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バフェットの「ケータイ音痴」がリーマンを破綻させた?

磯崎さんのツイッター経由で知ったが、「ウォーレン・バフェットがリーマンを破綻させた」という都市伝説は本当だったようだ。彼に対するCNBCのインタビューによれば、バークレイズがリーマンを買収するには、同社の保有する「毒入り資産」についての米政府の債務保証が必要だったが、財務省は株主の同意を要求した。バークレイズの首脳は、バフェットが出資を約束すれば財務省を説得できるかもしれないと考えて、土曜(9月13日)の夜8時に彼の携帯に電話したが・・・
Buffet: Oh, I got a call. I was in Edmonton at a social event. I was at the hotel at about 6:00 or so Edmonton time. [...] They described the transaction to me that I really couldn't grasp quickly. And so I asked them to send me a fax at the hotel. When I got back to the hotel that night around midnight, there was no fax.
なぜバークレイズの連絡は途切れたのだろうか。Telegraphによれば、実はバークレイズの首脳は(たぶんファックスが使えないため)追加情報をバフェットの留守電に入れたのだが、彼が留守電の使い方を知ってそのメッセージを聞いたのは、10ヶ月後だった。バフェットの結論は、
“Don’t try to get in touch with me by cell phone.”

安心ネットワークと信頼ネットワーク

3年ぐらい前からFacebookのアカウントはもっていたのだが、海外の友人にメールを出すときぐらいしか使っていなかった。しかし最近、Gmailのアドレス帳にある全員をFacebookが自動的に招待する機能ができ、私がうっかりそれを承認してしまったため、多くの人に招待状が届いたようで、申し訳ありません。

おかげで一挙にたくさん日本人のFacebook friendsができ、日本語と英語のメッセージが混在するようになった。比べてみると、日英のコミュニケーションの違いがわかっておもしろい。英語のメッセージは、オバマ政権の批判などの意見が多いが、日本語のほうは圧倒的にmixi的な日記だ。

またプロフィールをみると、欧米人は100人とか200人とか友人がいるのに対して、日本人は10~20人。これはもちろんFacebookが英語ベースだという理由があるだろうが、「友人」の概念に違いがあると思う。欧米で飛行機や長距離列車などに乗り合わせると、よく隣の人が「日本から来たの?」などと話しかけてくる。未知の人とのコミュニケーションの敷居が低いのだ。これに対して、日本では「赤の他人」に話しかける習慣はない。

これは山岸俊男氏の一連の研究でもおなじみの定型的事実で、ゲーム理論で合理的に説明できる。日本のような安心社会では「一見さん」を仲間に入れないことが長期的関係のレントを維持する上で重要なのだ。しかしこれはネットワークを広げる上では不便なので、まず相手を信頼して取引し、裏切り者は法的に処罰するのが欧米型の信頼社会である。

Greifの研究によれば、こういう2種類のネットワーク(マグレブ型とジェノア型)が混在するときは、ネットワークがグローバルに広がるにつれて後者(信頼ネットワーク)が前者(安心ネットワーク)を駆逐してしまう。さてFacebookの信頼ネットワークは、日本で広がるだろうか?

小倉秀夫弁護士による名誉毀損について

小倉秀夫弁護士は、今日のブログ記事で次のように書いている:
池田信夫さんが今度また解雇されたときには研究者として大学や研究機関へ就職をするのではなくおいしいラーメン屋となる道を選ぶとか[・・・]
彼が「また解雇されたときには」と書いているのは、私が「一度は解雇された」ことを前提にしているが、私は一度も解雇されたことはない。以前の記事にも書いたように、国際大学グローコムの公文俊平が私を含む3人に対して「雇用契約が存在しない」という荒唐無稽な通告(国際大学の文書ではなく公文の私的な手紙)をしてきたことはあるが、それは裁判所における和解で無効とされ、国際大学は通告が存在しないことを確認した。2004年12月21日付の和解事項は次のとおりである:
  1. 本件及び別件訴訟にかかる債権者[池田]と債務者[国際大学]の間の紛争が、平成16年12月21日、円満に解決したこと
  2. 債権者が平成16年4月1日から平成17年3月31日までの1年間グローコムの教授であることが確認されたこと
したがって法的には、私が「解雇された」という事実は存在しない。この事件の本質は、公文の贈賄・背任容疑を私および当時の副所長が指摘したことを公文が逆恨みして起こしたものであり、東京地検特捜部も捜査した刑事事件である。和解の当時は、捜査がまだ進行中だったため事実関係を公表しなかったが、結果的には立件されなかったので、求められれば証拠書類を見せる用意もある。

