タバコ を含む記事

ESG投資というモラルハザード


きのうこういう論争が、水野弘道氏(GPIF最高投資責任者)と山崎元氏(国家公務員共済組合連合会資産運用委員)の間で繰り広げられた。水野氏のいうようにESG(Environment, Social, Governance)投資が流行していることは事実だろう。

しかしそれが投資理論として成り立たないことは、山崎氏のいう通りである。少なくとも効率的市場仮説による限り、「環境にやさしい」などの収益以外の基準で運用の対象を制限して、収益を高めることはできない

たとえばあるファンドが収益最大化の基準で組んだ100社のポートフォリオから、ESG基準で石炭を使う10社を排除したとすると、残りの90社からなるポートフォリオが、もとの100社より高い収益を上げることは論理的にありえない。もし高い利益を上げたら、100社のファンドは収益を最大化していなかったことになる。

これは多くの実証研究のデータでもわかっており、ESGが収益を改善する効果は統計的に有意ではない。地球環境を守るのは政府の仕事である。ファンドマネジャーの社会的責任は投資家の収益を最大化することであり、投資家のカネを収益以外の目的に使うのはモラルハザードである。

これがフリードマン以来の経済学の通説だが、ESGは「当社は地球環境を考えている」というイメージを売り込む役には立つ。投資家が私企業の株主ならそういうセールストークで資金を集める営業もいいが、GPIFではやめていただきたい。続きを読む

ビールの「消費税率」74%は外税表示に

来年の消費税引き上げで「複数税率」が導入される見通しだが、これは「軽減税率」だけではない。酒税・タバコ税・揮発油税などの個別消費税は今すでに複数税率であり、今回の税法改正で「重課税」になる。たとえばビールの税率は、アサヒの「スーパードライ」の場合、本体価格132円に酒税77円かかり、その合計価格209円に8%の消費税が課税されている。これが消費税10%になると230円、本体価格に対して74%課税される。

続きはアゴラで。

政権を動かすポピュリスト集団 公明党

公明党vs.創価学会 (朝日新書53)
軽減税率をめぐる攻防は大詰めに入ったが、公明党はいまだに「酒類を除く飲食料品」という大幅な軽減対象を譲らない。これだと1兆3000億円余りの税収減になるが、それを埋め合わせないと、予定していた「社会保障と税の一体改革」は崩れてしまう。公明党は所得税やタバコ税の増税などを出しているが、思いつきの域を出ない。

それでも菅官房長官は「公明党の意向は尊重する」という。その背景には、来年の参議院選で、公明党との選挙協力なしでは安定多数が取れない事情がある。自公政権は衆議院で2/3の議席を取っているが、絶対得票率(得票率×投票率)でみると、合計24%に過ぎない。特に自民党はかつての半分以下になっており、都市部で固い支持層をもつ公明党の7%なしには当選できない。

他方、公明党の支持母体である創価学会は、高度成長期に都会に出てきた未組織労働者が母体で、地方にはあまり支持基盤がない。というより地方では自民党を支持する農家の次三男が、東京では創価学会=公明党の支持層なのだ、と本書は指摘する。この意味で自民党と公明党は補完的であり、一体である。

しかも公明党は第一党にはなれないので政権構想は描けず、軽減税率のようなポピュリズムで集票するしかない。その最強の集票マシンが創価学会婦人部である。いわば自民党では過去のものになった「田中角栄型」のドブ板政治が、公明党には残っているのだ。

続きは11月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

被災者の地獄への道は村上春樹の善意で舗装されている

キャプチャかつて私は村上春樹の小説の熱心なファンだったが、彼の社会的な発言は単なる平和ボケの団塊オヤジだ。いま話題になっている「原発NO!に疑問を持っています」という話でも、「交通事故で毎年5000人近くが亡くなっているのに、原発だけを取り上げてNO!というのはどうかと思う」という読者の質問に、村上はこう答える。
福島の原発(核発電所)の事故によって、故郷の地を立ち退かなくてはならなかった人々の数はおおよそ15万人です。桁が違います。[…]もしあなたのご家族が突然の政府の通達で「明日から家を捨ててよそに移ってください」と言われたらどうしますか? そのことを少し考えてみてください。原発(核発電所)を認めるか認めないかというのは、国家の基幹と人間性の尊厳に関わる包括的な問題なのです。
続きを読む

