エネルギー

原発と安全保障の微妙な関係



昨夜の言論アリーナでは、新しいエネルギー基本計画をめぐって話し合ったが、原発と安全保障という古くて新しい話題が出てきた。日本の原子力開発が核武装をねらいとして始まったという話がよくあるが、その証拠はない。佐藤栄作が中国の核実験に反発して核武装の可能性を示唆したことがあるが、アメリカに反対されて逆に「非核三原則」をつくった。

だが自民党には、石破茂氏のように「核兵器を製造できる技術はもっておく必要がある」という意見も少なくない。もちろん今は核拡散防止条約と日米原子力協定を脱退しない限り核武装はできないが、逆にいうと核管理体制が大きく変わったときに備えて、技術的オプションとしては必要だという意見には一理ある。

ただ核燃料サイクルそのものが、核武装に結びつくわけではない。再処理で兵器級プルトニウムはできないからだ。むしろ北朝鮮を非核化した場合などに備えて再処理技術が必要だ、というのが宇佐美さんの意見だ。しかし安全保障を根拠として(採算のとれない)核燃料サイクルを維持することは、電力会社にはできない。株主に説明できないからだ。

続きは5月28日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

40年ルールで「2050年原発ゼロ」になる

新しいエネルギー基本計画が決まり、まもなく閣議決定される。「再生可能エネルギーを主力電源にする」といいながら再エネ22~24%、原子力20~22%という今のエネルギーミックスを維持したことに批判が集まっているが、問題はそこではない。この計画は現行法では実現不可能なのだ。



続きはアゴラで。

炭素税で「脱炭素交付金」を

政府のエネルギー基本計画はこの夏にも決まるが、その骨子案が出た。基本的には現在の基本計画を踏襲しているが、その中身はエネルギー情勢懇談会の提言にそったものだ。ここでは脱炭素社会が目標として打ち出され、再生可能エネルギーが主力電源と位置づけられている。

だが全国で環境問題が多発していることで明らかなように、再エネの立地に適した場所はすでに設置が終わり、今後は投資が逓減してゆくだろう。パリ協定で約束した「2030年にCO2排出量の26%削減」という目標は、原発が動かない限り不可能だ。

続きはアゴラで。

民主主義のコストを電力会社に負わせるな

四国電力の伊方原発2号機の廃炉が決まった。これは民主党政権の決めた「運転開始40年で廃炉にする」という(科学的根拠のない)ルールによるもので、新規制基準の施行後すでに6基の廃炉が決まった。残る原発は42基だが、今後10年以内に10基が運転開始後40年を迎える。

このまま40年ルールを適用すると、10年後に残るのは32基だが、再稼動を申請していない原子炉が17基ある。「2030年に原子力比率20~22%」というエネルギー基本計画の目標を達成するには25~30基の原発が稼働する必要があるが、新規制基準では1基1000~2000億円の追加的なコストが必要なので、達成できるかどうかは疑問だ。

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福島第一でなぜECCSは動かなかったのか

推論 トリプルメルトダウン-原子炉主任技術者が福島第一原発の事故原因を探る-
3・11の当時から、私が疑問に思っていることがある。それまでの常識では、冷却水が抜けるような大事故が起こった場合は、まずECCS(緊急炉心冷却装置)が起動するはずだった。ところが福島第一では最初に補助的なIC(非常用復水器)やRCIC(原子炉隔離時冷却系装置)が動き、それがうまく動作しないうちに津波で全電源が水没した。

この原因は当初「津波による電源喪失でECCSが動かなかったため」と説明されたが、これは誤りだ。ECCSは直流電源で起動して蒸気圧で冷却水を循環させるので、津波の来る前に起動しておけば、電源がなくなってからもしばらく動いたはずだ。主力の安全装置であるECCSを津波が来る前に起動しなかったことが、結果的には苛酷事故の原因になった。

ECCSの起動が遅れた原因は、マニュアル(事故時操作手順書)で「まずICやRCCIを起動する」となっていることだが、1992年に福島第一の2号機でECCSが誤作動するまでは、まずECCSが起動する設計になっていた。この誤作動のあとECCSを後回しにするよう原子力安全委員会がマニュアルを変更したことが失敗の原因ではないか、というのが本書の推測だ。

