エネルギー

エネ庁と原子力規制委員会が電力危機を生み出した

今年3月の電力危機では、政府は「電力逼迫警報」を出したが、今年の夏には電力制限令も用意しているという。今年の冬は予備率がマイナスで、計画停電は避けられない。なぜこんなことになるのか。そしてそれが今からわかっているのに避けられないのか。

3月22日に東日本が大停電の一歩手前になった原因について、内閣府の再エネタスクフォースは「冬の最大需要は53.8GWだったので、今回の(最大需要)48.4GWを満たす供給力は存在していた」から、原発再稼動や火力の増設は必要ないという。足りていたのなら、なぜ電力は逼迫したのか。

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「保安規定」の変更認可は再稼動の条件ではない

4月29日のアゴラの記事について、関係者からコメントをいただいたので、細かいことだが補足しておく(業界関係者以外は読む必要がない)。

全国の原発を止めている田中私案には法的根拠がないが、唯一の根拠とされているのは保安規定(発電所の安全設備などについて電力会社が書いた文書)である。

特重(特定重大事故等対処施設)の審査で、関西電力の美浜3号機では「新規制基準への適合性確認に係る保安規定変更認可申請を行い、本日、原子力規制委員会より認可をいただきました」と書かれている。

関電も保安規定の認可が運転開始の条件だと解釈しているが、これは誤りである。それは原子炉等規制法(第43条-3-24)の条文からも明らかだ。

発電用原子炉設置者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安規定を定め、発電用原子炉施設の設置の工事に着手する前に、原子力規制委員会の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

安念潤司氏が指摘したように、保安規定は最初に原発を設置するときの規定で、運転とは無関係である。続きを読む

日経新聞の知らない再エネの「本当のコスト」は1万倍

最近の電力危機で、日経も「カーボンゼロ」のキャンペーンをやめておとなしくなったと思ったら、また「太陽光の電気落札価格、火力の半分以下」という記事を書いている。それによると平均落札価格が今年3月の入札で初めて9円台になり、図のように火力を下回ったという。

図表(太陽光の電気落札価格、火力の半分以下 再エネに追い風)

これが本当なら朗報である。ただちにFIT(固定価格買取)を廃止して、自由に競争すべきだ。そうすれば燃料費のかかる火力は、燃料費ゼロの太陽光に勝てないので撤退し、夜間の発電はほぼゼロになるだろう。いま起こっている電力危機の本質的な原因は、このような過少投資である。

こういう問題が起こるのは、再エネ業者がコモンズ(共有資源)である電力インフラにただ乗りしているからだ。日経は「蓄電池などの付帯設備を考慮しても10円を割る」と書いているが、これは再エネが電力の一部だけを供給している場合だ。太陽光だけで電力を100%供給するには蓄電池が必要だが、そのコストは図のように9.8万円/kWh。火力の1万倍だが、これでも2時間しか蓄電できない。

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業務用の蓄電コスト(エネ庁資料より)続きを読む

原子力規制委員会に「再稼動の是非」を判断する権限はない

東洋経済オンラインに掲載された細野豪志氏の「電力危機に陥る日本「原発再稼働」の議論が必要だ」という記事は正論だが、肝心のところで間違っている。彼はこう書く。
原発の再稼働の是非を判断する権限は原子力規制委員会にある。原子力規制委員会の頭越しに政府が再稼働を決めることは法律上できない。原子炉等規制法で「原子力規制委員会の確認を受けた後でなければ、その発電用原子炉施設を使用してはならない」、すなわち再稼働することはできないと規定されている。

これは誤りである。内閣は2014年2月21日の答弁書で「発電用原子炉の再稼働を認可する規定はない」と表明しているからだ。再稼動を認可する規定がないのに、原子力規制委員会にその「是非を判断する」権限があるはずがない。

マスコミでは再稼動という言葉は「新規制基準を満たして運転する」という意味で使われるが、そんな言葉は法律にない。新規制基準に適合しなくても、既存の基準にもとづいて運転できるからだ。

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不合理なエネルギー政策が大規模停電を招く



これは今年1月7日の動画だが、基本的な問題がわかってない人が多いので再掲しておく。いま問題になっている大規模停電の原因は、直接には福島沖地震の影響で複数の火力発電所が停止したことだが、もともと予備率(電力需要に対する供給の余裕率)が3%しかなかったので、供給能力が3%以上落ちると停電が起こることはわかっていた。

今は揚水発電で不足分を供給しているが、20時ごろにはそれも停止するので、絶対的な電力不足になると、計画停電が避けられない。

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エネルギーの脆弱性が戦争を誘発する



ゼレンスキー大統領の議会演説は、英米では予想された範囲だったが、ドイツ議会の演説には驚いた。

彼はドイツがパイプライン「ノルドストリーム」を通じてロシアのプーチン大統領に戦争の資金を提供していると、かねてから警告していたという。それに対してドイツは「ノルドストリームはビジネスだ」と相手にせず、この冬にノルドストリーム2を開通させる予定だった。

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原爆と原発はどうちがうの?

