ジャニーズ事務所と民放のカルテルがコンテンツ産業を腐らせた



櫻井翔氏のコメントがいろいろ話題を呼んでいる。彼が被害者だとしても、日テレがジャニー喜多川の性犯罪を見逃して(彼を初めとする)ジャニーズ事務所のタレントを使ってきた加害者としての責任はまぬがれない。もっと大きな問題は、このような芸能人カルテルが、日本のコンテンツ業界を腐らせたことだ。

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衰退しない大英帝国

衰退しない大英帝国―その経済・文化・教育 1750‐1990
日本の「失われた10年」は「失われた20年」になり、最近は衰退途上国と呼ばれるようになった。かつて世界史上空前の高度成長を遂げた日本が老大国になり、成長が衰えるのは宿命とも思えるが、仔細にみるとそれは必然ではない。

GDPが減っている最大の原因は人口減少だが、一人当たりGDP成長率でみるとイタリアがG7で最下位で、日本がその次だ。イタリアはローマ帝国が滅びた500年前からずっと衰退しているが、イギリスは意外にアメリカに次いで第2位。これは労働人口で割っても同じである。

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労働人口一人あたりGDP成長率(1991年=100)(購買力平価)

日本は生産性が落ちているのだが、生産性とは「一生懸命に働いた成果」ではない。これは「付加価値÷労働人口」だから、日本人は長時間労働してももうからず、イギリス人はその逆なのだ。

一般には、大英帝国の繁栄は19世紀末に頂点に達し、その後は衰退してきたと考えられている。その原因は保守的な貴族が既得権を守って、新興の産業資本家の活躍を妨害してきたからだ、というのがよくある「文化批判」だが、本書はそれに反論し、「大英帝国は衰退していない」という。

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電力会社はなぜ電力を「限界費用」で売るのか

私がかねがね不思議に思っているのは、旧一電(9電力)が電力を限界費用でJEPX(卸電力市場)に卸す慣行である。初等的な経済学では「価格は限界費用に等しくなる」と習うが、これは固定費ゼロの完全競争の世界だ。電力のように固定費の大きな財を限界費用(火力の場合は燃料費)で売ったら固定費が回収できなくなる。

これは新聞を紙の値段で売るようなもので、朝日新聞を1円で売ったら、朝日新聞社はたちまちつぶれるだろう。ところがエネ庁は自主的取組と称して、旧一電が余剰電力をすべて限界費用で卸すよう強要しているのだ。


これを「非対称規制」と呼ぶ人がいるが、これは法律でも省令でもないので規制ではない。これは原子力規制委員会が安全審査のために原発を止めているのと同じ超法規的な行政指導であり、無視してもいいのだが、旧一電は今もそれに従っている。

特に問題なのは、LNGの在庫がなくなって需給が逼迫したときだ。停電を避けるには小売り業者はどんな価格でも買うので、供給曲線が垂直になって卸値が大幅に上がるスパイクが起こる。これが2021年1月の電力値上がりで、一時は200円/kWh以上の卸値がついた。

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これはそれほど異例の現象ではなく、太陽光が使えない夜間や雨の日にも需給が逼迫するので、旧一電がこのようなスパイクで火力の卸値を上げて固定費を回収するのが、電力自由化の制度設計だった。

ところが需給が逼迫しても限界費用で卸すようエネ庁が指導したため、旧一電は固定費を回収できず、赤字になって火力をどんどん廃止しているのだ。それが電力需給が逼迫し、電気代が上がる原因である。

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今年の夏「東京大停電」は起こるか



電力広域的運営推進機関は、今年の夏の電力需給見通しを発表した。それによると、東電管内の7月の予備率は3.1%。これは昨年3月22日のように火力発電所が地震で2基止まっただけで、大停電の一歩手前になる数字である。

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3・22のときは政府が節電要請を出し、東電が他社から融通を受け、揚水発電やデマンドレスポンスを動員し、供給電圧の低め調整という危険な対策まで動員して、大停電を回避したが、電力自由化の原則からいえば、東電がそんなことをする必要はなかった。

発電会社は供給責任を負わないので、自分の責任の部分だけ送電し、大停電が起こったら政府にまかせればいいのだ。電力システム改革を設計した松村敏弘氏は電力需給逼迫に大騒ぎしすぎではないかという。大停電のリスクは年に数日で、首都圏だけの問題だ。ゼロリスクを求める必要はないという。

これは一つの考え方だが、現実に大停電が起こったらどうなるか。東京都民は「電力自由化のためにはしょうがない」と納得してくれるだろうか。これは机上でシミュレーションしてもわからないので、実際に「社会実験」してみるしかない。

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植田総裁の頭の中を整理してみた

日銀の植田総裁の初の講演がちょっとおもしろい。特にそのスライドが明快で、彼が何を考えているかがわかる。

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注目すべきなのは、彼がフィリップス曲線で考えていることだ。これは昔の右下がりの曲線ではなく、横軸に需給ギャップ(正確にはGDPギャップ)をとり、縦軸にインフレ率をとっている。昔は横軸が失業率で、右下がりの曲線になっていたが、ここでは右上がりになっている。

