経済

日銀は債務超過にはならない

長期停滞の問題は「なぜゼロ金利が続くのか」に尽きる。「それは日銀が国債を爆買いしているせいで、日銀が撤退したら金利が急上昇する」という話がよくあるが、日銀の国債購入は2016年の年80兆円から18年には30兆円に減ったのに、長期金利は低下してマイナスになった。それは買う投資家がいるからだ。こういう資金需給は日銀がコントロールできる。

「日銀の保有する国債が暴落すると債務超過になって日本経済が崩壊する」というのも誤りだ。日銀の保有有価証券は時価評価ではなく、額面と取得原価の差を満期まで毎年均等に算入する償却原価法だから、たとえ評価損が日銀の自己資本(約8兆円)を上回ったとしても、決算で債務超過になることはありえない。

問題は国債が借り換えられなくなるリスクである。今の日本でそんな心配をする人はいないが、2010年代のユーロ圏のようにデフォルトの確率が上がると長期金利(国債のリスクプレミアム)が上がり、これによって将来の(利払いを含む)政府債務が増え、それによって国債が暴落し、円安になってインフレが増幅する。

このような財政インフレは、通貨への信認の毀損である。それは資金需給のような短期の問題ではなく長期にわたる政府債務の予想によるものなので、日銀はコントロールできない。中央銀行の独立性を守ることは役に立たない。財政危機は政府の問題なのだ。

続きは5月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

MMTを「どマクロ経済学」で図解してみた

MMT(Modern Monetary Theory)は本家のアメリカより日本で盛り上がっているが、その解説書を読んでも、数式も図も統計データもなしで「貨幣とは何か」みたいな話が延々と続くので、ほとんどの人には中身がわからないと思う。そこで、あえて大学初級レベルの(リフレ派やネトウヨの使う)「どマクロ経済学」で図解してみた。

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続きはアゴラで。

消費税と「賃金税」のどっちがましか

消費税の増税はマクロ経済的には賢明とはいいがたいが、政治的には意味がある。社会保険料は(企業負担分も含めて)労働者から徴収する賃金税なので、その負担増には企業や労働組合が反対するからだ。社会保障支出は超高齢化で激増するので、これを賃金税だけで負担すると現役世代の負担が重くなる。

消費税が「逆進的だ」と批判する人が多いが、貧乏人も大富豪も月額1万6410円徴収される国民年金保険料こそ逆進的な「人頭税」だ。厚生年金保険料は18.3%、健康保険料(介護保険料を含む)は11.6%で、すでに約30%だ。このうち厚生年金保険料は月収60万円で料率が頭打ちになるので、高給のサラリーマンほど有利になる逆進性がある。

続きはアゴラで。

日銀のヘリコプターは飛ぶか



日銀は25日の金融政策決定会合で、2021年度のインフレ見通しを1.6%に変更し、2%のインフレ目標は黒田総裁の在任中に実現するかどうかもあやしくなってきた。日銀の弾薬はもう尽きたようにみえるが、少なくとも理論的には最後の手段が残っている。日銀副総裁の若田部昌澄氏は、2016年4月にこう書いた。
日銀がヘリコプターマネーを導入する経済的な理由は申し分ない。日本は長期停滞のフロントランナーであり、特に2014年4月に消費税を引き上げて財政政策を拡大から緊縮に変更したあと、QQE(量的・質的緩和)やNIRP(マイナス金利政策)はデフレ脱却に成功していない。今は拡張的な金融政策と財政政策の組み合わせを本格的に進めるときだ。

続きはアゴラで。

IT革命が長期停滞をもたらした

アメリカ経済 成長の終焉 上
2010年代に先進国の直面している経済的な変化が単なる景気循環ではなく、資本主義の成熟による長期停滞だという説は、多くの経済学者に共有されつつある。これはリーマン後に始まった現象ではなく、1970年代から始まっていた。その原因は生産性の停滞だ、というのが本書の見方である。

これは直感に反する。一般には70年代以降、半導体やコンピュータの爆発的な技術進歩で生産性が上がったと考えられているからだ。しかし次の図のように1970年以降の生産性上昇率は2.82%から1.62%に下がり、中でも技術進歩の代理変数である全要素生産性(TFP)上昇率は、1920~70年のほぼ1/3に下がった。ソローのいうように「コンピュータはどこにでもあるが生産性統計の中にはない」のだ。

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この謎についての一つの説明は「IT革命は始まったばかりで、これから人工知能などのもっと大きなイノベーションが出てきて生産性が上がる」とか「情報通信のような社会インフラ(汎用技術)はある程度普及しないと生産性が上昇しないのでタイムラグがある」という楽観論だ。それが正しいなら、少なくともTFPは上昇傾向になるはずだが、次の図のように2010年代には、TFP上昇率はほぼゼロに戻った。

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すべての技術進歩が同じように生産性を高めるわけではない。21世紀にTFP上昇率が停滞しているのは、ITの技術進歩がGDP統計に反映されにくいからだ。PCやスマホで生活は快適になったが、物質的な生産が増えたわけではない。コンピュータはどこにでもあるわけではない。人はコンピュータを食べて生きることはできないからだ。続きを読む