小倉弁護士はこれまでにもたびたび私に対して中傷を繰り返しているが、私が大学を解雇されたという虚偽によって「問題人物」であるかのようにほのめかすのは、通常の言論活動を逸脱して私の名誉を毀損する行為である。このブログ記事を撤回して、謝罪するよう求める。撤回も謝罪も行なわれない場合には、法的措置をとることも検討する。

小倉秀夫弁護士による事実無根の中傷について

東京弁護士会所属の小倉秀夫弁護士は、4月16日のブログ記事において、私の記事を「素人談義」と呼んで次のように書いた:
池田さんの場合,修士,博士等の学位を取られたメディア学ではなく,経済学の分野で生きていこうとしているような気がして,少々心配になります。[・・・]経済学に関して学士しか取得していない段階では,経済学の研究者としては「学位が十分ではない」といわれても,きっと怒らないことでしょう。
この記述は事実誤認である。第一に、私の学位は「メディア学」ではない。慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科から授与された学位は、学術博士(政策・メディア)である。この研究科には「総合政策」と「メディア」の二つの専攻があり、私の所属していたのは総合政策学(経済学・政治学など)である。

第二に、私が「経済学に関して学士しか取得していない」というのも事実誤認である。私の博士論文は、総合政策学部の岡部光明教授(経済学)を主査とし、スタンフォード大学経済学部の青木昌彦名誉教授らを副査として審査され、その内容も経済学に関する研究である。一部は学会誌に掲載され、論文全体は『情報技術と組織のアーキテクチャ』としてNTT出版から公刊された。

研究者にとって学位はもっとも重要な資格であり、それを取得するために5年近い歳月をかけるものである。それを「素人」呼ばわりすることは、私だけでなく博士論文を審査した経済学者および慶應義塾大学の名誉を毀損し、私の業務を妨害する行為である。

小倉弁護士は、こうした中傷の常習犯である。これまでにも、「人命のために企業活動が制約されるということが池田先生には許せない」とか、私が「企業活動の自由に人命等の価値よりも優越的な価値を見出す」といった嘘を繰り返し、矢部善朗弁護士についても「[創価学会が]運営する大学院って,これといった著書・論文等がなくとも,信者に教授の肩書きを与えることができる」と書いて抗議され、撤回している。

以上の点について私は小倉氏に電子メールで記事を撤回するよう求めたが、彼が拒否したため、この記事を公開せざるをえない。このように虚偽によって他人を攻撃する性癖のある弁護士が法廷で弁論を行なうことは、公正な裁判の障害になるおそれが強い。今後もこのような中傷が繰り返されるなら、東京弁護士会に懲戒請求を行なう。

先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし

私は大学で教えているので、学生に「先生」と呼ばれるのはかまわないが、それ以外の人に先生と呼ばれるのは違和感がある。これは誰でも同じらしく、RIETIでは「先生は禁止」というルールをつくった。東大には「自分が教わった教師以外は先生と呼んではならない」という「根岸ルール」があるそうだ。

特に不愉快なのは、官僚が日常会話にもすべて「先生」をつけることだ。これは政治家と同じで、言外に「お前は祭り上げておくが、決めるのはこっちだ」という軽蔑のニュアンスを感じる。このごろは外人も「先生」をつけるようになった。日本の事情にくわしくなると、政治家とか教師とか弁護士とか医者とか、社会から馬鹿にされつつ形式的に尊敬されている職業につける敬称であることを理解するらしい。

企業の中では「課長」「部長」というように肩書きで呼ぶのが日本のマナーだが、これも外人がみると奇異に映るようだ。外資系企業では、同僚は(日本語でいうと)呼び捨てで、ほとんどはファーストネームで呼ぶ。日本人には「さん」をつけるが、外人どうしてMr.をつけることは上司でもまずない。ただ中国では「先生」という敬称が「さん」に近い感じで使われているので、日本語は中国圏なのかもしれない。

こういうマナーは意外に重要で、日本でもマスコミは「さん」が多い。朝日新聞は民主主義だから社長も「さん」で呼ぶ――と入社試験のとき教えられた。NHKもそれに近く、ほとんど「さん」だ。出演者にも「先生」はつけないのが原則だ。

