秋本真利によるスラップ訴訟について

衆議院議員、秋本真利の私に対する損害賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が、きょう東京地裁で行われた。これは以下のツイートなどが、彼の名誉を毀損していると称する訴訟である。


この一連のツイートは週刊新潮の次の記事に対する論評だが、秋本は記事の中で1800万円の政治献金を受け取った事実を認めている。

私のツイートはそれを論評しただけだが、秋本は開き直っている。これは批判を威嚇して論評を封じようとする、悪質なスラップ訴訟である。

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山県有朋と伊藤博文のねじれた関係

山県有朋 明治日本の象徴 (岩波新書)
安倍元首相の国葬の弔辞で、菅前首相が本書の中の山県有朋の歌を引用したのは感動的だった。

かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ

これがきっかけで、本書(電子版)がアマゾンのベストセラー1位になっているが、この歌にはちょっと首をかしげた。山県は伊藤に「尽くす」関係ではなかったからだ。もちろん弔辞だから故人を持ち上げたのだろうが、山県と伊藤はライバルといったほうがよい。

2人とも長州藩士だったが、山県は1838年、伊藤は1841年生まれである。2人とも足軽の子で、江戸時代には一生、指導者にはなれない身分だった。松下村塾に入って尊王攘夷の思想に共鳴したところまでは似ているが、山県は優等生ではなかったのに対して、伊藤は藩の留学生として井上馨とともにヨーロッパに行った。

伊藤はロンドンで西洋の強大な軍事力に驚き、帰国して長州藩の家老に攘夷思想を捨てるよう説いたが、山県は攘夷にこだわり、その後も2人の路線対立は残った。伊藤が西洋をモデルにして憲法を制定し、立憲国家の建設を急いだのに対して、山県は軍備強化に力をそそいだ。

伊藤は内閣が軍をコントロールできない憲法の欠陥に気づいて、その改革を試みたが、山県は政党政治に反対し、統帥権を独立させた。この2人のねじれた関係がその後の日本の進路を決めるが、この対立は1909年に伊藤が暗殺されて突然、終わってしまう。

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ウクライナ戦争は「ユーラシア国家」の時代の始まりか

ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界 (幻冬舎新書)
ウクライナ戦争は、19世紀的な戦争である。それはサイバー戦争でもハイブリッド戦争でもなく、戦車は前代の遺物でもない。少なくともプーチンのやっているのは帝国主義時代の領土拡張戦争であり、その中心は第2次大戦と同じ陸軍である。

帝政は第1次大戦で姿を消したと思われたが、今や独裁国家という新たな姿をあらわし始めている。それに対する民主国家は、もう人類の多数派ではない。ウクライナ侵略に対する国連のロシア非難決議に反対もしくは棄権した国の人口は、賛成した国より多かった

これは冷戦後のグローバリゼーションの逆転だが、その動向を決めるのはグローバルサウスと呼ばれる発展途上国だ。中国はすでにアジア・アフリカの多くの国に融資して借金漬けにし、ロシアも東欧や中東に支配を拡大している。

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冷戦時代も今も、中国とロシアのユーラシア国家という本質は変わっていない。その民主国家との関係は、地政学でいうハートランドリムランドの関係に似ている。ハートランドを制する者が世界を制するという地政学の理論は、第2次大戦とその後の歴史で否定されたが、21世紀に新たな意味を持ち始めたようにみえる。

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戦争は人類の本質ではない

人類の社会性の進化(Evolution of the Human Sociality) (下): 共感社会と家族の過去、現在、未来 (アイカードブック)
20世紀は史上もっとも暴力的な時代だったという通念は誤りである。2度の世界大戦を合計しても、死者は約1億人。世界の人口の4%程度だった。それに対して「石器時代」に人間が殺人で殺された率は平均15%だった。人類は文明の進歩によって史上もっとも安全で豊かな時代に生きているのだ。

このピンカーの啓蒙主義は、今では常識になったようだが、実証的には疑問がある。最近は化石の年代が放射性同位元素で厳密に測定できるようになり、1万年より前の遺跡には戦争の痕跡がないことがわかってきたのだ。旧石器時代の遺跡に個人の頭蓋骨が損傷した人骨はあるが、集団で殺された形跡はない。

