年金ネズミ講を全企業に拡大する年金法改正を野党は阻止すべきだ

永田町では国民民主党の減税案が話題になっているが、これは3つにわけて考える必要がある。

・年収の壁
・手取りを増やす効果
・財源

このうち年収の壁については、103万円は問題ではない。これは学生の親や主婦の配偶者の扶養控除がなくなるだけで、所得税・住民税は所得と103万円の差額にかかる。たとえば年収110万円なら差額の7万円に所得税・住民税15%がかかるので、税額は1万円である。これは次の表のように連続的な増加で壁ではなく、高所得者ほど有利になる。



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マルクスはなぜ世界を魅惑したのか

マルクス主義の主要潮流 その生成・発展・崩壊
マルクスは20世紀の歴史に最大の影響を与えた思想家だが、それを理解している人はほとんどいない。あの観念的で難解な思想が、なぜ全世界の知識人と労働者を魅惑し、100年近くにわたって世界史を動かしたのかは今も謎である。本書は1978年にポーランド語で書かれた古典だが、初めて邦訳が出た。

著者の答は、マルクスの思想とマルクス主義の運動は別のものだったということだ。マルクスの思想は高度なものだが、彼がそれを『資本論』のように学問的な形で書いただけなら、今ごろはヘーゲル左派の一人として歴史に残る程度だろう。

ところが彼はその思想を単純化して『共産党宣言』などのパンフレットを出し、その運動が成功することで彼の理論の科学性が証明されると主張した。このように独特な形で「科学的社会主義」の理論と実践を結びつけたことが成功の一つの原因だが、その運動の実態は理論とはおよそかけ離れたものだった。

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トランプ再選を生んだ「忘れられた人々」の絶望


トランプ大統領は激戦州すべてを制して圧勝した。議会も共和党が上院の過半数を取り、下院も過半数を取る情勢だ。これはトランプの勝利というより共和党の勝利であり、バイデン政権に対する大衆の不満の表明だ。それは今に始まったことではなく、オバマ政権から始まっていた。

それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史
アメリカは二つの国に分断されてしまった。一つはGAFAMやウォール街に代表されるエリートの国で、そこには世界中から最優秀の頭脳が集まってくる。彼らは人種的にも多様でLGBTも多いので、話題はアイデンティティに集中する。企業でも学校でもポリコレが流行し、経済問題には興味がない。

そういう繁栄に置き去りにされたのが、もう一つの国である。かつて中西部には製造業の工場が集まり、白人労働者が高い賃金で働いていたが、そういう工場は1990年代以降のグローバリゼーションで姿を消し、労働者は低賃金の流通・運輸サービスに転職し、伝統的なコミュニティは失われた。

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特にオバマ政権で労働分配率は大きく下がり、格差が拡大した。これは世界金融危機のあと都市にエリートが集中し、地方の雇用が失われて荒廃する状況を政権が放置したためだ。このため人口の1割が資産の7割を保有する一方、職を失った白人の自殺が激増した。トランプ再選は、このような「忘れられた人々」が民主党のエリートに対して起こした反乱なのだ。

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トランプの再選は「反知性主義」の勝利

反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―(新潮選書)
大統領選挙は、トランプの圧勝に終わった。これは2016年のようなまぐれ当たりではなく、上下両院も共和党が制する「トリプル・レッド」になりそうなので、アメリカの民意といえよう。

トランプの支持層が低学歴だというのは定型化された事実だが、それはプア・ホワイトだけではなく、マイノリティにも支持が広がっている。トランプはバカで助平で自分勝手だが、それは大衆と同じなのだ。これは意外に根深いアメリカの伝統で、その本質は本書のいう反知性主義である。

これはホーフスタッターの言葉だが、マッカーシズムの吹き荒れた1950年代のアメリカについての特殊な概念である。彼が批判したのは知性そのものではなく、それが政治権力と結びつくことだったので、「反エリート主義」とか「反権威主義」と呼んだほうがいい。

それは必ずしも蔑称ではなく、アメリカの大衆が共有している思考様式である。王政や封建制の歴史のないアメリカでは、キリスト教が権威となったため、ハーバード大学などを出た聖職者や知識人の知的・政治的権威が大きい。彼らは大衆よりはるかに所得の高い特権階級なのにマイノリティを擁護し、格差の拡大をなげく。

そういうリベラルの偽善に対する反感が反知性主義だが、これはキリスト教圏には普遍的にみられる。ヨーロッパで起こっている右派政党の台頭も、リベラルな移民受け入れや環境保護が貧困をもたらしていることへの反感である。

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国民民主党の7兆円減税は財政赤字を拡大してインフレを加速する

国民民主党の減税案が、政局の焦点になってきた。自民党は特別国会で石破首相が指名されるために国民民主を取り込もうとし、立民党は党首会談で国民民主に投票を求めたが、玉木代表は否定的だ。