続きは4月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

城南信金の知らない「リスク」の意味



けさの「朝まで生テレビ!」は、3・11から7年だったが、議論がまるで進歩していない、というより事故直後に比べてレベルが落ちて、話が堂々めぐりになっている。特に最近「原発ゼロ」業界に参入してきた城南信金の吉原毅氏は、エネルギー問題の基礎知識なしにトンチンカンな話を繰り返して辟易した。

続きはアゴラで。

原子力の「成功した挫折」

Energy and Civilization: A History (MIT Press)
世界初の商業用原子炉がイギリスで運転開始したのは1956年だった。核燃料のコストは化石燃料の1/100万以下なので、当時アメリカ原子力委員会(AEC)のストラウス委員長は「電気代は電力計で測るには安すぎる(too cheap to meter)料金になるだろう」と予想した。1971年にシーボーグAEC委員長は「20世紀中には全米の発電所が原発になるだろう」と予想した。

彼らの計算は今でも科学的には正しいが、原子力は1980年代に挫折した。チェルノブイリ原発事故で全世界に広がった反原発運動が、この安価でクリーンなエネルギーの未来を奪ってしまったのだ。大衆の放射能への不安が高まり、それに応えて安全基準が強化され、原発はますます高価になり、建設に10年以上かかるようになった。

原子力は成功した挫折(successful failure)だったと著者はいう。それは世界の電力の20%を発電するようになったという点では成功だが、その圧倒的なコスト優位性から考えると、自動車が馬車を駆逐したように全米の発電所が原発にならなかったのは挫折だった。そして2011年の福島事故が、この不運な技術にとどめを刺した。

続きは3月19日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「原子力公社」は検討に値する

竹内純子さんの出演した「あさイチ」を見て思ったが、原子力のリスクはもう民間企業には持ちきれないのではないだろうか。この番組で柳沢解説委員は「原発のコストが高い」理由として、福島第一原発の廃炉などに21.5兆円かかるという話をあげているが、これは初歩的な錯覚である。

廃炉費用は1回の事故のサンクコストであり、今後のリスクを計算するには、同じような事故がどれぐらい起こるかという確率をかける必要がある。それが政府の想定(500炉年に1回)ぐらいだとすると、苛酷事故のリスクは1基あたり140億円。原発の建設・運用費の1~2%で、保険でカバーできる。

ただ電力会社としては、火力発電のような普通の発電所とは違う。いくら確率が低くても、起こったら経営が破綻する。各地方のエリートである電力会社には、悪者扱いされるダメージは耐えられない。本当は電力会社の経営者も火力発電のほうが好きだが、国策として無理やり続けているのだ。こういう状態で原発の新設は無理だし、産業が衰退して人材も枯渇する。

特に東電が「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」という形で事実上、国有化されている無責任体制はよくない。東日本のBWR(沸騰水型原子炉)を国が買収して「原子力公社」にする案は、以前から関係者が話題にしているが、まじめに検討してもいいのではないか。続きを読む

NHK「あさイチ」は不公平で無責任だ

私はNHKに偏見をもっていないつもりだが、けさ放送の「あさイチ」、「知りたい!ニッポンの原発」は、原発再稼動というセンシティブな問題について、明らかにバランスを欠いた番組だった。スタジオの7人の中で再稼動に賛成したのは、右から3番目の竹内純子氏だけだ。



続きはアゴラで。

「トリチウム水」の海洋放出に残された時間は少ない

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福島第一原発を見学すると、印象的なのはサイトを埋め尽くす1000基近い貯水タンクだ。貯水量は約100万トンで、毎日7000人の作業員がサイト内の水を貯水タンクに集める作業をしている。その水の中のトリチウム(三重水素)が浄化装置で除去できないからだ。

これは水素の放射性同位体で、ごく微量のベータ線を出すが、人体に害はないので「汚染水」ではない。最近はマスコミも「トリチウム水」と呼ぶようになった。世界ではトリチウムは薄めて流すのが普通で、日本でも他の原発はそうしているが、福島第一だけができない。それは科学的な理由ではなく、地元の同意が得られないからだ。

続きはアゴラで。






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