岸田首相は国会で、ウクライナで原発が攻撃されたことに関連して「原発を警備する警察の専従部隊を置くことも検討したい」と答弁しました。

山口原子力防災相は「原発を爆破するとチェルノブイリよりすさまじい被害が出る」といいました。こういう政治家のみなさんの頭の中では、原発と原爆がつながっているようにみえます。

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ドイツはなぜ自殺的なエネルギー政策をとるのか



今回のロシアのウクライナ侵略の原因は、ドイツのエネルギー政策だ。もともと産業用エネルギーの半分近くをロシアからのパイプラインで調達しているドイツは、エネルギー供給に脆弱性を抱えているが、昨年12月31日に原発3基を停止し、今年末で原発ゼロになる。最後の命綱だった原発をみずから断ち切る自殺的な政策である。

わからないのは、欧州経済の中心であるドイツ人が、このように支離滅裂なエネルギー政策をとるのはなぜかということだ。それを考える上では、ドイツ人の半分が旧東ドイツの出身だったということが重要な意味をもつ。彼らは市場経済を知らないで育った。社会主義が悪夢だということは身をもって知っていたが、資本主義には嫌悪を抱いていた。

彼らが社会主義の代わりに見つけた「正義」が、地球環境問題だった。彼らは東ドイツで「同盟90」を結成した。西ドイツの緑の党は、1960年代の新左翼の残党だった。東西ドイツの極左政党は、ドイツが統一された1990年に合併して「同盟90/緑の党」となった。

それが今はSPD(社民党)とともに政権を取っている。外相は緑の党がとり、気候変動問題特使にグリーンピースのジェニファー・モーガン事務局長(ドイツ国籍をもっていない)を任命した。彼らがドイツ経済を脆弱化してロシアに従属させるのは当然である。それは資本主義を弱体化させる破壊工作なのだ。

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「ネットゼロ」には毎年3.5兆ドルのコストが必要だ

マッキンゼーは、2050年にCO2排出をネットゼロにするというCOP26の目標を実際に実現するための投資についてのレポートを発表した。


2050年ネットゼロに必要な物的投資(マッキンゼー)


必要な投資は2050年までに累計275兆ドルで、毎年9.2兆ドルだ。そこから今までに実施された投資を引いても、3.5兆ドル(400兆円)が必要になる。これは毎年4兆ドルというIEAの予測と(計算方法は違うが)おおむね同じだ。

3.5兆ドルというのは大きすぎて実感がわかないが、全世界のGDPの約4%に相当する。これを均等に負担したとすると、日本では20兆円である。

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ブラックロックの「政治的インサイダー取引」

スクリーンショット 2022-01-18 234718世界のESG投資を牽引しているのが、世界最大の投資ファンド、ブラックロックのCEO、ラリー・フィンクだが、最近は「ESG投資は利益が出ない」と批判されている。彼の年頭の投資家への手紙では、それに反論して「ESG投資は利益を生む」と主張している。彼はこう書く。
私たちが持続可能性に焦点を合わせるのは環境保護主義者であるからではなく、資本家であり、クライアントの受託者であるためです。その一環として、温室効果ガス削減の短期、中期、長期の目標を設定するよう企業に求めています。これらの目標、およびそれらを達成する計画の質は、株主の長期的な経済的利益にとって重要です。
つまり短期的な利益にはならないと認めたわけだ。大企業にとってCO2排出量を減らす簡単な方法は、化石燃料部門を売却することだが、フィンクは「当社は資産売却ではなく投資によって脱炭素化を進める」という。ではどうやって長期的な利益が出るのか。その鍵は政府だという。
企業はこれを単独で行うことはできず、「気候警察」になることもできません。 それは社会にとってよい結果をもたらさないでしょう。 政府が持続可能性のための政策、一貫した分類、規制、そして全市場での情報開示を進める明確な道筋が必要です。
要するに持続可能性を保障するのは政府の仕事なのだ。ではなぜ企業が政府の仕事をするのか。それによる株主の利益は何か。これは政府に圧力をかけて特定の企業を規制や補助金で有利にするインサイダー取引ではないのか。

続きは1月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)



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