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政権交代の「バタフライ・エフェクト」

政権交代秘録 「食うか、食われるか」の権力闘争30年史
永田町では国民民主が連立に入るかどうかが注目されているが、政治の世界では1人の政治家の判断で国の運命が大きくわかれるバタフライ・エフェクトがしばしば起こる。本書はそういう運命の分かれ目をおさらいしたものだ。
  1. 首相を辞退した小沢一郎:1991年に海部内閣が崩壊したとき、経世会(竹下派)はその後任として会長代行だった小沢一郎を推す方針だった。金丸会長は小沢を説得したが、小沢は心臓の持病を理由に断った。このとき彼が受けていれば首相になったことは確実で、なぜ彼が断ったのかは今も不明である。

  2. 予想外の宮沢内閣解散:小沢のひきいる羽田派(改革フォーラム21)が自民党を離党するとは、1993年6月18日の午後まで誰も思っていなかった。梶山静六幹事長が、小沢に踏み絵を踏ませて羽田派を分裂させようと仕掛けたのだが、羽田派は34人全員が不信任案に賛成して不信任案は成立し、衆議院は解散された。

  3. 幻の「渡辺首相」1994年4月に細川内閣が総辞職したあと、小沢は渡辺美智雄を自民党から離党させて首相にしようと連立与党の各党に工作した。渡辺の返事を4月17日の正午まで待ったが、渡辺は電話してこなかったので、小沢は会談を中止し、出かけてしまった。渡辺は睡眠薬を飲み過ぎて寝坊したことがわかったが、中止した工作は元に戻せなかった。このとき渡辺が派閥を引き連れて離党していれば、連立与党は絶対多数になり、安定したはずだった。
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「玉木首相」は生まれるか

自公政権と国民民主党の政策協議が注目されている。先週の幹事長会談では、とりあえず「103万円の壁」の見直しが決まったようだ。

この「103万円の壁」は壁ではないが、特別国会で石破首相が指名されないリスクを恐れ、自民党は最大限の注意を払っている。ここでいくつかのシナリオを考えてみよう。

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国民民主党の「年収の壁」対策の受益者はバイト学生と後期高齢者

国民民主党の「年収の壁」対策は、所得控除という制度のわかりにくさもあって、いろいろな誤解を呼んでいる。



まず最大の誤解は、103万円は壁ではないということだ。図のように103万円から所得税が課税されるが、それはゼロから連続的に上がっていくので、壁ではない。たとえば学生アルバイトの給料が年収120万円だとすると、103万円との差額17万円に所得税・住民税15%がかかるので、税額は17万×15%=2.5万。手取りは14.5万円増えるので、働き控えは起こりえない。

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バイトルより

バイト先の会社が103万円を超えないようにシフトを組むらしいが、そんなものは無視して働けばいい。学生の場合は所得が103万円を超えると親の扶養控除(38万円)がなくなる効果が大きいので、これは学生アルバイトの壁である。もともとは国民民主党の学生党員が考えたらしいが、これを防ぐには扶養控除を廃止したほうがいい。

それより大きな問題は、48万円の基礎控除を1.7倍の81万円に上げると、所得税・住民税だけでなく、他の控除も上がることだ。たとえば後期高齢者のうち、住民税非課税世帯と課税所得28万円未満(年収200万円)は1割負担になる。年金の平均受給額は170万円だが、年金控除が110万円もあるため、年金生活者のほとんどは非課税なのだ。

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厚生労働省の資料

基礎控除が81万円になると課税所得が33万円減るので、いま課税所得28万円未満の人(1315万人)は無税になる。彼らが最大の受益者である。2割負担の人の課税所得も33万円減り、最低所得は年金受給額でいうと年収230万円ぐらいになる。これは企業年金を含む最高額に近いので、2割負担(370万人)のほとんどが1割負担になり、後期高齢者医療費は現在の18兆円から20兆円以上に増えるだろう。その負担は現役世代からの「支援金」でまかなわれる。

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「年収の壁」って何?

国民民主党の玉木雄一郎代表が提案している「年収の壁」対策を、自民党が検討するそうです。与党が過半数割れになったので、国民民主の28人が賛成しないと補正予算案が通らないからですが、本当にこれで低所得者は得するんでしょうか。



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「年収の壁」を103万円から178万円に上げると、税収は7.5兆円減る

国民民主党の「年収の壁」対策に石破政権が協議に応じることになった。もしこれが満額実現すると、所得税収はいくら減るか、Claudeにきいてみた。

Q. 基礎控除48万円+給与所得控除55万円を合計178万円に引き上げると税収はいくら減るか?

## 前提条件
1. 現行制度
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除の上限:55万円
- 合計:103万円

2. 改正後
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除の上限:130万円
- 合計:178万円

## 影響試算
1. 控除額の増加:75万円(178万円 - 103万円)

2. 影響を受ける納税者
- 給与収入が103万円超の給与所得者
- 推定対象人数:約4,000万人

3. 税収減少額の計算
- 控除増加額(75万円)× 所得税率(平均15%として)× 対象者数
- 75万円 × 0.15 × 4,000万人 = 約4.5兆円

4. 住民税への影響
- 住民税(一律10%)での追加減収
- 75万円 × 0.10 × 4,000万人 = 約3兆円

## 総括
- 所得税・住民税合計での減収額:約7.5兆円

所得税と住民税の税収の合計は34.5兆円。その21%が失われる減税は可能なのか。また国民民主党は、この7.5兆円の財源をどこから持ってくるのか?

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