徴がある。
  1. 長期金利(r)が名目成長率(g)より低い限りバブルは維持できる
  2. r<gのときバブルは効率的である(将来世代との利害対立が発生しない)
  3. 必要な安全資産の総量は一定なのでバブルは代替する
ここで重要なのは3の条件である。1980年代後半にも、都心の地価は収益還元価格を超え、その利回りはマイナスだったが、それは安全資産として保有された。これをGDP比でみると、90年代以降、土地と国債を合計した安全資産の比率はほとんど変わっていない。つまり土地が国債にバブル代替されただけなのだ。

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バブルの代替(本書より)

国債がこのような安全資産になったのは、実はそう古い話ではない。日本でr<gになったのは、2013年に黒田日銀の量的緩和が始まってからの10年足らずである。この不等式が逆転してr>gになると、国債バブルは終わるのだ。

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