それに対して1万年前以降の農耕社会では、戦争の痕跡がたくさん見つかる。平均30%が殺された地域もある。戦争は人類の本質ではなく、限られた土地を奪い合う農耕社会の生んだ行動だから、農耕の終わった現代には、人類は平和共存できるはずだ――というのが日本学術会議の会長だった山極寿一氏の説である。

この性善説は、グレーバーなど最近の人類学の研究でも実証的に確認されている。したがってピンカーの啓蒙主義は誤りだが、山極氏の平和主義が正しいわけでもない。彼の強調する共感能力が有効なのは、ローカルな共同体の中だけであり、ロシアとウクライナの間では成り立たない。

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国葬は「将軍的権力」による権威の奪取?


東大の駒場で19日に開かれたシンポジウムが話題になっている。といっても東大が開催したわけではなく、國分功一郎研究室の開いたZoom会議だが、参加者は次の通り:
  • 國分功一郎(東京大学)
  • 石川健治(東京大学)
  • 片山杜秀(慶應大学)
  • 白井聡(京都精華大学)
  • 三牧聖子(同志社大学)
  • 山口広(弁護士)
ガラパゴス憲法学者の石川氏や、色物の白井氏の話の中身は聞かなくてもわかる。國分氏が安倍政権の「巨悪」として指弾するのはモリカケ桜だが、驚いたのは片山氏の話だ。他の論者とのバランスを取るのかと思ったら、今回の国葬は「将軍的欲望の発露」であり、「権力による権威の奪取」だという。

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これは反語でも皮肉でもなく、歴史的に権威(天皇)と権力(将軍)を分離してきた日本で、「ついに真のファシズムが誕生する」という。この「将軍」とは岸田首相のことだが、彼の頭は大丈夫だろうか。

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アベノミクスの「弱者救済」が長期停滞を延長した

成長の臨界
安倍元首相の外交的な業績は立派だが、経済政策は落第点である。その証拠は、本書も指摘するように、安倍政権のもとで潜在成長率が低下を続け、ほぼゼロになったことだ。その主な原因は、次のようなものである。
  • バブル崩壊の後遺症で個人消費が伸びない
  • 企業が国内で貯蓄し、アジアで新規投資した
  • 硬直的な雇用慣行で労働生産性が上がらなかった
  • 社会保障の負担増が大きく、可処分所得が減った
安倍氏はこの問題を「デフレ脱却」というトンチンカンな見方でとらえ、日銀がお金をばらまけば解決すると考えた。それが間違っていることは2年ぐらいでわかったのだが、彼はこれを「消費税の増税が失敗だった」と考え、増税を2度も延期した。その結果、財政赤字は増えたが、長期停滞は変わらなかった。

著者はこれを主流派経済学の立場から批判するが、主流派にも問題があったという。彼らは財政破綻のリスクを過大評価し、需要不足を一過性の問題と考えたが、それは誤りだった。ブランシャールも指摘したように長期金利<名目成長率という状況が続くと、ISバランスの不均衡は埋まらない。需要不足は長期の問題なのだ。

だから一定の財政赤字が必要だが、問題はそれをどう使うかである。大企業は海外投資で利益を上げたが、国内に取り残された地方の中小企業は経営が悪化した。そこに補助金を投じて延命し、金利負担を軽減する弱者救済が、アベノミクスの実態だった。

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国葬って何?

岸田内閣の支持率は、毎日新聞の世論調査で29%と発足以来、最低になりました。その最大の原因は9月27日に行われる安倍元首相の国葬で、反対が62%にのぼっていますが、何が問題なのかよくわかりません。


吉田茂の国葬

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日本が学ぶべき「衰退国の先輩」イギリス

8月の貿易赤字が過去最大の2.8兆円になったことが話題になっている。この最大の原因はウクライナ戦争による資源価格の上昇だが、輸出がほとんど伸びなかったことも響いた。所得収支はまだ黒字だが、両方を合計した経常収支は今後マイナスになるだろう。