こういう問題は、sociolinguisticsという分野で実証的に研究されている。言語が主語と述語でできているなどというのはインド=ヨーロッパ語族の自民族中心主義で、大部分の言語には主語も述語もない代わり敬称や敬語が発達している。その典型が日本語だ。『源氏物語』には主語はないが、敬語によって人間関係は正確にわかる。日本語にyouに相当する代名詞がないのも、同じ共同体に所属している人々の会話なので主語は自明だったからである。相手をいちいち「**さん」と呼ぶのはわずらわしいが、時枝誠記も指摘したように、もともと日本語に主語はないのだ。

警察発表について

高橋洋一氏が、窃盗の容疑で書類送検されたようだ。私のところにまで取材が来たが、私は何の一次情報も持っていない。メディアに出ているのは警察発表だけで、読売の第一報には不自然な点が多い。「庭の湯」に電話した人の話によると、
  • ロッカールームには監視カメラはない
  • ロビーの貴重品ロッカーにはカメラがある
とのことなので、「防犯カメラに似た男が写っていた」という話と「ロッカーは無施錠だった」という話は矛盾する。わざわざ貴重品ロッカーに入れて施錠しないということは、(犯罪を誘う目的でもなければ)普通は考えられない。警察が来るまで風呂に入っていたのも変だし、「どんな人が持っているのか興味があった」という動機も意味不明だ。警察がかなり作文している疑いがある。

報道から推測すると、事件がまったくのでっち上げということは考えにくいが、報道の仕方が奇妙だ。24日に発生した事件が、30日の読売夕刊に出たのはなぜだろうか。普通は、この程度の置き引きで逮捕もしなかった事件を警察がいちいち発表することはない。窃盗の場合は余罪を疑って身柄を拘束することが多いが、今回は警察も本人の社会的地位に配慮したと思われる。

それが今ごろ読売に出たのは、夜回りで警察関係者が「こんなおもしろい事件があったよ」と明かしたのかもしれない。有名人の場合は、被害者がメディアに売り込むこともある。さらに勘ぐれば、事件のファイルにアクセスできる人物が垂れ込んだ可能性もある。財務省は高橋氏の身元を洗っているらしく、彼も「金とか女とかあらゆるガセネタを流された」といっていた。

このように警察発表は人生を変えてしまう大きなインパクトがあるが、裁量の余地が非常に大きい。記者クラブに所属している記者の交通事故は、死亡事故でもないかぎり、まず発表されない。NHKでも、理事が暴力金融から不正融資を受けたことが発覚して退職した事件もあったが、メディアにはまったく出なかった。こうした事件を「押さえる」のが社会部長の重要な仕事で、人事異動のときには自民党のどの派閥が社会部長をとるかが大きな争点になる。

いずれにせよ本人がコメントしていないので、今のところ真相は不明というしかない。こういう事件は高橋氏の言論の内容とは無関係なので、「アゴラ」では引き続き、彼に発言の場を提供する。明日から正式サービスを開始する予定である。

池尾・池田本のビデオ


13日に丸善でやった『なぜ世界は不況に陥ったのか』のトーク・セッションのもようが、YouTubeにアップロードされた。レジュメはこちら。

パート1
パート2
パート3
パート4
パート5
パート6

なお、池尾さんが明日(金曜)の夜8時から、CS朝日ニュースターの「ニュースの深層」に出演するそうだ。

Hey Paul Krugman



ポール・クルーグマン、どうして君は政権に入らないんだ。ティモシー・ガイトナーは**だよ。おれたちには君が必要なんだ。NYタイムズなんかで文句いってないで、財務長官になってくれよ。


ダーウィン(?)の言葉

これはダーウィンの言葉として有名だが、『種の起源』には見当たらない。しかし資本主義の本質をもっとも的確に表現した言葉だろう。

イノベーションの経済学 講義録

Next Global Jungleで、YouTubeにアップロードされた私のSBI大学院大学の講義を、ほぼ逐語的に書き起こしてくれた(YouTubeの画像つき)。全部で7時間だから、原稿用紙で約400枚。本1冊分だ。これを私の学生でも何でもない人が、ボランティアで(1ヶ月以上かけて)やってくれるのだから、ウェブってすごい。ありがとう。

第1章 イノベーションとは何か
第2章 イノベーションの思想史
第3章 経済成長と生産性
第4章 起業家精神
第5章 技術革新
第6章 ファイナンス
第7章 知識のマネジメント

いま本の執筆を2冊かかえているが、それが終わったら、この講義録をもとにして(もっと学問的に厳密に)『イノベーションの経済学』という本を書くつもりだ。まだ版元は決めていないので、出していただける出版社があれば連絡をください。
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