アベノミクスは「ゼロ金利に賭けるギャンブル」

萩生田発言で始まった「消費税の増税延期」の波が収まらないが、財務省は財政制度審議会の資料で反論している。「名目成長率(g)と金利(r)の関係」に3ページも費やしているのは(名指しで批判していないが)サマーズやブランシャールの長期停滞論に対する反論だと思われるが、このデータは弱い。

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日本でもG7でもr>gだというデータは1981年からの相関係数だけで、時系列データがない。これは時系列で描くと、長期的にr<gとなる傾向が強まっていることがわかるからだろう。r>gになると、政府債務比率が発散する。「名目成長率が名目金利を上回る状況が持続する保証はない」という財務省のコメントは正しいが、今のところそれが逆転する兆候はない。

安倍首相が増税を2度も延期し、黒田総裁が「量的緩和でインフレ期待を起こす」と公言したアベノミクスは、放漫財政と超金融緩和という異常なポリシーミックスであり、財政赤字で金利を上昇させ、金余りでコントロールのきかないインフレと財政破綻をもたらすリスクが大きい――と多くの経済学者が警告した。

ところがインフレは起こらなかったが、財政破綻も起こらなかった。アベノミクスはゼロ金利に賭けるギャンブルだったが、今のところ安倍首相はこのギャンブルに勝ったのだ。しかしなぜ勝ったのかは、彼にもわからない。それは単なるまぐれ当たりだから、問題は金利が上がり始めたとき、どうするのかということだ。

続きは4月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

不換紙幣は資本主義を維持する巨大なバブル



社会保障はネズミ講だ
というと「不道徳だ」とか「いずれ行き詰まる」という批判が来るが、あなたもネズミ講に入っている。買い物で払う1万円札は、製造原価20円の紙切れだ。不換紙幣は金とのリンクが切れているので、店が受け取りを拒否すると行き詰まる。不換紙幣は、取引相手に政府債務のリスクを先送りするネズミ講なのだ。

それを最初に指摘したのはマルクスである。彼は『資本論』で「商品の物神性」を明らかにし、貨幣の価値の根底に資本主義の本質的な不安定性があると書いたが、彼が貨幣を廃止しようと考えたのは間違いだった。資金需要と供給の一致しない(動学的に非効率な)世界では、人々が紙幣を使うことで資金が循環し、物々交換の世界より豊かになるのだ。

しかし貨幣の不安定性が恐慌(景気循環)の原因になると考えたマルクスの恐慌論は、今も本質的な洞察である。貨幣はみんながその価値を信じるから自分も信じるバブルなので、ジンバブエのようにみんなが政権を信じなくなるとバブルが崩壊し、ハイパーインフレが起こる。しかし日本のように政府が過剰に信頼されていると金利がマイナスになり、将来世代から借金しても将来世代の負担が増えないフリーランチが可能になる。

続きは4月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

社会保障の「国営ネズミ講」は維持できるか

萩生田発言は波紋を呼んでいるが、麻生財務相のように「増税しないと財政が不安定になり、社会保障が維持できなくなる」という批判が多い。しかし萩生田氏もいうように「プライマリーバランス(PB)は目的ではない」。政府の目的は財政黒字ではなく経済の安定と成長なので、PBを黒字化して長期停滞が悪化するのは本末転倒だ。しかし増税しないで社会保障は大丈夫なのだろうか?

続きはアゴラで。

消費増税延期の判断基準は「日銀短観」ではない


自民党の萩生田幹事長代行は、10月の消費増税について「6月の日銀短観の結果次第で延期もありうる」と発言した。これは7月1日に発表される日銀短観のことだと思われるが、こんな短期的な指標で増税を延期することはありえない。延期する理由として意味があるのは、ゼロ金利がいつまで続くのかという基準だ。

続きはアゴラで。

ヘリコプターマネーで将来世代の負担は減る

T-POINT

日本では増税する必要がないという記事に「それでも財務省は増税すると思って若い世代は消費しないのでは?」という質問が来たが、これはもっともだ。減税しても将来の増税を恐れて消費しない現象は、経済学ではリカードの中立命題(等価定理)としてよく知られている。

現実には永遠の未来の子孫の増税を恐れて消費を控える人はほとんどいないが、日本のように政府債務が大きくなって、マスコミが「財政が破綻する」とか「将来世代の負担が重くなる」と宣伝すると、そういう心理的なマイナスの効果が大きくなる。これには(理論的には)解決策がある。政府が国民に一律に現金を配ればいいのだ。

これはフリードマンが(冗談で)ヘリコプターマネーとして提案した思考実験で、荒唐無稽のようにみえるが、意外に合理的だ。現金は政府が返済する必要がないので、政府紙幣と同じく政府債務は増えない。インフレになるが、徐々に増やせばコントロールできる。将来の増税の心配がないので消費は増え、いま生まれていない世代の負担も減る、とブイターは論じている。続きを読む






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