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これは一時的な現象ではなく、これから日本は経常収支が赤字の国になるだろう。キンドルバーガーの国際収支発展段階説によれば、次のような段階を追って経済は成長して成熟し、衰退する。
  1. 途上国:貿易収支は赤字で、金融収支は黒字(借り入れ)
  2. 成長国:貿易収支は黒字になるが、所得収支は赤字なので経常収支は赤字
  3. 輸出国:経常収支が黒字になり、金融収支は赤字(貸し出し)
  4. 債権国:貿易収支と所得収支が黒字になリ、経常収支は大幅な黒字
  5. 成熟国:貿易収支は赤字になるが所得収支は黒字で、経常収支の黒字が縮小
  6. 衰退国:経常収支が赤字になって金融収支が黒字になる(対外資産を取り崩す)
日本でいうと、戦前は1の段階だったが、1960年代までは2で、1970年代以降は3から4になった。2010年代以降は5になり、これから6になるだろう。これは大英帝国がこの200年にたどった変化を、駆け足で追いかけている。

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イギリスの経常収支(イングランド銀行)

イギリスは20世紀にはずっと貿易赤字だったが、これを植民地からの搾取(所得収支)で補い、経常収支は大幅な黒字だった。第2次大戦で植民地を失って大幅な赤字になったが、ポンドを切り下げて黒字にした。この過程で資本が海外に流出し、イギリスは今も世界最大の債権国である。

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続きは9月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)

アゴラ読書塾「長い江戸時代のおわり」

長い江戸時代のおわり
いま日本は、歴史の転換点にさしかかっています。1990年に冷戦が終わり、ソ連はロシアとして「西側」に入り、中国は改革開放で世界市場に入りました。自由と民主主義が勝利し、グローバリゼーションで全世界が豊かになる未来が約束されたようにみえました。

この30年の日本の「デフレ」やゼロ金利も、冷戦の終了で中国の安い労働力が大量に提供された大収斂の結果でした。国内の賃金は下がりましたが、アジアに投資したグローバル企業は高い収益を上げました。

しかしウクライナ戦争は、すべてを変えました。世界は中露などの「ユーラシア国家」とそれ以外の国が、敵と味方に分断される新しい冷戦の時代に入っています。日本は応仁の乱のあと「長い江戸時代」ともいうべき平和を謳歌してきましたが、そんな幸福な時代も終わりました。

世界の再分岐が始まり、冷戦後の「どっちもどっち」という相対主義が許されなくなりました。防衛力の強化が必要になり、「原発ゼロ」や「カーボンゼロ」はエネルギー安全保障をおびやかしています。日本もゼロリスクを卒業し、まじめにリスク管理を考えるときでしょう。

池田信夫・與那覇潤『長い江戸時代のおわり』は、このような時代に日本人がどう変わるかを、歴史学と経済学の立場から考えた対談です。10月からのアゴラ読書塾では、この本をテキストにして、みなさんと一緒に「ポスト冷戦後」の時代を考えたいと思います。

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電力システム改革は「新自由主義」の失敗

間違いだらけのエネルギー問題
ウクライナ戦争をきっかけに世界経済が大混乱に陥っている最大の原因は、石炭火力を廃止して天然ガス依存を強めたヨーロッパのエネルギー政策である。ガス価格は1年で10倍以上になり、電気代は2倍以上になった。EUは価格統制で乗り切ろうとしているが、これは供給不足をまねくだけだ。

このように不確実性が大きくなると、インフラ投資が減る。リスクプレミアムは金利と同じなので、将来の収益リスクが大きくなると、割引現在価値(NPV)が小さくなり、発電所のような長期プロジェクトの利益がマイナスになるからだ。リスクが1%大きくなると、償却期間40年でNPVが33%下がる。

世界的に電力業界が垂直統合型の産業構造だったのは、国営企業が多かった歴史的な理由によるもので、1990年代にサッチャー英首相が電力を水平分離して自由化するシステム改革を開始した。アメリカでもニューヨークやカリフォルニアなどで自由化が行われたが、大停電が起こり、電気代が上がる結果に終わった。

その原因はインフラへの過少投資である。今年1月の記事でも書いたように、バックアップの固定費を無視して限界費用で価格をつけると、火力や原子力のような長期的投資はできなくなり、新規参入業者はリセールばかりになってしまう。それがイギリスでも日本でも起こったことである。続きを読む



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