なぜ日本は鎖国で立ちおくれたのか

日本文明と近代西洋―「鎖国」再考 (NHKブックス)
著者は今の静岡県知事。反原発の政策は感心しないが、本書は日本の近代化の重要なポイントを指摘している。ヨーロッパで資本主義が急速に発達した17~9世紀に、日本は鎖国の保護主義で世界から大きく遅れをとったといわれるが、これは本当だろうか。

自国の産業を関税などで保護する政策は、イギリスをはじめ世界中の国が行なった。日本が(一部の国を除いて)貿易の禁止という方法をとったことは特異だったが、それ自体は大きな損失になったわけではない。本書も指摘するように、当時のヨーロッパに日本に売り込む商品はなかった。
続きを読む

「美味しんぼ」は何も証明していない

「美味しんぼ」が問題になっているが、率直にいって大騒ぎするような話ではない。そもそも単なる漫画であり、フィクションである。作者は「鼻血の原因は放射能だ」と思っているらしいが、この漫画は彼の思い込みを証明していない。

彼は何か誤解しているようだが、mSv程度の低線量被曝で鼻血が出ることはありえない「プロメテウスの罠」のデマについて書いたように、原爆などで一挙に数Sv以上の致死量の放射線を浴びた場合は、幹細胞が死んで血球の減少や下痢、血便などが起こることがあるが、この場合はほぼ即死だ。3年もたってから鼻血が出たとすれば、それは放射線とはまったく無関係である。
続きを読む

反原発派の5つの法則

ツイッターでちょっとつぶやいたらいろいろな人から追加情報があったので、まとめておこう。反原発派にはいろいろな特徴があるが、次のような共通点がある:続きを読む

原発事故と放射線のリスク学

原発事故と放射線のリスク学
反原発派は論理で勝てない相手に「御用学者」とか「原子力村」などとレッテルを貼って個人攻撃するが、著者にはそのレトリックは通じない。中西準子氏は、宇井純氏とともに日本の公害反対運動を立ち上げ、23年間も東大の助手として闘った闘士である。

しかし彼女は1987年にリスク管理という考え方にめざめる。リスクをゼロにするのではなく、「リスクはどこまで許容できるのか」と考えるのだ。そのとき大事なのは、次の式である。

 リスク=ハザード×確率
続きを読む

「衰退国の先輩」イギリスに学ぶ

イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)
菅官房長官によると、安倍政権は「成長戦略に全力を上げる」そうだが、いまだに政府が成長を実現しようという時代錯誤は困ったものだ。もちろんゼロ成長では今後の高齢化に耐えられないので、今ぐらいの成長は維持したほうがいいが、成長がすべてを解決するという幻想は捨てたほうがいい。

イギリスで「産業革命」が起こったとか「産業資本主義」で成長したとかいう常識は、最近の経済史では葬られている。大英帝国のエンジンは産業革命でも綿工業でもなく、北米のプランテーションと奴隷貿易だった。本国の何十倍もの面積をもつアメリカ大陸を経済圏に入れ、そこから砂糖やタバコなどの一次産品を輸入してアフリカに売り、北米に奴隷を輸出する三角貿易が最大のビジネスだった。
続きを読む

沖縄の認知的不協和

政治の世界では、合理的に理解できないことがよく起こる。米軍基地の辺野古移転を拒否する現職が勝った名護市長選挙もそうだ。日米政府と沖縄県が合意した基地移転を市がくつがえすことはできないし、県外という選択肢もない。この不合理な「民意」を理解する一つの答は、地域エゴとか補助金めあてという経済的な説明だが、今回は2兆円以上のつかみ金をけとばしたのだから、こういう説明には無理がある。
続きを読む








記事検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons
  • ライブドアブログ