これは単に軸を反転しただけではなく、インフレ率を需給ギャップの関数と考え、その上方シフトとして予想インフレ率を考えている。これはニューケインジアン・フィリップス曲線(NKPC)と呼ばれる新しい考え方である。

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図2

これでみると黒田総裁以降の2013~19年には、予想インフレ率が2000年代よりやや上方にシフトしたが、ほとんど変わっていないのに対して、コロナ拡大後の2020年以降は、大きく上方シフトしている。これはコロナ対策で大量のマネタリーベースを供給し、それが市場に循環し始めたものと考えられる。

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電力システム改革は「経済学者の失敗」

日経新聞に掲載された松村敏弘氏の記事が「意味がわからない」とか「ポエムだ」と、電力業界で話題になっている。私もさっぱりわからなかった。


これは意見が違うという意味ではない。電気料金が大幅に上がる一方で供給が不安定化している現状を、電力システム改革を設計した松村氏がどう考えているのか、何も書いてないからだ。彼は最大の原因は電力会社のカルテルだというが、これは本末転倒である。

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電力自由化の目的は安定した電力を安く供給することであり、競争はその手段にすぎない。2016年から段階的に発送電分離が始まり、2020年に完成したが、その後、電気料金はほぼ2倍になった。この原因がウクライナ戦争以後のLNG価格の上昇だと思っている人が多いが、図のように電気代の上昇は戦争の前から始まっていたのだ。

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エネルギー白書より

最大の原因は供給不足である。電力自由化の目的は過剰投資になりがちな電力業界の投資を効率化することなので、これは松村氏の制度設計の結果ともいえる。しかし彼がその設計を誤ったため、火力に誰も投資しない過少投資が起こってしまったのだ。

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「電力ビッグバン」がもたらした「社会主義の崩壊」

6月から電気代が大幅に値上げされる。このうち東電の料金は、柏崎7号機が動く前提で低く抑えられているが、原子力規制委員会がOKを出さないので、今年の冬には再稼動が間に合わないかもしれない。その場合、この値上げ幅はさらに大きくなる。



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フリードマンはリフレ派だったのか

このツイートに対して著者から公開質問状をいただいた。6回もあるので全部はお答えできないが、要点だけ。


まずこの「チャンネルくらら」を私は見ていないし、見る気もありません。私が読んだのはKindle Unlimited版です。「ネトウヨ」などの表現で気分を害したのならおわびしますが、いま読み返しても私の評価は残念ながら同じです。

私が「フリードマンは日本経済なんか論じてない」というのは、最近のリフレ論争の話で、これは彼が2006年に死去したのだから当然です。柿埜さんが引用しているWSJのコラムは1997年のもので、そこでフリードマンが論じているのは、1990年代の金融緩和が遅きに失したという話です。

これは結果論としては(日銀も含めて)ほとんどの専門家が認めることで、別にリフレ派だけが指摘したわけではない。リフレ派というのは日本ローカルのアマチュア集団であり、フリードマンが「私はリフレ派だ」と言ったこともない。

ただリフレをゼロ金利でも通貨供給を増やせばインフレになるという主張と定義すると、フリードマンの主張には日本のリフレ派と共通点があります。そしてそれが、多くの点で正しかった彼の唯一の誤りでした。

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子供に増税する「財政的な幼児虐待」で子供は増えるのか



政府の少子化対策の骨組みが徐々に明らかになってきた。読売新聞のまとめによると、最大の歳出は児童手当の増額で、3人目以降を月3万円に倍増する。各省の支出をこども金庫という特別会計に集め、歳出は約3兆円である。


読売新聞より

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「2024年台湾有事」はあるか

習近平・独裁者の決断
ロシアがウクライナを侵略するよりずっと前に、中国は台湾を侵略する予定だった。1950年6月4日に中国は台湾を攻撃する準備をしていたが、その2日前に北朝鮮が韓国を侵略し、朝鮮戦争が始まった。スターリンは毛沢東に北朝鮮を支援するよう命じ、台湾攻撃は延期された。

朝鮮戦争さえなければ、今ごろ中国は台湾を併合していたはずだが、中国はそれから73年も攻撃を延期してきた。その最大の理由は、アメリカとの戦力の差が大きかったからだ。その差が縮まった今、習近平が台湾攻撃をためらう理由はない、というのが2人の著者の一致した見方である。

昨年の共産党大会で胡錦濤以下の反対派を一掃した習近平にとって、今は絶好のチャンスである。石氏によると、台湾が領土ではないと思う中国人はいないという。反政府的な知識人でも、台湾が中国の領土であることは自明だと思っているので、台湾攻撃で国論が二分することはない。

西南交通大学学生悼念乌鲁木齐火灾逝者_10
白紙革命(Wikipedia)

むしろ昨年11月の白紙革命以来、国内情勢が不安定になっているので、矛先を台湾に向ける可能性がある。攻撃するとすれば、いつか。峯村氏によると、アメリカ大統領選挙で政治空白のできる2024年だという。

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